新築か?リノベーションか?判断基準を解説
今回は新築で建て替えた方がいいのか、愛着ある家をリノベーションした方がいいのか、ということについて、どうやって判断するかという基準について解説をします。
以前にも似た話をしました。
▼新築か?中古+リノベか?で迷ってる方へ
https://www.m-athome.co.jp/movie/shinchiku_chuko_rinobe
この動画を撮影した2022年6月に改めて考えた時に、ずいぶんと世の中の状況が変わったなとという思いがありまして、改めて解説をしたいと思いました。今回はその視点で話をしていきます。
これまでは、いろいろな条件はありますが、建て替えた方がいいかもしれないと言ってきました。なぜかと言うと、環境がそうだったからです。
これまでの20年間ぐらいで言ったらあまり実感はないですが、日本は円高でした。昔は1ドル360円で固定でしたが、ここ数年前で1ドル80円とか78円になりましたよね。日本は輸出産業の国だったので、すごく不利でした。一方で資源の無い国なので、原材料や他所の国で作った物は安く仕入れることができました。
それからデフレでしたね。この20年間、日本人の給料は上がっていません。つまり職人さんや関係者の給料も上がっていないので、材料費や労務費が安ければ建築も安くできます。だから家を建てるには本当に条件の良い時代でした。さらにゼロ金利政策で直近15年ぐらいの金利は昔の感覚で言ったらほぼゼロみたいなものでしたね。
なので建築費が安い、金利も安い、みんな住宅ローンを使うから、ダブルで考えたら新築はとても安い。特にローコスト住宅が台頭した世の中だったので、そこそこの性能を持った家が結構安く買えたわけです。なので建て替えた方がいい、というのは筋としては通ってるわかですね。
でも今の日本で考えると、トレンドは逆転しました。円安ですね。連日の報道でも円安がさらに進んだと言っています。80円だった円が136円とか。どこまでいくんでしょうね。もっと安くなるかもしれない。ということは、外国から買う物は高くなります。デフレがインフレに変わったので、どんどん値段が上がっています。労務費に関しても、価値ある・腕のある職人さんの値段はすでに上がっています。ちゃんとした人にやってもらおうと思ったら高いんです。建築費が高騰していますね。
さらに建て替えをするときは、解体工事をしますが、その解体工事が今は大変です。アスベスト問題で、病院や学校など公共性の高いものは封じ込めで厳格に解体しないといけません。今は町屋の小さい家でもアスベスト検査をしないといけない時代なので、アスベストの測定に引っかかったら特殊な解体をしないといけません。管理型の解体になるので、解体費用もものすごく上がっています。
そして最後の極めつけは金利アップです。アメリカのFRBは0.75%に上がったので、日本も遠からず上がります。そうしないと円安がますます進行しますからね。
つまり安易な判断は吟味がいるという風になってきます。環境が変わったということです。そもそも家の構造材が入ってこないとか、入手が難しいということもちょっと前にありました。これからもどうなるかまだまだわからない。ということになってくると、もうすっかり状況が変わったのです。ここからの建て替えかリノベーションか問題は違う視点で考えないといけません。
ではこれからどう考えるの?という1つの目安が、リノベーションとはそもそも何か?という定義の確認からする必要があります。似た言葉でリフォームという言葉があります。リフォームはこれまでもやってきたし、今はリノベーションという言葉を使います。
公式に認められたことではないですが、建築の有識者のが定義してるのは、リフォームは家を新築当時の状態に戻すこと。キッチンが古くなった、交換する。お風呂が古くなった、やり替える。できた時と変わらないようなピカピカにした状態に戻すということです。これがリフォームです。
一方、リノベは新築当時より価値を上げること。ただ単に新しくなっただけじゃなくて、新しくなった以上の価値があることがリノベーションなんだというのが定義です。じゃあその価値って何?ということを捉えておく必要があります。リノベーションによる価値アップは3つの視点があると思います。
その1つが建物の丈夫さ。構造の強さの向上です。古い家は昔の法律に則った構造計画がされているので、今の構造に照らすとほぼ弱いです。特に築年数は重要です。僕たちの地域は阪神淡路大震災の洗礼を受けた兵庫県南部の地域なので、1つはその建物が1995年の地震以降に建てたものかどうかは1つ要件になります。ざっくり30年ぐらいの築年数より古いものに関しては、地震で淘汰を受けている可能性があります。
だからもうすでにないかもしれないし、残っていたとしたらそれは一体何なのか。1つの尺度が基礎だと思います。僕の個人的な工務店オヤジの経験で言うと、27年ぐらい前の木造住宅の市場としてはようやく鉄筋が配筋されて、コンクリートが作られはじめた時期です。連続布基礎というものがようやく浸透した時代かなと思います。それ以前は無筋のコンクリートでした。地盤の状態が悪かったら、割れやすかったり不等沈下を起こしたりしやすくなります。
まずは配筋がしっかりした連続布基礎になっているか、もしくはベタ基礎になっているかどうかが1つあると思います。これがあると、建物の基礎より上の構造補強が比較的やりやすくなります。お金も掛かりにくいし、やり方もいろんな選択肢があります。面材で補強をしたり、構造金物を使ったりですね。
基礎だけは後からの強化は結構しんどいので、1995年以前の建物なら構造強化はコストが掛かるということは頭に置いておかないといけません。
2つ目の視点が快適性と省エネ性のアップです。今はいろんな発想や技術ができてきて、快適性のアップは比較的にやりやすくなりました。これはものすごく古い家でもやりやすいです。昔は壁の取り合いの気流止めがなく、隙間風がありました。冷たい風や熱い風がゴーゴー入るというパターンでした。今は現場発泡のウレタンがあるので、吹き付けることで埋めることができます。つまり断熱の強化と気密の強化が比較的簡単にできるようになりました。これに関しては築年数関係なくできるので、リノベーションをするという視点で考えたらかなりの価値のアップになります。
どうしてもリフォームで言うと、見た目を綺麗にします。ペンキが剥がれてたら塗るとか、床が傷ついたら何か貼るという具合です。ただそれをやったからといって、家が強くなるわけでもないし、家が暖かくなるわけでもないです。
最後に価値のアップは家事がしやすくなる点です。古い家の水回りの機能性レベルはやっぱり古い家のままです。田舎に行ったら未だに洗濯機が家の外にあったりします。ここに関しては間仕切りの機能としてのチェンジはする必要があります。
これら3つの視点の塩梅を見る時に、その家にあと何年暮らすんですか?というのが基準になると思います。言い方は悪いですが、ある程度の70代ぐらいのご夫婦なら、あと15年・20年でいいという声を実際に聞きます。
そういう方は1995年以前の家に住んでいることが多いので、構造の補強もやります。ただ快適性、省エネ性能・断熱性能のアップは目に見えないので、その年代の人は省略したがります。ご自分たちの暮らしの品質を上げるのは快適性アップが一番大きいので、15年・20年ぐらいでいいと言う人は、まずここを優先してほしいと思います。
その上で50代の方や20〜30年以上住みたいという方は、構造の補強はやった方がいいと思います。1995年以降の建物なら大掛かりなことをしなくてもある程度の強度は出せるので、快適性と併せて取り組んでもらえたらと思います。
最後に家事のしやすさは、リフォームでいいと言う人でも暮らしの品質に直結することなので、これは何年住もうが全ての人がやってもらったらいいと思います。
最後の最後ですが、建て替えすべきかリノベーションすべきか、大元の目安は1995年以前か以降かでチェックしてください。次に古い建物でも、基礎がしっかりした家もあるので、まずは基礎を見てもらってください。基礎を見ずして壁量の検討などをするのは画竜点睛を欠くみたいな感じがします。
続いて構造チェック。20年以上住めるということになるならば、建て替えじゃなくてもリノベーションも大いにありです。そこからやってください。
リノベーションはお金が掛かって結局中途半端になりますよねと言う人は正直今まで多かったし、ひょっとしたら僕たち業界自体がミスリードしたかもしれません。ただこれからの環境は変わりましたので、そこを頭に置いていただいてリノベーションに対する取り組みをしてもらえたらと思います。