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夏型結露対策の基本の基本について

今回は、夏型結露とその対策について解説します。

最近蒸し暑い季節になってきました。これからどんどん暑くなっていく時期の家の中で、最近顕著化しているのが、夏型結露です。

結露といえば大概は冬に起こるものです。まずは冬型結露について、図で説明していきます。壁の断面の構成を見ると、まず一番外側には外壁があります。最近の工法の建物の多くは、外壁の内側に通気層という通気する部分があります。そして、建物の壁をラッピングするような感じで防水透湿シートを貼ってあることが多いです。そしてその裏側には、外壁の下地になる面材と言われる板が貼ってあり、その中に断熱材が入っています。断熱材の内側には、内装の仕上げの下地になる石膏ボードなどが入っています。

冬型結露では、外気温がものすごく冷たく、氷点下になることもあります。一方、お家の中は寒いから暖房するので、20℃以上あることもあります。外気温が0℃、室内が20℃とすると、20℃も温度差があるのですごく結露しやすくなります。

人間が暮らしていると、煮炊きしたり、呼吸したりすることで水蒸気が出ます。それがそのまま下地のボードに吸収されて、断熱材の中に入っていきます。断熱材を通って面材の壁際のところに、水蒸気がある程度流れていくことが頻繁にあるんです。その時、外壁から面材のところまでは断熱材がないから、温度はほぼ外気温通り0℃です。その0℃と、室内側から入ってきた20℃ほどの水蒸気との間ですごく温度差があるので、ここで初めて水蒸気が水に変わって、中がべちゃべちゃになります。これが冬型結露の正体です。

冬型結露に対しては、北海道で最初にその現象が顕著になって、いろんな改良案が出てきました。この対策は本州でも一緒で、室内で発生する水蒸気を断熱材に入れないことです。そのために、石膏ボードと断熱材の間にピシッと貼るのが、気密シートです。多いのはポリエチレン素材のものです。ポリエチレンのシートは全く水蒸気を通さないので、これを貼っておくと、水蒸気が壁内に入っていく確率がかなり減ります。

万が一、ポリエチレンの折り重なった所や隙間から入ってきた場合には、速やかに外に出すことが大事です。そのために面材と通気層の間には透湿シートという、雨は入らないんだけど湿気は出してくれるという、スキーウェアのゴアテックスみたいなものを貼っています。水蒸気が万が一入ってきても外に出して、外は通気していますからぐんぐん乾く、という仕組みにして、結露が起きにくいようにしています。冬型結露対策はこんな感じになっています。

ここで改めて、結露が起こる条件を言っておきます。例えば暑い時に、冷たいビールをジョッキに注いで、しばらくしたらグラスが曇ってきて、ちょっと水がたれてきますよね。あれが見事に結露を表しています。夏は湿気が多いので、空気中には湿気・水蒸気がいっぱいあるわけです。ビールはキンキンに冷えたやつがいいので5~7℃ぐらいとすると、室温25℃、グラス表面7℃ぐらいの温度差になり、結露します。つまり、結露するためには、水蒸気と、面に発生する温度差が必要なんです。逆に言えば、この2つのどっちかがなかったら、結露はしません。

これを踏まえて夏型結露を説明します。夏型結露は冬型結露の逆の方向に結露する現象です。夏の外気は湿気がムンムンなので、壁の通気層にも湿気が入ってきます。通気層と面材の間には防水透湿シートがありますが、これは雨水は弾いてくれるけど、「透湿」なので水蒸気は通してしまい、断熱材側に湿度が入ってくるんです。冬場は絶対に、断熱材に水蒸気が入らないようにしていたのに、夏は入り放題となってしまいます。

例えば暑がりのお父さんが18°C・強風設定でエアコンをかけていて、お父さんが「涼しい」と言っている後ろ側の壁が、この夏型結露を起こす壁だとしたら、時間帯によってはこの壁がキンキンに冷えてしまうことがあるんです。この時、外からは30℃以上の熱々の水蒸気がが来ています。室内側が20℃ぐらいだったら、すごく温度差が発生するので、壁の内側で結露します。これが夏型結露です。

このような夏型結露を防ぐ方法を考えます。冬型結露に対しては気密シートというポリエチレンのシートでよかったんですけど、夏型の時は、断熱材と石膏ボードの間に可変性の透湿気密シートを使います。気密というぐらいなので、空気が漏れたら気密が損なわれます。でもこのシートは、空気は通さないけど、部屋の内側の水蒸気は外側に逃してくれるんです。これ発明した人はすごいですよね。このシートを貼ることによって、水蒸気の流入があって温度差が発生しても、水蒸気のまま部屋の内側に逃がしてくれます。石膏ボードは透湿性がありますから、それも通って室内側に逃げていきます。そんな感じで夏型結露を阻止するのが、対策の基本になります。

小屋裏エアコンのことを解説した動画でも言いましたが、気密ラインに可変性透湿気密シートを用いることと、そのシートに直に冷気が当たりにくいようにするのがいいです。だから、例えば気密シートの屋内側に胴縁を打ったり、空間を作って少し空気層を持たせて石膏ボードをするとか、もう1枚薄い断熱材を貼るなどしておくと、表面温度を極端に下げるということはかなり緩和できます。こういうことが、夏型結露の対策の基本になります。

つまり、表面温度が下がることを阻止するということです。水蒸気が入ってくるのは、冬型結露の対策をしている以上ある意味宿命的なものです。もちろん速やかに出てくれるようにしたいんですけど、外気の湿気の量が多かったらなかなか難しいところがあります。こういうところを知っておいてもらえたらと思います。

実は今年の2月に、カナダのバンクーバーに行き、建築のいろんな広報の視察をしてきました。バンクーバーは、北海道の上に樺太がありますが、あれぐらいの北緯です。だから基本的に夏は涼しい土地柄ですが、今は気候変動の影響があるそうです。数年前のバンクーバーは、姫路と同じぐらいの人口50~70万ぐらいの都市だったと思うんですけど、ひと夏の数日の間に、何百人という人が熱中症で亡くなったそうなんです。それを受けて、今はカナダのバンクーバーでは、法律でクーラーをつけることが義務化されているそうです。それぐらい気候変動の影響があって、樺太ぐらいの緯度のところでも夏に暑くなってるということです。

つまり何を言いたかったかというと、エアコンはこれからも絶対に必要だということです。九州・沖縄はもちろん、本州も、ひょっとしたら北海道も、ものすごく湿気が多くなっているんです。湿気が多くなってくるとますます暮らしにくくなるので、エアコンはこれからも絶対に手放せなくなります。

エアコンを使う中で、夏型結露のリスクは、10年ぐらい前と比べても随分変わってきています。これからは、夏型結露に対しても気にしながら家づくりをやっていく時代に入ったと思います。ぜひこんなことを頭に置いてもらって、これからお家を建てられる方は、これを盛り込んだ形の設計の仕様で施工していただけたらと思います。かなりマニアックだったかもしれませんが、大事なことです。ぜひ参考にしてください。

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