太陽光発電にピッタリな屋根とは?
光熱費が急激に上昇しているので、太陽光発電をしっかり載せたい、というご希望をよくお聞きします。その際に、お客さんの方から「どういう屋根の形がいいんですかね?」とか「屋根で考慮すべきポイントはありますか?」といった質問が続きました。今日は基本的な話ではありますが、太陽光発電に適した屋根の形や相性について、解説したいと思います。
太陽光発電と組み合わせる際に大きく言うと4つの影響要素があるかなと思っています。
まず1つ目は屋根の形状です。そして2つ目は敷地には必ず方位がありますから、それに向けた方角です。そして3つ目は、太陽が地面にベタッと当たるよりも、角度が付いている方がより当たりやすく、集中して当たるような角度があるということ。これを設置の傾斜角度と言いますけど、これが3つ目の要素です。最後に、当然ながら屋根の上に載せるので、屋根の材料や形状も判断に関わってくると思います。
これらを個別に説明していきます。まず屋根の形状ですけど、例えば同じ床面積の間取りでも、屋根の載せ方は大きく4つあると思います。
1つ目が切妻(きりづま)というやつです。子どもが家を描く時によく描く、三角の屋根です。2つの勾配で構成されています。そしてもう1つ、最も単純なのが片流れです。片方だけに傾斜がある形です。こういうデザインの家が今はとても多いですよね。
そして3つ目が寄棟(よせむね)というやつで、切妻は2方向に流れている方向があるのに対し、寄棟は4方向に流れる感じです。大手のハウスメーカーさんなどは寄棟の屋根を採用していることが多いです。その理由として、大手のハウスメーカーさんは工業化住宅を提供しているため、さまざまな敷地にフィットするように設計されています。道路斜線や北側斜線など、建築基準法の斜線制限を考慮しながら、寄棟の屋根を選択する場合もあります。
寄棟で下の建物の箱が長方形ではなく、限りなく正方形に近づいていくと、頂点に向かってピラミッドのような形状を作り出すことがあります。これを「方形(ほうぎょう)」と呼びます。方形は寄棟の屋根の特殊な例です。
最後に、最近は四角いサイコロのような家を好む人が増えてきています。こういった建物を「陸屋根」と呼びます。
屋根に色を付けていますけど(板書を見てくださいね)、色を付けた面が屋根の形状の上で太陽光発電パネルを載せられる部分になります。
特徴があるのは片流れが一番広い面積。太陽って基本的に南の方にあるものだから、2つに屋根が折れてしまうと南の方を向いてたら、半分は北側に行くから、切妻は南向き部分が半分になりますよね。片流れはまるまるやれる。そして寄棟は屋根面積はそんな極端に減らないですけど、ただ屋根面が三角になるので、太陽光発電のパネルって基本は四角なので、三角の寄棟用みたいなものもあるんですけど、ちょっと効率が落ちますよね。
場合によっては価格が上がるので、四角いパネルで構成して、三角の所は三角に残すみたいな感じになるのが寄棟。面積が広い割にはあんまりパネルは載らないっていう感じです。
最後に陸屋根は最も載りそうな感じもするんですけど、建物の床面積のシルエットに、切妻・片流れ・寄棟は軒ゼロっていうやり方もありますけど、普通は軒があるので、一般的には床面積より屋根の面積の方が広くなります。でも陸屋根は床面積のままの延長でしかないから、同じようなボリュームの家なんだけど、載せるなら切妻か片流れが向いています。寄棟に載せられない訳じゃないですけど、ちょっと制約がある感じです。
これが屋根形状。この屋根形状を見て、形の問題なので、好き好きもあるじゃないですか。太陽光発電にはぴったりかもしれんけど、俺片流れ嫌いやねんとか、陸屋根はあんまり好きじゃない・好きとかあるじゃないですか。だからこういう所を以って、何が一番自分の感性と太陽光発電の効率面で有利なのかは考える必要があると思います。
あとは方角。敷地は方位が必ずあるので、南に向けていわゆる日射取得するための窓も取りたいんですけど、太陽光パネルも南に向けて載せるのが一番いいです。
ちなみに真南にパネルを載せたら、それを効率100%としたら、真東 それから真西 90度方位がずれちゃうと、東で85% 西で85%、約15% 同じ大きさのパネルなんですけど、ロスすると言われています。そうすると極端に直角ということはなくて、敷地は必ずどっちかに振れていますよね。
45度ぐらいの振れ方を言うと、それが南東の角、南東方向とか南西方向になると思います。南西とか南東になるとどれぐらいかと言うと、96%ぐらいの効率で4%ぐらいロスする。そう考えると真南に上手にぴったり載せられる家は、僕は現実は少ないと思うんです。
でも45度といったら、まあまあの振り幅なので、4%ぐらいならしょうがないということで、くれてあげるみたいな感じにしてもいいのかなと思います。ただ真北は4割も落ちちゃうので、せっかく高いお金を出してパネルを載せても効率面でいわゆる よく昔から言われる回収できるか みたいなところが出てくる可能性があります。
あとは、これは平面の方向だけのことを言ったんですけど、実は太陽が地球は自転していますから、ちょっと地軸が斜めになっている関係があるので、太陽の光もちょっと斜めに入ってくるということがあるので、設置の傾斜角、パネル自体の傾斜角もありまして、最もこの効率がいいのは本州で考えたら約30度と言われています。
これはさっきも地軸の話をしましたけど、緯度 北緯 北半球なので、北緯の度数によって最適な角度は地域によって変わります。ちなみに日本で北海道みたいに北の方に行ったら、35度ぐらいが良いらしいです。5度ぐらい傾斜を強くした方がいいそうです。
一方、一番南の方の沖縄みたいに沖縄って本州からかなり離れていますから、それぐらい下がってくると20度が良いらしいです。確かに沖縄に行って太陽光パネルを見ると、傾斜が緩い、ほぼペタッと、本州の感覚で言ったらペタッと置いてあるように見えないこともないですよね。
このことを知っておいてもらって、効率を言うんだったらなるべく30度が良い。もちろん方位が振れたりするから、入射角は厳密には細かい計算をしないと出にくいですけど、ざっくりそんな感じですけど、ただこの30度っていうのは屋根の勾配でどれぐらいかと言うと、計算すると5.77寸 6寸勾配。6寸勾配って分かりますかね?10行って 6上がるのを結んだら6寸勾配といいます。6寸勾配の屋根というとまあまあきついです。
ちょっと緩くしてほしいなって言ったら、大体世間で建っている家で多いのは、3寸5分とか4寸とか、3寸の家もあるかなと言うと、大体3.6寸ぐらいで角度20度、20度ぐらいの傾斜角度にすると、発電効率が98.2%になると言われています。1~2%回落ちるんですよね。そうすると6寸が最適なんですが、3寸5分ぐらいでも1~2%ぐらいだったらええんちゃうの?っていうところが、最近 建物の外観を見た目のデザイン性で勾配を緩くしたいっていう方がいて、多いのは緩かったら2.5寸があると思うんですけど、そうすると大体14度ぐらいになるんです。
ここまで来ると100%に対して95%ぐらいになる、5%がロスする形になると言われています。なので、屋根のことを気にするなら、自分の家の形状と屋根の勾配、ナンボぐらいにするの?っていうのが重要になってきます。
さっき6寸って話をしたんですけど、これ分かりますかね? 見てほしいんですけど、こういう家、最近よくありますよね。太陽光発電を最も有利にするっていう作りで言うと、2階建ての上に6寸で片流れの家を作る人がいるんです。これは本人はいいかもしれませんけど、僕はちょっとどうかなって感じがあって、2階建てだけど3階建てぐらいの高さになるんです。だからもし北に隣家があったら、北の隣家には日は当たりませんよね。
自分の家は太陽光発電を思いっきりしているけど、隣に下手したら 配置によったら屋根に影がさしてしまって、太陽光発電の効率がそもそも日当たらへんやん、みたいなことが起きたりします。もちろん法律では高さの制限がそこはかまへんっていう地域、斜線制限とか絡めてOKだったら寄せられないこともないかもしれませんが、どうですかね。
これはホンマにおじさんの戯言かもしれませんけど、良い家を建てるときってご近隣って良かったねって心から言ってくださる方も多いですけど、ちょっと心のどこかでジェラシーというか良い家になっちゃってみたいな気持ちがあると、気持ち良く思わないというときもあるので、僕はちょっと自分のところの得だけより近隣配慮ということもあるのかなと思ったりするので、そういうところも傾斜角度を決めるときは頭に置いておいてほしいです。
陸屋根の時はこうやってパネルを工場の屋根みたいに段々にして架台で受けて最適化するフラットにして陸屋根に置くんじゃなくて、1個1個立てていくみたいな感じになるので、これはこれで陸屋根はあんまりパネルが載らない割に架台がすごくしっかりしたものを加工してつくらなアカンので、コストアップの要因になるところはありますよね。
最後に屋根材になります。
屋根材に関しては、一番一般的なのは瓦。ハウスメーカーさんは、まだコロニアルを葺いている所もあります。スレート瓦って薄いやつです。それから最近すごく多いのがガルバリウム。特に本州で多いのは縦ハゼって言われる葺き方です。そうすると、屋根材に関しては何が一番載せやすいかって言うと、僕はガルバリウムかなと思います。ガルバっていうのは僕が折り紙してみたんですけど、こんな感じでこういう風に勾配を作って上から水が流れてくるから、こっちに水が漏れないように立ててあるんです。水返しが作ってあります。水返しが作ってある箇所の上にもう一枚を上から載せてかしめて、水が下へ下へ流れていって、この中は逆流しないようになっているのがガルバの特徴で、ここの上にはさみ金物っていうやつで簡単に支持ができるんです。
コロニアルとかスレート瓦の問題は、新築でも貫通させてしまうところが結構あるんですよ。結局どうやって留めるかと言ったら、コーキングっていう樹脂の防水剤みたいなものを噛ませて打ってやるから、あれははっきり言って屋根材みたいな高寿命ではないので、いつかは切れる可能性があるんです。そういう意味で言うと太陽光発電にぴったりという意味では、固定がしやすくて安価でしかも漏水事故が起きにくい形で言うと、ガルバリウムがいいかなと思います。もちろん瓦も悪くないです。ガルバリウムを支えるための留め代がついたような、それが瓦の焼き物で作っているものも見たことありますし、そこだけ瓦の形をした部材もあったりするので、そういう意味ではすごく高耐久でかつ防水も担保できて取り付けも非常に明快に行くっていうところだろうと思います。
太陽光発電を考えた時にぴったりの屋根っていうのは、この4つのファクターで考えてください。ただ、100%の効率化を実現することは難しいです。ご近隣・北の隣家のためにお譲りせなアカンところがあったり、あるいはデザインに重きを置きたいなら、そっちを優先したりということで、割り切りとかこっちが出たらこっちが引っ込む、いわゆるトレードオフ問題みたいな感じで最後は決めていただいたらいいのかなと思います。