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集成材は使わない方が良いのか?

今回は集成材について解説します。

あるお客様が「集成材を使わない方がいいんですか?」とすごく心配そうに僕のところに聞きに来ました。最近、家づくりの情報を発信しているYouTuberの方が集成材にダメ出ししていて不安になったとのことでした。「本当のところどうなんですか?」というご質問がありましたので、今日は集成材について解説します。

仕事をしていると、自分が良しとしていることや得意としていることを推すということは私も含めてあります。好みや価値観で意見を言うのは全然OKだと思うんですけど、一方的・全面的にダメだと根拠なく話すのは良くないと思います。

「私はこの優先順位でこういうことをおすすめします」ということが、一番家づくりを真剣に考えている人の役に立つと思っています。今日はそういう感じで集成材についてフラットに語りたいと思います。

無垢材と集成材がどのように作られるかを説明します。

まず無垢材です。大体、木は全部丸太ですよね。その丸太を丸いまま使うケースはあまりなくて、梁のように四角く加工して作ります。その加工を製材と言います。丸太の中の良い部分を狙って加工するのが木材の製材のやり方です。

次に集成材です。丸太には大きいものもあれば、小さいものもあります。それぞれの使える部位を小さく切り取って、ある基準に基づいて張り合わせ、必要な断面を形成するのが集成材です。

私が考える集成材のメリットは、強度が高くなりやすいことです。無垢材は神話性が強く、強度があると思う方が多いです。しかし、JAS(日本農林規格)では木材の品質に規定があり、無垢材は一般的に無等級で、強度に関しては「最低ここまではあるでしょう」という見なしになりやすいです。

だから木には良いもの・悪いものの幅があります。「この木は目が詰まっていてしっかりしているな」というものや、「この木は年輪の付き方が良くないな」というものなど、バラつきがあります。それから、木は乾燥して使うことが多いので、割れたりひびが入ったりすることもあります。割れが悪いと言っているわけではなく、木の割れは繊維の方向に割れるので、使い方に工夫が必要です。

一方、集成材は基準強度があり、「この形の規格の集成材なら、これくらいのヤング係数は出るよね」という基準があります。この基準に基づいて構造計算もします。

目利きの人が100本ある丸太から良いものを選んで作れば、すごく強度が高いものができますが、通常はバラつきがあって揃えられないので、JASは無等級という形で安全側に無垢材をみんなアカンとしています。これはちゃんとした機関が言っているので、これ以上の理屈はありません。

なので無垢材は大きな断面の木を取る時には、ちゃんとした大きな木が必要です。逆に集成材は小さくて若い木でも木材が取れるのでコストコントロールがしやすいです。小さい木を製材してから乾燥させるので、乾燥も早いです。そして大きな木を丸ごと乾燥させるより狂い(変形)も起きにくいです。仮に小さい木が変形しても、その寸法で変形したまま安定するので、もう一回プレーナーをかけて組み立てると安定していて確保もしやすいです。

一方、デメリットとしてよく言われるのは、樹種によっては水に弱いということです。よくこういう解説でやり玉に上がるのが「ホワイトウッド」という木です。日本の「ヒノキ」「ヒバ」に比べると弱いと言われています。ただ、この木自体は雨晒しに置くことが少なく、社寺仏閣の真壁工法の無垢の木むき出しでない限りは外壁などで囲まれて雨が当たらないことが多いです。確かに水には弱いですが、組み合わせで何とかなります。

そして、人の手で接着剤を使っているため、すべてが完璧に引っ付いているかどうかわからないので、一部が剥離することが欠点だと言われています。

お客さんが質問されていたYouTuberの動画も見ました。例えば、その人がやっているのは集成材の「同一等級材」です。同じような等級のものを貼り合わせて加工します。柱は真四角の断面なので、同一等級材を4枚とか2枚で組み合わせているものが多いです。これは柱など縦使いに向いています。

そうすると仮にその柱の4分割どれかが部分的に接着が弱かったり剥がれたりすることがあっても、この柱の特性上気にすることはありません。そういう割れがあることに関しては素人の方は「どうなんだろう」と思うかもしれませんが、玄人はあまり気にしていません。

それが証拠に無垢の柱も「背割り」といって、丸太や四角い柱にあらかじめまっすぐ切れ目を入れます。なぜかというと、無垢の柱は絶対割れるからです。割れるのですが、あらかじめ背割りをしておくと、構造的に影響しないところに力が逃げていきます。こういう同一等級を張り合わせた柱は、そういうことが万が一あっても木の特性から言うとあまり重要視しません。ないに越したことはありませんが、無垢でも全部が割れないわけではありません。割れない無垢もありますが、ある程度の安全が見込まれているのが木材の考え方です。

そしてもう1つが、無垢の梁に対して積み重ねた集成材を「異等級構成」と言います。丸太は「芯材」という真ん中が一番密実で色が赤くなって強くなっています。外の若い部分は比較的白っぽいので、この赤いしっかりしたところの強度が一番高いです。

この梁の両側上下に強度の高い芯材を持ってきて、次に少し強度が落ちる部分を配置するという感じで構成します。強度で言うと、上下グラデーションになった形で組むことが多いです。

木材を使用するのは柱と横架材(梁・土台)しかないので、柱に向く集成材の作り方、横架材に向く集成材の作り方があります。前にもお話ししましたが、鉄骨はすごく丈夫な概念で、鉄骨の梁はH鋼と言って文字通りHを横にした形になっています。これは上と下が分厚い鉄で、真ん中はフランジという薄い鉄でH型に結んであります。この鉄骨構造が発明されて、大スパンが軽々と飛ぶようになりました。

全部鉄にしたら強いですが、すごく重たくなるので材料の重みだけで変形したりします。なるべく自重の影響を受けずに、かつ強度が落ちないように考えられてH鋼の断面が作られたのです。この集成材は木造版のH鋼です。だから大断面かつ高強度を実現しやすいのです。無垢にはない良さがそういうところにあります。

次に接着剤剥離でよくやり玉に上がるのが「白糊」です。白糊を批判する人は、雨がかりしない用途で作った構造用の集成材に雨をバンバン当てて「剥がれた」と言いますが、それは水溶性の糊なので当然剥がれます。一方で「黒糊」という水に強く、剥離しにくい糊を使っているものもあります。

昨今、CO2削減の観点から、特にヨーロッパやアメリカでは大きな木造の建物に木造の大断面を使用することが推奨される風潮があります。ほとんどのケースでは外壁で木を囲んで濡れないようにしていますが、木肌が美しいために露出させることもあります。その際は黒糊を使用しています。風雪に当たっても特に大きな問題は起きていません。このように、集成材の特性を理解していれば問題はないことを分かってもらえたらと思います。

次に無垢材のメリットです。無垢材は何せ一本の木で作るので、美観的にも訴えるものがあります。私も無垢の木は大好きです。もちろん糊を使わない天然素材100%なので、例えば私は全然平気ですが、樹脂系の化学的なものに過敏な方は無垢材が良いと思います。そういうことが特段なければ、特に気にする必要はないと思います。

集成材でも言いましたが、無垢材のデメリットの1つは乾燥がとても大変なことです。天然乾燥で長い時間をかけてゆっくり乾燥させるのが一番良いのですが、保存期間が長ければ長いほど在庫リスクが高まります。そのため、機械の窯に入れて短期間で乾燥させると、ひびが入ったり狂ったりしてしまいます。

あまりにひどいひびは取り除くのでロスが生じます。乾燥によるロスや、反りが後から来ることもあるので、そこがデメリットです。

私は無垢材のことをやり玉に挙げたいわけではありません。私が尊敬している九州のエコワークスの小山社長という方がいらっしゃいます。小山さんはもともと林業出身で山を持っている人です。山で自分で木を生産して長い時間をかけて自然乾燥させることを得意としています。それはエコワークスさんの強みなので素晴らしいと思いますが、安いわけではないので、購入する人によっては優先順位が変わることもあります。何が良い・悪いとかではないのです。

だからと言って、無垢材の大断面の梁が弱いわけではありません。今ではずいぶん少なくなりましたが、丸太の梁や太鼓梁には松が多く使われていました。松や杉の木はまっすぐではなく、ぐーっと曲がっていることが多いです。このような曲がった松の木を利用して、曲がった梁のまま両面を削り落として断面を整え、それを上からドンと落とし込むような太鼓梁は非常に良いものです。プレカットでも大断面の梁が使われることはありますが、ここは手刻みが適しています。

昔は金物などなく、「仕口」を作り、それに「込み栓」という抜けない堅い木で栓を作っていました。昔の木造建築は今のように金物で固めるのではなく、木組みの仕口にある程度の力を加えてがっちり組ませていました。今はまっすぐな四角の梁が普通に使われますが、これも立派です。しかし、重たいので下がってきて(クリープして)しまうことがあります。下がることに対して、太鼓梁は反対側に反っているので下がりにくいです。下がろうとするときに広がる力がかかるので、仕口にグッと力がかかってがっちりします。このような技術ができるのであれば、ぜひやるべきです。

階の床の梁はまっすぐでなければなりません。しかし、大きな家の2階の大きな屋根の梁には、昔は太鼓梁が3本4本並んでいました。古民家の下から見たときの素晴らしさは、この太鼓梁が力強く見えて、とてもかっこいいからです。

最終的な結論を言うと、「無垢材」も「集成材」も雨水に直接当たるのは良くありません。濡れないようにする工夫と、仮に濡れても素早く乾く通気換気ができることが、どちらの木を選ぶにしても前提です。どちらの木が良い・悪いということはありません。また、構造計算で安全を確認することとコストも重要です。総予算は決まっているので、その中で「丈夫な家がほしい」と思うのは当然です。そういった中で木を選ぶべきで、集成材だから外すべきでもないし、無垢材だから良いということでもありません。

建築は総合的なものです。かっこよく言うとインテグラル(必要不可欠)なものです。適材適所の使い方をして、その家づくりをする人の価値観に基づいて選択するのが建築のプロです。

「集成材を使うな」と言い切る人は、自分の価値観を押し付けている人か、優先順位を押し付けている人か、知識がない人だと思います。ぜひ参考にしてください。

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