石油ストーブvsエアコン、どっちが暖かい?
今日は「石油ストーブVSエアコンどっちが暖かい?」というテーマで話をしたいと思います。
僕が過去に投稿した何かの動画を見た方から「森下さん。石油ストーブってどう思います?僕あの暖かさが忘れられないんです」という声をもらったんですね。(批判ではなく、石油ストーブも捨てがたいんですよね、という内容でした)
この話を聞いて、僕自身が暖房に関する大事なポイントについてあまり解説できてなかったなと反省がありまして、今日はそのことについても解説したいと思います。
僕のスケッチを見てください。
石油ストーブにもいろんな形態がありますよね。よくあるのが筒状のだるまストーブ。僕の家にも長らくありまして、確かに暖かいです。
石油ストーブを採用するメリットとしては、今言ったように“暖かい”というのがあります。今回質問された方もおっしゃっていますよね。
石油ストーブは何せ火を焚きますから、熱量がすごいです。エアコンも暖かいですが数値にすると50〜60℃ぐらいです。でも石油ストーブってもっと高温です。お湯も湧かせるから100℃以上、200℃〜300℃もあります。熱量がものすごく大きいので暖かく感じるのが最大のメリットになります。
ちなみに石油ストーブの熱の伝わり方は放射になります。近ければダイレクトに伝わりますし、輻射熱なので少し距離があっても暖かさを感じます。
他にもメリットを挙げると、上にやかんを置いてお湯を沸かしたり、うちのおばあちゃんは煮物をつくったりしてました。あとは電気がいらないので停電した時も暖房ができます。機械じゃないので静か、というのもあります。火がチリチリ燃えているような音はしますが、わずかな音です。石油を炊くので加湿もしてくれるのもあります。石油は1リットル炊いたら水が1リットル出ると言われています。結構加湿をしてくれますよね。
あとは炎のゆらめきもメリットだと思います。原始人の頃、火に当たって暖かいというのが今の私たちにも残っているのかもしれません。郷愁というか、本能的に訴えるものがあります。
その代わり石油ストーブにはデメリットもあります。
一番は火(灯油)を炊くので、二酸化炭素も出ますしガス系のものも排出されます。空気が汚れやすいので吸気が必要です。また石油を炊くから臭いもあります。それから電気と違って補給がいります。「灯油なくなったよ!」と言われたら灯油缶を持っていって、ポンプでシュポシュポッとやるの手間でしたよね。僕は毎日、朝と夕に補給しなくてはいけないのが面倒だと思っていました。
また、石油ストーブは火を炊いてますので、地震の時にひっくり返ったら危ないです。バチンと消える装置も付いてますが心配ではありますよね。小さい子がいるお家でしたら、さわってヤケドしないようにゲージでしっかり囲う必要もあると思います。
ストーブはエアコンと違って、細かい温度調整ができないのもデメリットです。
また、よく言われるデメリットが省エネ性の低さ。石油のエネルギー1に対して、熱エネルギーは1しか取れないです。
こういうところが石油ストーブのメリット・デメリットになります。
一方でエアコンのメリット・デメリットもサクッとお伝えしておきます。
まずメリットの1つ目は冷房もできるところ。それから安く買えます。量販店に行けば品揃えも多いです。それから最大のメリットがエネルギー効率がいいところ。省エネ性が高いです。さっきの石油ストーブとは逆で空気をあまり汚さないのもメリットです。
もちろんデメリットもあります。それは外の気温がすごく低かったら、エアコンはパワーダウンします。石油ストーブは外の気温に影響されないです。でもエアコンの場合、寒さが厳しいエリア(長野・青森・北海道など)で使うとパワーダウンしやすいです。寒冷地用のエアコンを使う必要があります。(モリシタがある姫路のような本州の6地域と呼ばれるエリアであれば、パワーダウンの心配は少ないです。)
またエアコンというのは部屋の上の方に付けることが多いのですよね。暖かい空気は軽いですから、この取り付けだと床下まで行って床を温めることは苦手です。
それから石油ストーブでは加湿してくれると話しましたが、エアコンは加湿しないので空気が乾きます。これらがデメリットです。
このうえで、石油ストーブとエアコンのどちらが暖かいか考える際に1つお伝えしたいことがあります。
それは「採暖」と「暖房」という言葉の違いについてです。みなさん、採暖ってご存知ですか?
日本は暖房の歴史があまり長くないです。たかだか数十年くらいです。で、それまでの日本の暖房って実は採暖でした。古い例を出すと火鉢になります。部屋の隅に置いて手をあぶるので手焙(てあぶり)とも言っていました。こたつも採暖です。火鉢の上に櫓(やぐら)を組んで布団を掛けただけですからね。電気ストーブの近くで手を出して「寒いなぁ」とするのも採暖です。
炎の放射というか、石油ストーブから出てる熱で手とか自分の体の一部を加熱することで暖を取るというやり方を「採暖」と言います
「採暖」というのは原始的で本能に訴えるものですが、あまり体に良くないと言われています。実は今人気の焚き火とかキャンプファイアもそうです。火を焚いてコーヒーを飲んだりバーボンを飲んだりするの楽しいですけど、あまり体に良くないです。
というのは、炎というのは暖かい空気とは別物ですよね。放射で体の一面だけを温めるので、その一面の下にある血液も温められて他の場所に流れて行きます。
そうすると体の中を暖かいものが駆け巡るので対流感がありますよね。酒を飲んで酔ってくる時の気持ち良さに似ています。石油ストーブの暖かさの正体は、これです。酔っ払うときと同じで快感なんです。つまり採暖というのは快感なんですね。
なので日本人って(あまり体によくないけれど)採暖を大事にしてきましたし、忘れられないんです。でもそうやって温めた血液が他の部分にも回っていくのは、心臓や血管に負担がかかります。お酒も飲んで酔うのは快感ですけど、体には負担がかかってますよね。石油ストーブはお酒に似ています。
一方で部分的に暖を取るんじゃなくて全体を温めること。これが暖房の概念になります。なので日本人が暖房と呼んできたものは、実はほとんどが採暖です。
日本というのは暖房後進国なんですね。お隣りの韓国は暖房先進国です。「オンドル」と言って炊いたものを床下に送って床全体を温めるという素敵な暖房方法があります。あれは暖房です。
東京大学に前真之先生という方がいらっしゃいます。
その方が「暖房というものは部屋の空気・壁・天井・床の表面を温めて、体の放熱を穏やかにするのが目的です」と解説をされています。
人間の体は放熱が激しかったら寒くて、夏のように放熱ができない状態なら暑く感じますよね。この体の放熱が穏やかになると、人間は快適だと感じます。
なので石油ストーブで得られる暖かさというのは、本当の意味での「快適」とは違うんですね。
この話を知っておいてもらえると、石油ストーブとエアコンのどちらがいいかということについては一定の答えが出るかなと僕は思っています。
その上で最後に、ヒートポンプという技術のことをお話ししたいと思います。
エアコンはヒートポンプというポンプを使ってます。外部の熱を汲み上げるイメージですね。これはあまり力がいらないです。
電気ヒーターとか石油ストーブは1のエネルギーに対して1の熱を出しますが、ヒートポンプは1のエネルギーに対して5〜6倍のエネルギーを出せます。
もちろんヒートポンプは電気で行うので発電や送電などでロスがあって37%ぐらいしか来ません。でも、このロスを割り引いても1のエネルギーに対して2倍強の熱が出せます。つまり省エネ性が高いんです。
石油ストーブには快楽的な暖かさがありますが、本当の意味での快適を考えると、お金の面での安心というのも大切ですよね。
この「快適」というのは穏やかさでもあります。すごい暖かいとか、すごい涼しいではなくて、暑くもなく寒くもないのが一番快適です。この暑くもなく寒くもない状態への最適化を考えると、暖房の種類でいえばエアコンが向いているということになります。
ちなみにエアコンで快適さを成立させるには1つポイントがあります。それは高気密・高断熱の家であることです。昔の家みたいに隙間風がビュービュー吹いてくる、C値=5〜6とかあるような家は石油ストーブの方がいいかもしれません。換気しなくても隙間風が入ってきますので。
昔の家に住んでるお年寄りの方にお会いすると「私は石油ストーブが一番」と言われることが多いです。でも体には優しくないです。
おばあちゃんたちの健康を考えた家つくるなら、断熱リフォームをしっかりやって、暖房器具はエアコンにする方がいいです。エアコンを使うと部屋が乾燥しやすくなるので、加湿器も必ずプラスしてください。
まとめになりますが、暖房器具を検討する際は、何をもって暖かいのかというところを一度整理してほしいと思います。
真の快適というのは穏やかさであり、それこそが省エネで、お財布にも体にも優しいです。
こういうところを思っていただいて、「石油ストーブとエアコンどっちがいいのかな?」と決めていただくと、うまくいくはずです。