省令準耐火構造を解説します
今日のテーマは「省令準耐火構造」とです。この言葉聞かれたことありますか?聞いたことあるという人は、家づくりを真剣に検討されていて、技術者の方などから話を聞かれた人じゃないかなと思います。でも今回、このテーマにしたのは、そうした方が僕のところに質問をしに来たのですね。おそらくイマイチ分からなかったのではないと思います。「省令準耐火構造」は、ぜひ頭に入れてほしいので、僕の方で解説をしてみたいと思います。。
「省令準耐火構造」って漢字を見ると、内容がなんとなく分かると思います。「詳しいことはわからないけど、火災に強い構造なんやなー」というのは感じていただけると思います。これには3つの特徴がありますので詳しく説明をしていきます。
1つ目は外部からの延焼防止です。自分の家がきちんと対策を取っていても、隣近所の家が火事になったら燃え移ってくることがありますよね。これに対する防止措置というものになります。
2つ目が、自分の家の各室の防火です。厳密に防火というより、一定時間、一気に燃え上がらないようにする感じです。すぐに火は消えないけど、燃え上がりを防いで、避難できるようにする。これをクリアしてるかどうかになります。
3つ目が、家の中での延焼を遅くするものです。これも火事が発生した時に、逃げ遅れないようにするためです。これらがちゃんとできている家を、省令準耐火構造と言います。
建物の絵に落とし込んで見ていきたいと思います。特徴1に関しては屋根に施します。火の粉がかかってきますからね。それから軒天にも施します。火って下から下からあがってくるので。それから壁もです。こうしたところを不燃材にするということになります。あとは家の中の規定になります。最近のお家は、内装の下地のほとんどが石膏ボードという不燃材を使っています。不燃材で部屋が包まれているかどうかを見ます。ただ、それでOKじゃなくて一番のポイントは「ファイヤーストップ」というものになります。
ファイヤーストップと言われても「え?」って感じですよね。これは火の手が伝わらないようにするものです。火は外壁とか間仕切りから燃え上がっていきます。特に間仕切りの中は、柱と柱になっていて空間ができています。そこから火が入って上にあがっていきます。栓をするような感じで両側から石膏ボード貼って、間仕切りの中を木でしっかり埋める。あるいは石膏ボードを貼り伸ばすことで、火が燃え上がらないようにします。これは断熱・気密で言うと「気流止め」と同じです。冷たいすきま風が上がないようにしているのと一緒です。すきま風と同じように火の手も同じように入ってくるので、これを止めるって事ですね。ファイヤーストップは気流止めの役割も兼ねてくれます。
火災は台所やお風呂のような火を使うところで発生することが多いです。間取りのプランとしては1階が多いですよね。なので1階部分で上がった火が2階に移るのを弱くするために、天井面に補助資材としてロックウールやグラスウールを入れています。これもファイヤーストップですね厚みは5cmくらいのもので大丈夫です。石膏ボードの表面は紙なので、高温の火が当たると、紙が焼けて石膏にヒビが入った結果、ここから火が入ったりすることがあります。その時、上にロックウールやグラスウールがあったら燃え広がるのを和らげてくれます。特に火の手があがりやすい天井部分は石膏ボードも工夫します。12.5mmの少し厚いものや、9.5mmを2枚貼りして強化することもあります。
ファイヤーストップには他にも種類があります。L型の鉄を入れて、つなぎ目のところに別のやつを1枚引いておきます。ジョイントはどうしても弱いので、ここから火の手が上がらないようにするんですね。今挙げたものが、規定通りに実施されていたら省令準耐火構造として認定されます。実際は規定が細かく書かれた冊子があって、確認指示を出す形になります。
省令準耐火構造には燃えにくいこと以外にも、お金の面でメリットもあります。1つが火災保険の割引です。建物は絶対に火災保険かけますよね。住宅ローンを借りたら絶対に生命保険と火災保険料の両方入ることになりますので。そうすると火災保険は建物の価格が2000万円くらいなら、10年間の期間、保険料は10〜40万円かかります。 この火災保険の金額の約半分が割引になると言われてます。省令準耐火構造を取っている木造住宅は、コンクリート造とか耐火建物と同じような扱いになるんですね。なので保険料が安くなります。一方でデメリットもあります。細かな事をたくさんやるので、お金がかかります。省令準耐火仕様にするのは、会社さんによって色々ですが、15〜25万円ぐらいになると思います。なので、その金額を掛けても、保険料が得か損かということで判断してください。
火災に強いのはやっぱり魅力ですので、心配な方は是非やっておかれた方がいいと思います。
ちなみに僕たちの会社では全館空調の家というのをやっています。冬期は床下エアコンを使っていて、空気を下で暖めて、上へ上へとあげていく事をやっています。そうすると1階の暖まった部屋の熱が、床を通して上に上がっていって、輻射熱によって上の空間を暖めてくれる効能があります。しかし、1階の天井にファイヤーストップとして、グラスウールやロックウールを入れているので、特に吹き抜けがない構造の場合は、これがデメリットになって温まりにくくなるケースがあるので、この事を知っといてもらえたらと思います。
省令準耐火に関しては、こうしたことを知っておいていただいて、トレードオフで考えてください。
先程も言いましたが、省令準耐火構造ではないけど、高気密・高断熱の家の場合、ファイヤーストップは、耐火のためというより気流止めという意味でしっかりされていることが多いです。これらについては担当される住宅会社さんで「どういう風になってますか?」「省令準耐火にする方がメリット大きいですか?」ということを直接聞いていただくと、ベストな答えが返ってくると思います。ぜひ参考にしていただいたらと思います。