Ua値が低ければ冬暖かく夏涼しい家になるのか?
あるお客様と打ち合わせをしていたら、ある会社の営業マンさんが、うちの家はUa値がすごく低いから絶対に暖かいですよ、もう他社はダメですよ、みたいなことを言ってきたそうです。今回は、Ua値が低ければ、本当に冬は暖かい・夏は涼しい、ということになるのか解説をしていきたいと思います。
Ua値は外皮の熱の伝わりやすさ(U値)を平均で表したものです。このUa値は数値が低ければ低いほど、断熱性能では有利と言われてますから、その法則だけで捉えると、Ua値が低いからうちの家が最強、みたいなことが成り立つかもしれません。ただ断熱性能が欲しいのではなく、断熱性能を担保することによって、その家の快適性や光熱費がかからないというような経済性が欲しいんじゃないでしょうか。それでいくと物の見方が狭くなります。
僕が勝手に考えた公式では、家の快適性(冬の暖かさや夏の涼しさ)と経済性(光熱費が抑えられる)は掛け算で決まると思っています。5地域だったら0.36以下とか、6地域だったら0.46以下みたいな感じで断熱等級6以上、Ua値がそれ以下ならいいんですけど、それだけじゃないわけです。気密性能も重要ということです。最近ではC値0.9以下にした方がいいと思います。
もう1つ重要なのが日射コントロールです。特に影響が大きいのは夏です。日当たりをよくするために南に窓を取りたいじゃないですか。そこに直射日光がガンガン入ってきたときは、Ua値が高い家は断熱性能が高いので熱がこもりやすいんです。どんどん真夏の太陽が入ってくると温度が下がらない・エアコンが効かないということになってくるので、日射コントロールはとても重要です。それから冬場の日射取得。逆に冬場に日当たりをいっぱい取り込んで、日が昇っている間は日当たりを取れば取るほど、太陽の光はタダですから、経済性が高まって暖かさが担保できるということになっていくので、これの掛け算で本当に評価は決まると思うんです。
C値の罠というのが、例えば、多くの鉄骨系のハウスメーカーさんは、うちの家は耐久性はあるけど気密がうまく取れない、というのが結構多いんです。なので鉄骨系のハウスメーカーさんはZEH基準と言われているUa値で0.6、断熱等級5をクリアしているところは多いんですけど、気密が取れてないから、ZEH基準の家なんだけど住んでみたら意外と寒いんです。別に悪口じゃなくて、実際に見させてもらったら、床下の気密がうまく取れてないというケースが多く、これを改善することで変わるということが経験的にあるので、Ua値だけ極めても思うほど効果はなくて、C値が重要だというのを体験的にも知ってるんです。
Ua値が非常に高く断熱性が高いから夏に涼しいと簡単に言えないのは、日射のコントロールができなくて、日射の侵入の度合いが強かったら、夏に暑くて仕方ないという高断熱の家が実際にあるからなんです。この日射の侵入率というのも重要です。僕はこれは0.3以下にするべきだと思います。窓だけでなく、日射の侵入は壁や屋根からもするので、トータルでいいと思いますけど、ここが重要だろうと思います。
これから家を建てる人は、これを気にしてもらって、そういうところに配慮してくれているか、心配な場合はちゃんと質問されたらいいと思うし、設計者だったらちゃんと説明してくれると思います。西日本だったらこのようなはずです。僕たちは温暖な瀬戸内で暮らしているから、本当に寒いところの辛さはわかってないところがあるんですけど、そういうところだったら換気方法も重要だと思います。僕たちのエリアだったら第三種換気である程度は大丈夫かなと思いますけど、寒い地域は熱の損失が大きいので第一種換気の方がいいですよね。
それから空調法。無暖房の家は理論上できるかもしれませんけど、無冷房の家は日本だと難しいと思うんです。冬は暖かくできても、同時に四季があるので夏は涼しい家じゃないとアカンわけなので、夏に冷房が効かなアカンという視点も快適性・経済性に入ってくると思いますので、こういう風な簡単な公式があってこそ、あなたの家の欲しいもの、Ua値が欲しいんじゃなくて、家の快適性・経済性が欲しいわけだから、それを得られるかどうかの判断をしてもらえると、大きな間違いはないと思います。