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冬でも地震に強い基礎はできるのか?

今日は、地震に十分耐えられる丈夫な基礎を真冬でも作れるのか、ということについて解説していきたいと思います。

とあるお客様からこんな質問を受けました。お客様のおじい様から「冬はコンクリートが凍って強度が出ないから、基礎は春から作ってもらえ」と言われたそうです。そのことについて「やっぱり心配ですかね?」と。

私の祖父たちも大工の職人だったので、「冬はコンクリートを打つ時に注意が必要だ」とよく言っていました。コンクリートは水を混ぜて作りますから、凍る可能性が出てくるのです。なので、お客様のおじい様がおっしゃることはもっともだと思います。

しかし結論としては、きちんと対策を取れば、冬場のコンクリート打設も大きな問題はないというのが、私の答えです。その対策とは何なのかを知っておいた方がより安心できると思いますので、解説していきます。

冬場にコンクリートの強度をきっちり出そうと思うと、ポイントはいくつかありますが、大きく言うと2つです。その1つが配合方法にあります。

コンクリートは、レミコン・生コンと言われます。私が子どもの頃は、ゴロゴロ回すやつで現場で練ったりしていました。今はほとんどがプラントで配合されています。ミキサー車でコンクリートが固まらないように回しながら運ばれてきて、現場でポンプや手で打つ形が多いです。そのためコンクリートの配合は、配合計画書を作って生コンのプラントに発注することになります。

その時に1つポイントがあります。寒くなってきたら、コンクリートの計画の温度補正を必ずしておいてくれと言うことです。

コンクリートの基礎の強度には、設計基準強度と言われる基準があります。最低でもこの圧縮強度を満たしてくださいという基準です。50年以上しっかり持つコンクリートを打ちたいので、24N(ニュートン)の設計基準強度で設計することが多いですが、もちろん18N・21Nという形で段階的にやる場合もあります。

当然、工場の配合には誤差がありますし、現場施工時にも誤差は出ます。そのため、圧縮強度がきちんと出るよう、余裕を持った補正をかけて打つことが多いのです。大体、24Nの設計の時は3N付加して27Nで発注をかけますが、これを予備強度と言います。1年中いつでも3Nは余裕を見ておくということです。これで多少ヘマがあっても、絶対に基準強度は24N出ます。

さらに冬期は3Nに対して+3N、合計6Nを足します。コンクリートは温度が低いと固まりにくい(強度が出にくい)という化学的特性があるので、さらに余裕を持たせるという形です。合計30Nの予備強度で打ってもらうことになります。

これが、おじい様が心配している、温度が低いことによる強度不足に対する一番大きな対策になります。コンクリートは圧縮強度が高ければ高いほど長く持つことが証明されていますので、どの強度を選ぶかは設計者の方とよく相談して決めてください。

その上でもう1つのポイントがあります。コンクリートは、プリンを固める時のように型枠を組み、そこにドロドロの状態のコンクリートを流し込んで固めます。プリンもそうですが、十分に固まる前に型を外すとフニャーとなってしまいますよね。コンクリートも同じです。そうならないため、十分に固まるまで型枠を置いておくことを存置期間と言います。

冬は西日本でも0〜5℃くらいになることが多いので、型枠の存置期間は約8日間です。そうすることによって十分に硬化できて、脱型をすればきちっとしたコンクリートができています。

夏場は逆に温度が高いので存置期間が3日間でいいとか、秋口ぐらいだったら5日間ぐらいの養生でいいとか、季節によって変わります。型枠は長く置けば置くほど、脱型して開ける時に工数が増えるため、いつまでも置いておく必要はありません。ここでバランスを取ることが1つの大きなポイントになります。

私が住んでいるのは西日本の姫路市という所ですが、4〜5年前に-5℃ぐらいになった日がありました。こんな日にたまたまコンクリートの打設日が重なったら、私がやる判断は、できれば様子を見て日程をずらします。どうしてもスケジュールの都合で打たなければならない時は、コンクリートの中にいわゆる耐寒促進剤や不凍剤という、凍らない薬剤を入れます。

通常コンクリートは-1℃ぐらいから凍結すると言われていますが、-5℃くらいになっても凍結を遅らせることができる薬剤があるのです。これはプラントで付与する場合もあるし、ミキサー車でゴロゴロと現場で回しながらポイッと薬を入れてぐるぐるかき混ぜて現場でやることもあります。

夏場によくAE減水剤と言って、水を絞る薬剤を入れることがあります。強度を出すために絞るのですが、そうするとワーカビリティが低下します。つまり、コンクリートの滑らかさが失われて、打ちにくいのです。

それを滑らかにするために、簡単に言うと石鹸水みたいなアルカリの強いやつを入れます。石鹸水を手に付けたらニュルニュルするじゃないですか。コンクリートに骨材が入っていてもシュッと流れていくようになります。夏場にはそういうものを入れたりしますが、不凍剤はそれの冬版みたいな感じです。

1日の平均気温が5℃を下回った時には、コンクリートを打った初期からグッと硬化が始まります。最初の8時間とか24時間ぐらいで、一気にコンクリートの品質は決まってくるのです。この初動の時に、温度が高い方がある程度いいコンクリートになります。

そういう時、さっき言った不凍剤みたいなものを入れるか、もしくはブルーシートでテントみたいな即席の温室を組みます。そこにジェットヒーターと言って、すごい勢いで温風を出してくれるものがあるので、それを炊くのです。即席で冬山のテントの中みたいに暖かくして、外気温との差を作るという方法でやります。

私の友人に、北海道の函館でたくさん工事をやっている工務店の友だちがいますが、雪の問題もあるので最初に鋼管で組んでしまうらしいです。そこにテントを張ってその中で仕事をやると、雪が降っても埋まることがないし、施工もしやすい。そしてコンクリートの養生もやりやすいということです。

ヒーターを炊けば、外が-7〜8℃になっても中は10℃以上あるそうです。それぐらい効くということなので、姫路でもたまたま寒い時にコンクリートを打設する必要がある時は、基本は温度補正と型枠の存置期間をきっちり守ることになりますが、そういうことも補足でやることがあります。

それでも初期凍害と言って固まり始めた頃に凍結すると、お客様のおじいちゃんが指摘したように、僕のおじいちゃんも「コンクリートがしみる」と言っていました。ちゃんと強度が出ないことがあるので、初期がとにかく大事です。

ちなみに、そのすごく寒かった冬は、うちの現場でも打たないといけない時がありました。その時はテントを張って、ありがたいことにうちの監督たちが夜なべで寝ずの番をしてくれました。ヒーターの火が点けっぱなしになり、近隣に火事があったら危ないからです。こうして最初の24時間を赤ちゃんを見守るような感じで見れば、冬場でもきっちりした品質のコンクリートは間違いなくできます。

逆に、夏場の温度が高い時の方が、急激に硬化するので怖いんです。冬にじわじわ硬化するコンクリートの方が強度が出やすかったりします。非破壊試験をシュミットハンマーなんかでやると、計画は30Nなのに33N出ているなど、私たちが想定するよりはるかに高い圧縮強度が実現していることが多いのです。

今はコンクリートの配合など、様々なことが研究し尽くされて良くなっています。この2つの対策がきちんとされていれば、冬場の基礎工事の心配はほぼ無用かなと思いますので、ご安心いただけたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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