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「巣立ちの時期」だから子ども部屋活用方法を考える

今回は「子ども部屋活用方法」について解説します。

世間はすっかり春です。春といえば、子どもたちが巣立っていく季節です。私もこの時期になると、子どもが巣立つことを考えて、少しセンチメンタルな気持ちになることがあります。この時期には、お子さんが家を出ることで子ども部屋が空く問題が生じます。そのため、打ち合わせの際に「子ども部屋をどう活用すればいいのか」といった話題がよく出るようになりました。今日は、この「子ども部屋の活用方法」についてお話ししたいと思います。

実は、このテーマについては以前の動画でも解説したことがあります。その際にお伝えしたのは、子ども部屋の活用方法はいろいろありますが、世間でよく言われているアイデアには、それほど意味がないものも多いということです。そもそも大切なのは、「どのような子ども部屋をつくるべきか」という点なのです。

子ども部屋の広さについて考えてみましょう。昔は6帖程度の子ども部屋が一般的で、中には8帖の部屋を用意する方もいました。ただ、本当に6帖も必要でしょうか? 4.5帖、あるいは4帖で十分ではないでしょうか。さらには、最小寸法である3.25帖(2275mm×2275mmのスペース)でも個室は成り立ちます。そもそも子ども部屋が広すぎることの是非を考えることも大切です。

また、一般的には、学習机や椅子、衣類を収納するスペース、本棚、ベッド、場合によってはオーディオやパソコンなどを置くことが想定されています。しかし、それらの機能が本当にすべて必要なのか、改めて見直してみるのも一つの方法です。たとえば、学習スペースをスタディコーナーとして別に設けたり、衣類をファミリークローゼットに収納したり、家族で共有できる本棚(ファミリーライブラリー)をつくるといった工夫をすれば、子ども部屋自体をコンパクトにまとめることができます。その結果、将来的にも使い勝手の良い部屋になるのではないでしょうか。

この話をする際に、建築家の飯塚豊先生がよくおっしゃっている言葉を思い出します。それは、「家族がいつまでも仲良くありたいのなら、積極的に離れなさい」という考え方です。また、私の大好きな内田樹先生も、「家族は期間限定のものだから、いつかは離れていくものだ」とおっしゃっています。

こうした考え方も踏まえながら、少し偉そうにお話しさせていただきました。そして、「家族にとって家には、2つの安心が必要だ」ということです。1つは、「家族がいつでも一緒にいられて、安心して巣立つことができる」という安心感。もう1つは、「1人になりたいと思ったときには、いつでも1人になれる」という保証のある安心感です。この2つの安心を持つという視点で、子ども部屋について考えてみるのも良いのではないか、というお話をしました。

この話をしたところ、ある方から「いやいや、これから家を建てるなら参考にできるけど、すでに子ども部屋がある家に住んでいて、ちょうど子どもが巣立つ時期を迎えている私たちにとっては、そんな風に言われても、正直つらいですよ」と言われました。その言葉を聞いて、私はハッとしました。

実際、私は動画の冒頭で、「世間で言われている子ども部屋の活用方法は浅い」と批判しましたが、それについて改めて考え直すことになりました。よく言われる活用方法としては、「夫婦が別々に就寝するための寝室にする」「書斎にする」「趣味の部屋にする」「収納スペースにする」といったものがあります。しかし、それを聞いて私が本当に思ったのは、「子ども部屋の活用方法よりも、子どもが巣立つこと自体の方が、ずっと大きな問題なのではないか」ということでした。

というのも、私自身も最近、子どもの巣立ちを経験したばかりだからです。我が家の子どもたちは大学を卒業するまでは親元を離れていました。私は「大学に通える距離でも、1人暮らしを経験した方が良い。親のありがたみを知る機会にもなる」と考え、送り出しました。しかし、その後、娘たちが一度実家に戻ってきたのです。

正直、私は嬉しかったです。娘が家にいると、なんとなく華やかになりますし、ご飯を一緒に食べるのも嬉しかったです。母も喜んでいました。18歳のときに娘を送り出したときは、「自分はしっかり子別れができる父親だ」と思っていましたが、実際には全然できていなかったのです。それに比べて、娘たちはしっかりと親離れをして、自分の人生を歩んでいる。「なんて立派なんだろう」と思いました。

私は普段、偉そうに子ども部屋の活用方法について話していますが、いざ親の立場になると、やはり感情が揺さぶられるものだと、身をもって実感しました。

それで、私が子ども部屋の活用方法として提案するのは、大きく2つあります。

1つ目は、子ども部屋をゲストルームとして活用すること です。ビジネスホテルのシングルルームのように、ベッドとちょっとした机、テレビなどを配置し、友人や家族が気軽に泊まれるような部屋にするという考え方です。こうしておくことで、「どうぞ、泊まっていってください」と気兼ねなく言える空間になります。最近、この活用方法がとても良いのではないかと思っています。

もう1つは、少しドキドキする話題ですが、「夫婦の住まい方」に関する視点 です。以前、*”60歳のトリセツ”* という本を参考にして、夫婦のこれからの住まい方についてお話ししました。その中で、奥さんが旦那さんに対して「子どもがいなくなった後、夫が仕事を辞めたらこういう風に思う」といった本音を聞く機会がありました。その内容を知って、「いや、そうなのか…それはまずいな」と思うこともありました。そういった背景を踏まえて、書斎や趣味の部屋として活用する のも、1つの選択肢だと考えています。

子ども部屋の活用方法について話すとき、重要なのは 「子どもが巣立つ時期は、ある程度前から決まっている」ということ です。とはいえ、実際に子どもが巣立つのは、受験を乗り越えた後や、就職が決まったタイミングが多いため、子ども自身もその後のことを考える余裕がないことがほとんどです。そして、いざ進学先や就職先が決まると、「本当に巣立つんだな」と実感することになります。

そこで、親子で「子ども部屋をホテルのようなゲストルームにしよう」と話し合ってほしい のです。なぜなら、子ども自身も中途半端な気持ちになりがちだからです。自分の服や荷物を実家に置いていくこともあるでしょう。それ自体はスペースがあれば問題ないのですが、親としては、子どもに「巣立つ準備」として、ある程度の断捨離を経験させる ことも大切だと考えています。

親にとっても、子どもにとっても、「本当に旅立つんだな」と実感する機会を持つことが大切です。そういう 儀式のような時間 を設けることで、親子でしっかりと「子別れ」をして、新しい生活に向けた気持ちの整理ができるのではないかと思います。

私の家は、姉と妹の2人姉妹なのですが、彼女たちはそれぞれ別々の部屋で寝ていました。でも今は、たまに帰ってくると、一緒の部屋で過ごすことが多いんです。姉妹なので仲が良く、同じ部屋でわいわい話しながら寝たりしています。

そう考えると、子ども部屋をツインルームのようなゲストルームにしておけば、子どもたちはいつでも気軽に帰ってこられる のではないかと思います。さらに、そんな部屋があれば、もし将来、娘たちが旦那さんや彼氏を連れてくることがあったとしても、泊まる場所として活用できます。また、もし孫を授かったら、ダブルツインルームのような形にして迎えられるかもしれません。そうなれば、もう万全ですね。

それに、たまには夫婦喧嘩をして、「顔も見たくない!」となったときに、どちらかが避難できる場所としても使えるかもしれません(笑)。こうしたことを考えると、子どもが巣立った後、家の個室の役割を、子どもたちと一緒に決めておくのはとても大切なことだと思います。

私自身、大学を卒業して社会人になり、遠くで働くようになって、久しぶりに実家に帰ったら、自分の荷物が何もなくなっていたんです。大事にしていたバイクやオーディオセットもすべて処分されていて、ものすごくショックでした。でも、親にしてみれば「もう使わないんだから仕方ない」と思ってのことだったのでしょう。だからこそ、子どもが巣立つときに、親子で「どの荷物を残すのか、処分するのか」を話し合うことが大事だと思います。

親の立場としても、やむを得ず処分することがあるなら、「もし大切なものがあるなら、自分でちゃんと確保しておきなさいよ」と伝えておくことで、後々のトラブルも防げるのではないでしょうか。子どもが家を出るというのは、親にとっても、子どもにとっても、ある種の喪失感を伴う出来事です。でも、子どもは新しい人生を歩んでいくので、自然とその環境に適応していきます。一方で、親は「子どもが巣立ったことで、家の役割が変わる」という現実に直面したときに、寂しさを感じるのではないかと思います。

さらに、定年後の夫婦の生活について考えると、「旦那さんが家にずっといることがストレスになる」という奥さんの声もよく聞きます。そうであれば、夫婦の間でも、家の使い方について前向きに話し合っておくとよいでしょう。例えば、「お父さんの逃げ場として、俺の子ども部屋を使わせてくれ」「お前らのベッドはもう一つの部屋に移すから、帰ってきたときはそっちで寝てくれ」といったように。あるいは、「お母さんが1人の時間を持てるように、この部屋をお母さんの部屋にしてあげたいけど、どう思う?」といった提案を、カラッとした雰囲気で話せるといいのではないでしょうか。

子ども部屋の活用を考えることは、単に空いた部屋をどう使うかという問題ではなく、家族のこれからの関係をどう築いていくかを考えることでもあります。子どもの独立を機に、夫婦としても「これからの暮らし方」を話し合う節目にすることで、お互いの距離感を見直し、より良い関係を築くきっかけになるのではないかと思います。「積極的に距離を取る」というと、ネガティブな印象を持つかもしれませんが、決して「離別する」という意味ではありません。むしろ、お互いを尊重しながら、それぞれの時間を大切にすることで、より仲の良い関係を築いていくという考え方です。

そうした視点で、子ども部屋の活用について前向きに考えてみてはいかがでしょうか。

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