床下エアコンの正しい使い方(2022版)
今日は、床下エアコンの正しい使い方について、基本的なところを解説していきたいと思います。
最近寒くなってきたので、暖房方法についてご相談を受けます。その中で「床下エアコンってどうなんですか?」とか「床下エアコンはうまくいかないと聞くんですけど…」みたいなお話が出てくることがあるのです。
床下エアコンをうまく効かせるためには、2つの切り口でポイントを考えることが重要になります。設計時あるいは施工工事をする時における大事なポイントと、お引き渡しをした後にお施主様ご自身が運用していくところのポイントです。
まずは設計時における大事なポイントをご説明します。例えば、よくある4間角(8P×8P)の間取りとして、玄関・お風呂・サニタリー・キッチン・ダイニング・リビング、そして4畳半以上ぐらいの和室があるとします。よく見るベーシックなプランだと思いますが、床下エアコンを設置するとしたらどこがいいのでしょうか。
エアコンは、一方向に空気が行きます。その方向を起点に暖気が散らばっていきますから、なるべく家のセンターに配置するのがいいのではないでしょうか。真っすぐ空気が浸透して、波状的に広がっていくみたいなイメージを想定して、エアコンの配置を決めるのです。この配置によって、効く・効かないはかなり違ってくるんじゃないかなと思います。
ただ、間取り上の設置場所が良く見えたとしても、実際の施工時には複雑な要素が絡み合ってくるため、注意が必要です。床下には、壁・柱・土台を支えるための基礎が必ずあります。そして基礎の立ち上がりが、田の字 かつ 水回り部分にグルッと巻いてあるのが通例だと思います。立ち上がりというのは、一種の屏風みたいなものです。床下に屏風みたいなものが十文字に入っているということは、床下エアコンを置いた時、そいつが風の回りを邪魔するのです。
床下エアコンにとっては、基礎の立ち上がりは邪魔物になります。なるべく無い方がいいのですが、立ち上がりは家を支える強度の源みたいな所なので、取ってしまうと家が弱くなります。この相反する問題をどうするかということで、私たちがよくオススメしているのが地中梁というものです。柱と横架材のことを梁と呼びますが、地中に埋まった梁という意味でこの言葉を使います。
時々びっくりするのが、基礎の立ち上がりをポンと飛ばしているお家を見ることです。これは良くありません。基礎は鉄筋コンクリート造ですが、RC造は床面をベースにして四方を梁で囲んで持たせるというのが、基本的な考えです。真ん中がポコッと凹んでいて、パキッと割るような板チョコのような形。あんなイメージのものがRC構造の原型になります。その縁がポンと取れたら、強度が取れないのです。もちろんコンクリートなので、紙や金属みたいにグニャグニャはしませんが、大きな応力がかかると良くありません。
基礎の立ち上がりは梁なのです。でも、床下エアコンを上手に効かせようと思うと、立ち上がりが邪魔するから取りたい。それでも強度は下げたくないということで、地中梁があります。立ち上がりの基礎に比べたら、地中梁はコストが上がります。それでも床下エアコンを有効に働かせるためには、それを考慮してもらわないといけません。
「床下エアコンはいいと思うけどうちは採用しない」という工務店さんの中には、基礎が複雑になるから嫌われている方もいらっしゃると思います。全部地中梁にするというのは限界があるのも事実です。でも、一部お風呂の下みたいに暖気が回らなくてもいい所もあるので、こういう所は従来型でやってもいいと思います。また、立ち上がりを作ったとしても、人通口・通風口みたいに空気が流れていく所を上手に作ることによって、緩和されます。この辺はケースバイケースなので、設計者の判断に委ねられるところです。おそらく、ここら辺が床下エアコンを難しくさせる要因ではないでしょうか。
それ以外に、前にも紹介したグリッドポスト基礎というものがあります。すごく特殊な基礎で、コンクリートの2次製品の束石みたいなものです。床下の要所要所に、×とかI字型に配置をしていきます。そうすると、床下がスカスカになって空気が回り放題になるため、床下エアコンをされる時には有効です。シンプルなシルエットの時は、グリッドポストはコストも掛かりにくいです。販売元のJ建築システムさんなんかに相談すれば、構造計算もきちんとできて、耐震等級3の基礎ができると思います。私は「床下エアコンをやるんだったら
これを使ったら?」ぐらいに思っています。
床下エアコンが正しく機能するためには、空気が淀みなく流れて、かつ、構造的な強度を担保できるというところが、とても重要だということを知っておいてください。とは言え、設計や施工については、プロの方にお任せするしかありません。ぜひ、その辺に関して熟知されていたり、詳しく研究されていたりするような方にオーダーしていただければと思います。
次に、お施主さんご自身での運用におけるポイントをご説明します。繰り返しますが、床下エアコンが理想的に効くというのは、暖気の通りやすい基礎構成になっていることが一番です。その上で、昼間の日射取得が重要なポイントになります。もちろんビルの谷間で日が当たらないというお家は仕方がないので、24時間稼働してください。工夫して日射取得ができる場合は、そのことによって省エネになります。
例えば、床下エアコンを稼働させてほしい時間は、冬場だと日没後の17時ぐらいです。日没したら太陽の光が入らなくなるので、急激に家の温度が下がってきますよね。ここで暖房をつけてください。明け方6〜7時ぐらいになると夜が明けてくるので、ここぐらいまでつけてもらうと十分じゃないかなと思います。
この時間帯は、断熱のグレードによって変わってきます。断熱等級で言うと5、HEAT20のG1グレードぐらいで上記の時間帯が目安となります。G2グレードぐらいの断熱性能を有している建物なら、日中に日射取得して家の中で暖かい空気を保っていれば、稼働スタートが1〜2時間遅れても苦になりません。実際、20時ぐらいにつけると言われるお施主さんも多いです。ちなみにこれは、あくまで本州の多くのエリア、6地域での目安です。もっと寒い所では違ってくると思います。
日中は7時ぐらいになったらカーテンを開けてください。太陽光を入れると、太陽熱のいわゆるゲインが取り込めます。それから、床下エアコンを作るようなお家は、ベタ基礎あるいは防湿コンクリートがちゃんと打ってあるはずです。床下が温まると、コンクリートには熱を蓄える性質が非常にありますから、結構蓄熱します。エアコンを切った後もジリジリとコンクリートから放熱してくれるので、その放熱と太陽の光で、日中に関しては無暖房でいけるはずです。太陽光が入るという前提になりますが、そうなると考えています。
別の動画でもお話ししましたが、南に道路のある家の南側に大きい1間半ぐらいの開口を付けているのに、「道路から見えるのが気になる」と言って日中にカーテンを閉めてしまっている人がいます。都市部だと道路から5mぐらいしかない敷地が多いと思うので、仕方がないのかもしれません。ですが、せっかくのポテンシャルが有効活用できないため、外構でうまく目隠しをするなどしてカーテンを開ける工夫をしていただいた方がいいと思います。
床下エアコンを設置する場合、1階の床面に穴を開けて入れるのですが、これをなるべく低く作る方がいいです。エアコンには必ずスリーブと言って、室外機から循環するためのフレキ管や結露水を出すためのドレン管とかが付いています。それを室外に蹴り出す必要があるため、エアコンを低めに設置すると、基礎を貫通させなければなりません。これを嫌がって、高めに付けられることもあると思います。
土台は木製なので、アンカーの固定等を工夫すれば貫通させることも可能です。なるべくなら低めに付けていただいた方が、より効率が上がるはずです。いろんな都合があって高い所に付ける場合は、ちゃんと周りを囲んで暖気を全部床下に入れて、ロスが少なくなるようにしてくださいね。
最後に、私が床下エアコンを勧める理由をお伝えします。冬期に家の中で起こる事故として悪名高い、ヒートショックを防止することに繋がるからです。床上で間仕切りをしていても、床下は繋がっているじゃないですか。ということは、1階の床下の温度が一定になり、1階の床表面の温度が一定になるため、各室の温度差が少なくなるのです。これによって、悲しい事故も防げて、かつ、とても快適な冬の暮らしになると思います。そんなことを気にしていただいて床下エアコンを活用してください。
今日は床下エアコンという、ニッチでマニアックな話でした。ぜひ参考にしてみてください。