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「理想を言えば平屋がいい」人気の理由と考えるべきポイント。

最近家づくりの話を伺っていると「理想を言うと平屋がいいです」という方がとても増えています。今日は平屋の人気と、平屋を考えるときのポイントについて解説します。

平屋が人気なのは、データでもはっきりと表れています。国土交通省が出している住宅着工統計という少し前のデータでは、2010年に居住を目的とする住宅の着工数のうち、全国平均で6.19%が平屋だったそうです。それが10年後の2020年には、居住を目的とした住宅の11.2%が平屋になっているそうです。ざっくり2倍ぐらいに増えているので、急に平屋の人気が高まったことがわかります。

人気があるということは、それだけメリットがあるのだと思います。そこで、平屋のメリット・デメリットを少し確認しましょう。人気の理由としてよく挙げられるのは、ワンフロアで開放的な作りができるイメージがあるからです。また、平屋は比較的コンパクトで、佇まいがクールで素敵だという点もあります。こうした点を考えると、多くの日本人が平屋に対して「和」のテイストを感じ、懐かしさを覚えるのではないでしょうか。初めて平屋に住む人でも、どこか懐かしいと感じるところが、人気の秘密なのかもしれません。

特に最近は、家族というよりも単身者の方にも人気です。また、1人暮らしや夫婦2人などのスモールファミリーにもフィットするそうです。私たちの若い頃は、家は広いほうがいいという人が多かったのですが、最近は広くなくても良いという考え方が増えてきており、それが平屋人気を後押ししているようです。

シニア層が平屋を希望する理由としては、年を取ってもバリアフリー化しやすい点が挙げられます。年齢を重ねると、高低差が負担になってきますが、平屋なら生活空間の移動が楽です。平屋のメリットは、生活動線が短く、家事や身支度の動線が非常にコンパクトで合理的に設計されていることです。面積が限られているため、工夫が必要になりますが、その分バリアフリーにしやすいです。また、コンパクトな設計で、リビングダイニングを中心に各部屋が配置されるため、家族が集まりやすくなります。さらに、2階建てに比べて重心が低いため、構造的にも安定しやすく、丈夫に作りやすいです。

それから、2階建ての場合は屋根裏や小屋裏が高い位置にあるイメージですが、平屋の場合は、はしごをかけるだけで手が届くイメージです。これも平屋のメリットと言われています。そして、なんといっても1階なのでそのまま庭に出られるのも嬉しいポイントです。外との連携が気軽で、外に出やすいのもメリットの一つです。

反対にデメリットとしては、どうしても広い土地が必要になります。それから、坪単価で見ても、屋根や基礎の面積が2階建てに比べて平屋は倍必要なので、コストが割高になるのがデメリットです。過去にもこのテーマで話したことがありますが、平屋の難しさは日当たりと風通しです。

▼都市部で「平屋暮らし」をかなえる方法
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また、1階なので全ての窓から人の視線を受けやすいという点があります。さらに、泥棒が全ての空間にアクセスしやすいため、防犯面でも工夫が必要です。加えて、気候変動による大水のリスクもあります。水害が発生した場合、逃げる場所がないという問題があります。もし1階が水浸しになれば、リスクが大きいと言われています。逆に言うと、8割以上の人が2階建て以上の建物を選ぶ理由として、狭い土地でも床面積を確保でき、プライバシーが保ちやすい点があります。水害があったとしても、最悪の場合は2階に逃げることができます。また、2階建て以上の建物は、平屋よりも床面積あたりのコストを抑えられるため、売りやすいという利点もあります。平屋は人気が出てきていますが、こうした問題も抱えています。このような点を考慮しながら、「理想は平屋がいい」と思うなら、実現するためにいくつかのポイントを押さえておくことが重要です。

まず、平屋を利用する家族構成はしっかり考える必要があります。1つのポイントは世帯数です。家族は必ず年を重ねていきますが、そのときに子どもがいつまでも子どものままではありません。やがて大人同士の関係になり、場合によっては2世帯になることも考えられます。2階建てであれば1階と2階で世帯を分けることができますが、平屋ではそのような分け方ができないため、工夫が必要です。また、部屋数についてもよく考える必要があります。特に、子どもの数や、子どもに対して親がどのようなスタンスで接するかが非常に重要なポイントになります。

私はいつも言っていますが、娘が2人います。嫌われたわけではありませんが、1人は結婚し、1人は社会人になって家を出て、それぞれの生活をしています。娘が可愛くて仕方ない父親なので寂しいですが、一方で成長を考えると嬉しくもあり、頼もしく感じます。部屋数を考えるとき、部屋の面積をどのように独立させるかも重要なポイントです。最近では、結婚しないという選択をする人も増えています。それは悪いことではないので、その子が成長していく過程で親と共同生活を続ける場合、個室の配置をどのようにするか、将来を見据えて考える必要があります。

もう1つのポイントはワークスタイルです。最近ではリモートワークが非常に一般的になっています。リモートワークができない会社の方が少ないという印象すらあります。例えば、静かな個室が必要な場合でも、生活の音を完全に遮断して仕事をしなければならないなら、2階建てのように層で分けた方がやりやすいこともあります。

生活動線で特に気になるのは、洗濯のスタイルです。最近では乾燥機の使用が当たり前になり、外干しをしない人も多いです。また、トイレの数も重要です。ワンフロアだからといってトイレ1つで良いわけではありません。当社でも、平屋にトイレを2つ設置した家を何度か作ったことがあります。土地の条件も、建ぺい率や日当たり、通路などデメリットになりやすい部分を考慮する必要があります。

おそらく大手のハウスメーカーが建てたものでしょうが、非常に壮大な平屋を建てた家を見て、「きっと中は真っ暗だろうな」と感じました。広い面積が欲しかったのでしょうが、敷地がぎゅうぎゅうでした。風通しはどうなのかと心配になりましたし、防犯面でも、人が侵入しても見えにくいので、そういった点も気になりました。

さらに、平屋を望んでいる方が老後に向けた生活を考えているのか、あるいは子育てという人生の大事業が控えているのか、そのタイミングも重要です。夫婦2人の生活なのか、それとも一人暮らしなのか。いずれにせよ、夫婦2人の生活もいずれは1人になる時が来ます。私は勝手に妻より早く死ぬと思っていますが、彼女が1人になっても寂しくなく、辛くなく暮らせるような住まいを作ってあげたいと強く思っています。

また、エリアとして郊外なのか田舎暮らしなのか、町屋暮らし・市街地暮らしなのかも、平屋を考える上で大切です。郊外だと周りに何もないので、光がよく入りますよね。でも、郊外に適した平屋でも、暗かったり、もっと光を取り入れた方がいいのではないかと思うこともあります。

最近では、かつて否定的だった天窓も非常に性能が高くなっているのでおすすめです。この天窓を活用することで、町屋の平屋が素敵になるという事例もたくさん先輩方から見せていただきました。これも考えるべきポイントだと思います。

そうなってくると、土地選びにも想いを馳せる必要が出てきます。土地の広さも重要です。土地から購入される方にとっては大きなコストになります。広さが小さい方が購入しやすいですよね。建ぺい率が50%・60%、それ以上かでも、全然違います。広い土地でも半分しか建てられない場所と、狭いけれど60%以上建てられる場所では意味が全く異なります。

交通の便や人通りも重要です。平屋は1階にすべてが集まるので、高低差がない場所では影響を受けやすいです。特にハザードマップを確認することが大切です。水害が起きた時に逃げ場がないのは本当に大きなリスクです。私が若い頃、ハザードマップを気にして家を建てた人がどれだけいたかを考えると、当時はほとんど気にしていなかったと思います。私は今年62歳ですが、この62年間で、地元姫路でひどい氾濫があったのは、もともと低い場所以外ではほとんどありませんでした。しかし、最近では安全だと思っていた場所でも氾濫が発生しているので、ハザードマップの確認は平屋に限らず非常に重要だと思います。

平屋を選ぶ際に1つの大きなネックになるのがコストです。建物のコストを抑えるために性能を削ることを選ぶ人がいますが、それは良くないと思います。自分たちが住むだけでなく、その後も誰かが住み継いでくれる方が、真の意味で効率的です。性能は妥協してはいけないと思います。その延長で、平屋の大切なことは未来志向だと感じます。未来に向けて少し現実を直視しなければならないこともあるかもしれません。私は、一人が建てて一生で消費して終わりではなく、住み継がれることも考えた方が良いと考えます。将来的に売却や譲渡されることも前提にした方がいいと思います。平屋を建てる上で一番重要なのは汎用性だと思います。汎用性というのは、多くの人に共感され、「手堅い作りだ」と思ってもらえることが必要だと思っています。

以前も尊敬する堀部先生のお話を紹介させていただきましたが、日本の住宅が住み継がれない理由は大きく2つあるとおっしゃっています。1つは「家が広すぎる」、2つ目は「低性能な家」です。たとえば、地震に対しての強度が保証されていなかったり、冬は非常に寒く、夏は耐えがたい暑さだったりする場合、そうした家は「資産」ではなく「負債」だということに非常に共感しました。性能を削ってコストを抑えた平屋作りは、コストがネックになるため、十分注意していただきたいと思います。ぜひ参考にしてください。

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