床暖房と床下エアコンを比較した
今日のテーマは床暖房と床下エアコンの違いです。
先日お客様から「モリシタさんのところでは床下エアコンを勧められていますよね?床暖房とどう違うんですか?」と質問をいただきましたので、解説していきたいと思います。
僕のスケッチを見てください。
床下エアコンって、暖房という文字が入っていないので、初めて聞いた方にとっては余計に分かりにくい部分があると思います。
断面で言うと、このような形になります。
まず床暖房というのは、基本的には1階の床の表面(木質フロアが貼ってあるすぐ下)に暖房のパネルが入っています。
このパネルを暖めて床の表面を温かくする、という方法です。
いろいろな種類がありますが、初めて聞く方にざっくりと説明すると、電気式と温水式の2つがあると思っていただければと思います。
電気式というのは暖房パネルがヒーターになってるものです。このヒーターが電熱線の場合もあればカーボンヒーターであったり、いろいろな種類がありますが、ヒーター線自体が発熱して、それを使って暖めていくという形なのは同じです。
一方で温水式は、電気のコイルとかヒーターを温めるものではありません。温水式はパネルの中にパイプ入っています。このパイプに温かい不凍液が循環していって、循環するお湯の熱でパネル自体を温めて、床の表面温度を上げていくというものになります。
床暖房の特徴としては、当たり前のことですが、床暖房パネルが入ってる所だけが暖かくなります。仮に廊下・階段・トイレなどにパネルが入っていなければ、そこは暖かくなりません。
よくあるのはリビング・ダイニングの床に床暖房を導入するケースですね。あとはキッチンに導入することもあると思います。
また、もう1つの特徴は電気式と温水式とで、光熱費に違いが出てきます。
金額の比較は最後にさせていただくとして、温水式には大体3つの種類があるのもお伝えしておきます。
1つ目が灯油とかガスで普通にお湯を炊いて給湯器から回していく方法。
2つ目がヒートポンプ式という方法です。ヒートポンプ式というのは、エアコンとかエコキュートとかでヒートポンプというエンジンを回して、それによって温水を送っていくというものです。
3つ目がハイブリッドと言って、今挙げた両方の機能を融合させたようなものです。
これらの方法によって光熱費や燃費に違いが出てきます。
前提条件などで結果が変わってきますが、ざっくり計算でいくと、電気式のやつが一番光熱費がかかるのではないかと言われてます。
電気式の床暖房で、ひと月44,000円ぐらい。
床暖房の温水式でガスとか灯油を使うとものだと、ひと月26,000円ぐらい。
ヒートポンプ式になると、ひと月20,000円を切ると言われています。
ヒートポンプ式は燃費がとてもいいんですが、イニシャルコストの視点で見ると、設置する時のコストはヒーター式が安いです。給湯器からのものもまぁまぁ安い。逆にヒートポンプはちょっと高いです。
なので床暖房を選ぶときには「イニシャルコストはかかるけど、ランニングコストで回収する」みたいな考え方もあります。
(今回は概略の説明になります。いろんなメーカーがあって、それぞれ試算が違うケースもあると思いますので、それは検討する際に確認していただければと思います。)
床暖房を導入する時に気になることが1つあります。それは立ち上がりというものです。
例えば電気ストーブは付けたら、すぐに暖かくなりますよね。これは「立ち上がりが早い」と言ったりします。
循環式でやったり、コイルを温めて、そのコイルが床面を温めるのに熱が伝わって…みたいなものだと、部屋全体が暖かくなるまでに時間がかかりますよね。こういった時間のことを“立ち上がり”と言うのですが、電気式って一番立ち上がりが遅いです。付けてから5時間近くかかります。
僕はヒーターだからすぐ暖かくなるのかなと思っていたので、初めて知った時は驚きました。運ぶ熱量とかの問題などがあるんでしょうね。
一方で給湯器を使ったものは1時間ぐらいでバッと暖かくなります。ヒートポンプは燃費はいいけど2時間半ぐらいかかります。
ずっと使いぱなしにするなら立ち上がりは関係ないですが、時間を決めて使う場合は気を付けてください。
例えばイニシャルコストが抑えられても、立ち上がりや光熱費のことを考えると、僕は電気式ってなかなか選びにくいかなぁと思います。
それから床暖房を後から導入する場合、床の構造上、収まらないという問題もあったりするんですね。なので床暖房を検討される方は、そういうことも含めて考えてほしいと思います。
次に床下エアコンです。
床下エアコンは文字通り、床下にエアコンを入れるというものです。
床下エアコンを設置して、床下のがらんどうの空間を暖めていきます。このがらんどうの空間が暖まって、その空気の暖かさが、ゆっくりと床板に伝わっていくというような形になります。
床下エアコンの特徴としては、基礎がうまく配置されていると、1階の床全体が温かくなります。なので部屋内の温度差を少なくしたいときには、すごく合っています。
光熱費に関しては比較論で言うと、ひと月20,000円を切るはずです。イニシャルコストもルームエアコンなのでそんなに高くないです。
ただ、いいことばかりかと言うと、難しい面もあります。
この床下エアコン、きちんと機能させようとすると、基礎の間仕切りの下の立ち上がりを少なくしないと暖気が回りにくくなります。
エアコンの力はすごく強いわけじゃないので、機械の力だけでは行き届かない部分も出てきます。なので基礎を立ち上がりなくして、その分、耐震性確保のために地中梁をしたりするのでコストが上がります。
床下エアコンも床暖房と同じく、トータル計画(イニシャルコスト+ランニングコスト)の中でバランスを取らなくてはいけないと思います。
ちなみに床下エアコンの立ち上がりは意外と早いです。1,2時間あれば暖かくなっていくはずです。
ただし、そういう風に機能させるためには、パッシブ設計であったり高気密・高断熱の家であることが大切です。特に忘れがちなのが気密。これらがきちんとできていないと、思うように暖かくならないです。
床暖房と床下エアコンを比べたとき、簡単にできるのは床暖房の方だと思います。
施工する人の技術力が必要だけど、やり方によっては美味しいところがあるというのは床下エアコンです。
床暖房は、まずパネルを温めて、その熱が伝導で伝わって、表面温度が温かくなって、表面温度が温かくなったら近くの空気が少しずつ暖まりますよね。
この空気がホワホワっと上に上がって対流をしていくのと、床暖房のパネルから遠赤外線が多少出ると思うんです。輻射熱ですね。
こういう形で暖かくなりますから、局所の暖かさは床暖房の方が上になると思います。
床下エアコンは家全体がほんのり暖かくなるということと、床下にコンクリートがあるので、ここに蓄熱ができるのが特徴です。コンクリートは熱容量がとても大きいのでね。
そうすると、夜中エアコンで暖めておいた熱が、日中にもある程度活用できます。床暖房はスイッチを切ってしまったら、その暖かさは終わりになります。
床下エアコンはスイッチを切っても余熱みたいな感じで使える、というような良さもあります。ただ、前提としてパッシブ設計と高気密・高断熱施工ができてないと、導入する意味がありません。
床暖房は家の性能が低めでも、床下がガッと温かくなるので、暖かさを感じやすいということになります。
最後に“ヒートポンプ”という言葉を解説したいと思います。
ヒートポンプって大気の熱を集めて、それをグーッと圧縮します。それによって大気の熱を取るという技術なんです。
冷房の時も冷熱って取るし、暖房の時も熱を取るわけですよね。空気中の熱を取り込んで汲み上げていく、井戸みたいなものです。
例えばそれを汲み上げるためにエネルギーが1必要だとしたら、それを5倍とか6倍に拡張できるので省エネになります。
一方で灯油を炊いたりガスを炊いたり、電気というのはエネルギー1に対して、取り出せる熱は1になります。(厳密には、多少ロスが起こるので1以下になると思います。)
ここで肝となるのは、ヒートポンプという技術を床暖房にも床下エアコンにも使ってるということです。
現代の技術力で言うと、ヒートポンプを上手に使うと暖かくて、しかも光熱費も抑えられるということが可能になります。
ぜひこんなことを参考にしていただいて、どちらの暖房方法がいいかなということを検討してみてください。