土地条件が悪い時の家づくり(日当たり編)
今回は土地条件が悪い時の家づくりについて解説します。
家づくりに関して、土地を探してお家を建てたい、今もう土地はあるけどその土地にあまり好きではない特徴がある、という時があると思います。土地条件の悪さというといろいろありますが、その中で最も言われることの1つに、土地の日当たり問題があります。
私の友達の群馬の社長さんの施工エリアは、スカーッと広い土地だから隣の家の影なんて全然ありません。一方、私の住んでいる所は姫路市で結構都市部なので、込み入った所に家があることもよくあって、日当たり問題はよく出てきます。
特に土地情報が少ないところでは、限られたものから選んでいかないといけません。あそこは日当たりが悪いからちょっと…と思う時に、それは1つの特徴として捉えて、リフレーミング、枠組みを変えてみてください。悪いと思ったことに実は良さがある、という考え方を持ってもらうと選択の幅が広がると思います。
日当たりが悪い土地の特徴について、まずはデメリットから説明します。
まずは、日が当たりにくいので湿気が多いことです。同時に、日が当たりにくいので冬場は結構寒いことです。翻って、暖房費などの光熱費・電気代が余分に掛かることがあります。
一方で、実はメリットもあります。1つ目は、多くの人が条件が悪いと思うからでしょうけど、土地代が安く求められることです。それから、冬は寒いですが、夏は日が当たらないから逆に涼しいです。また、家に本を置いたり、絵画・写真を飾ったりするのが好きな人もいらっしゃると思いますが、日が当たらないから本が焼けないことです。
もう1つ、日光の強さが気にならないこともあります。私はカーッと暖かい日が当たるのが大好きなタイプですが、人によっては柔らかいソフトな日差しの中で、ゆっくりと静かな感じでいるのが好きな人もいるので、そういう人にとってはメリットだと思います。
メリットは生かせばいいので、デメリットの対策に絞った話をしていきます。
まず湿気対策についてです。1つは基礎です。今はほとんどの木造の建物はベタ基礎と言って、コンクリートの船みたいなものの上に家を建てているケースが多いです。この時にほぼ100%、ベースのコンクリートを打つ下には防湿シートというポリエチレンの丈夫なシートが施工されています。これは湿気・水分を通さないもので、石油製品なので朽ちてボロボロにもなりません。
そのシートを入れてコンクリートを封じ込めてしまうと、意外なほど水蒸気は上がってこなくなります。土がむき出しになっている普通のお家の基礎と比べたら、何十分の1、1/100ぐらいの湿気に抑えられます。
それでもまだ基礎の中が湿気があって、家の中が湿気るのが嫌と思う場合は、ファンなどで強制的に基礎の中の換気を促進したり、水分を排気したりする方法もあります。そうするだけで、湿気問題はかなり和らぎます。
また、例えば山の麓などで土地柄的に湿気が多い所もあると思います。私の田舎は、山間の段々畑が多い所で、段々に田んぼがあって、その下に家があって、また田んぼがあって、という所が結構ありました。当然水田なので水がたっぷり入っていて、水は高い所から低い所に流れていくので、上の田んぼにしっかり水を張って稲を育てるほど、下の方にも水分が行きやすいです。
そういう時には、暗渠排水(あんきょはいすい)という方法があります。
最近では、昔の水路の上にコンクリートで完全に蓋をして、その上を道路・通路の一部に使っている所もあると思いますが、ああいうものです。上には蓋がしてあって、下には水が通っている、こういうものを暗渠といいます。
絵で描くとこんな感じです。溝状に掘った中に、水抜きのパイプを1本入れます。塩ビ管に穴が開いているのもありますが、あれは目詰まりもするので、ネオドレーンパイプ・全面有孔管という土木の資材も使われます。
こういうものを真ん中に入れて、周りに栗石(ぐりいし)という拳大ぐらいの石を入れて、栗石と栗石の間には隙間があるので、そこに砂利を目潰しとして入れていくと、水がよく通る水路が擬似的にできます。これを作って、管の水下は近くの水路に蹴り出すようにすれば、水は家に行かずに暗渠で止まって流れていきます。
私の幼少期は、土工のおっちゃんたちが身近にいました。可愛がってもらって、現場に行ったらおっちゃんたちに遊んでもらったりもしました。そのおっちゃんたちが暗渠排水をやっているところも見たことがあります。
おっちゃんたちが何人かで暗渠排水をやって、綺麗に10mぐらい作って、それを土で埋めて元の土地に戻す感じです。次の日に遊びに行ったら、なんとその暗渠排水の先から、もうジャージャーと水が出ていました。
びっくりして「おっちゃん!水でよる!こんなに水出るんや!」と言うと、「これ効くんや。湿気屋敷の時は暗渠をやるのは土の改良でごっつええ方法だから、よう覚えとけ」と、そんな話を聞きました。
もし、例えばおじいちゃんに貰った土地がジメジメしていて、あれがなかったらスッキリ建てるのに…という時は、そんなにお金が掛かるわけではないと思うので、これをやられたら湿気の問題は改善に向かうと思います。
次は寒さ対策です。これは、はっきり言って断熱をしっかりすることです。
貰った土地だったらコストはゼロですよね。買った土地だったら、一般的な相場の中ではやや割安感があり、予算が少し残ると思います。それを断熱工事に投入してもらったらいいと思います。
断熱工事をしっかりする時には、できたら全館空調のようにして、各部屋だけでなく、廊下・ユーティリティ・台所なども、全部満遍なく暖かい形にすると、豊か・リッチな生活になると思います。
例えば、窓は樹脂枠のトリプルガラスにするとか、壁は大体10cmの厚みが多いと思いますが、5cmぐらい付加断熱するとか、そういう方法です。特に床は、最低10cm、できたら思い切って15cmぐらいの断熱にすると、ほぼ足元が冷たくなくなります。こういうことで、太陽が入ってこないことに対する寒さは随分和らぐと思います。
それから、忘れてはならないのが北側の壁です。ただでさえ太陽は当たらないし、北側ですから温度が下がりやすいです。
過去にあるお客様で、北側の壁に向かって机を置いていた人がいらっしゃいました。足を出して机仕事をされている方で、足元が寒いとおっしゃっていました。全部均等に断熱はしていましたが、北の壁は他の3面に比べたら温度が低かったことがありました。
対処としては、少しだけ部屋内は狭くなるけど、内側に断熱を付加することで改善しました。そんな風に断熱を工夫することで、寒さに関しては解消できます。
さらに、地形によっては吹き抜けを利用することもできます。2階なら日が入るという場合には、そこから日光を下に取ることもあります。
また、例えば照明は天井面に照明をつけるケースが一般的だと思いますが、壁面・天井面などの面を照明することで部屋内の明るさを確保するようにすれば、暗さに関しても随分解消されると思います。
北側の窓についても、中連の窓という腰高の窓ではなく、高窓という天井いっぱいぐらいまである窓にする方がいいです。同じような日当たりでも、窓は真ん中にあるより上にある方が明るくなります。上から光が来ると、視覚的に明るさが違うんです。
そういう工夫をすることで、家づくりでネガティブな要素は解消できます。また、例えば高窓だったら、返って近隣の視線はあまり気にならなくなるし、上から光が来るから、それはそれで静かで豊かな空間になることも多いです。
また、これは雨仕舞い・メンテナンスの問題もありますが、天窓も方法の1つです。例えば夏場は太陽高度が高くなるので、南側天窓は冬は日が入らなくても夏場はガンガン来たりするから避けた方がいいですが、北側天窓だったらやってもいいと思います。
さらにこれらを考えるときに、日当たりが良い・悪いは関係なく、方位は重要です。
今私は、土地を買ったり貰ったりして、新築を建てる前提で話をしていますが、そういう条件で建て替える時もあります。そういう人にもあえて言いたいのは、あなたの敷地の方位をもう1回確認してください、ということです。
昔の建物は、意外と方位に関して無頓着な家が多いです。住んでいたら直感的に、日当たりの良い場所・悪い場所はわかると思います。それがわかった上で、そこに窓があったらどうなるかをイメージして間取りをもう1回考えてもらうと、土地のネガティブ要素はかなり緩和されていきます。
こういう感じで、土地条件の日当たりの悪さをはカバーしていただくといいと思います。これはとても基本的な話ですが、押さえて欲しい重要なポイントです。ぜひ参考にしてください。