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塗り壁にすると梅雨のジメジメはなくなるのか?

今日のテーマは湿気と塗り壁です。

あるお客様から質問をいただきました。他の住宅会社さんとのやり取りで「梅雨の湿気のジメジメは、塗り壁にすれば大丈夫ですよ。逆に言うと、塗り壁にしないと湿気は…」という話が出てきたそうです。でも塗り壁ってお金がかかりますよね。なので、そのお客様は「塗り壁にしないとカラッとしたお部屋はできないのかな」と思われたそうです。そのことについて僕が思ったことをお伝えしたいと思います

このテーマは、壁の構造が把握できているとわかりやすいと思います。復習になる方もいらっしゃるはずですが、おさらいしておきますね。

僕の板書を見てください。壁の断面を描きました。
塗り壁というのは部屋内の表面に塗られています。最近の塗り壁だと、多くのものが石膏ボードの上に塗られています。石膏ボードの下はどうなっているかと言うと、一般的には気密シートが貼られていることが多いです。今は高気密のお家が多いですからね。

機密シートの下には断熱材があって、この断熱材を守るように面材があります。耐震性も含めて、構造上、丈夫になるような板が打ち付けてあると思ってください。その下に通気層があって、タイベックシート(防水シート)があり、外壁があるという構造が多いです。

この構造はいろいろ理由があって成り立っているものです。この話を頭に置きながら、湿気のジメジメの正体というのを分解していきたいと思います。

ジメジメには大きく2つの要素があります。
1つ目は外気です。部屋には当然、外気も入りますよね。空気中に含まれる水蒸気の量がジメジメに関係しています。

2つ目がそのお家に住んでいる人間が出す水蒸気です。これが侮れなくて、人間の体からは必ず水分が出ています。さらに部屋内で料理をすれば湯気が出ますし、部屋干しすれば水蒸気がどんどん出てきます。この1つ目と2つ目の両方が湿気の正体になります。

冒頭で、塗り壁で湿気を吸収することによって家がカラッとする、というような話がありましたよね。

塗り壁には珪藻土など、いろいろな種類があります。僕の友人で小暮さんという、群馬県で工務店をしている社長さんは、これらのこともすごく研究をしています。北海道にあるとても古い層から出した珪藻土を使ったりもしていました。この珪藻土はよく湿気を吸ってくれるという物だそうです。でも、そうやっていろいろ研究している小暮さんが「限界は意外とすぐに来る」ということを言っていました。

どういうことかと言うと、空気中の水蒸気の量というのは、みなさんが思っているよりもすごいんですね。例えば5月はカラッとして過ごしやすい時期というイメージがあると思います。一方で5月の平均気温を調べると18.9℃ぐらいですが、湿度は意外と高くて60〜70%あると言われています。統計値だと約72%で、1㎥の空気の中に9.9gぐらいの水蒸気があるということになります。

水蒸気の量は大体9g台ぐらいまだと快適だと言われています。ところが、6月で梅雨のシーズンに入ると平均気温は25.8℃ に上がります。そうすると相対湿度は78%ぐらいになります。5月に比べて6%しか増えてないと思われたかもしれませんが、温度が高くなれば飽和水蒸気量と言って、1㎥あたりの空気が水蒸気を抱える力はグッと増えます。6月だと1㎥の空気には約13gの水蒸気があるということです。30何%も水分量が増えるんです。

さらに8月になると平均気温は27.4℃で、相対湿度は77%なので水分量は17.4gにもなります。ジメジメと聞くと梅雨のイメージが強いですが、7月・8月もジメジメしている日は多いですよね。6月で30%までアップして、8月には60〜70%になります。すごい量です。

あわせて、家族が出す水蒸気の統計値は、4人の場合、約10リットルと言われています。 2リットルのペットボトルが5本も並ぶんです。部屋内にそれだけの水分があるのを想像してみてください。

ハケに付けて塗った珪藻土に10リットルもの水分が全部染み込むかなというと、決して全部は染み込まないと思います。多分ベチャベチャになります。どこかで飽和しますよね。ということになると、塗り壁だけではそこまでたくさんの水蒸気を抱えられないという現実があります。なので、冒頭に出てきた「塗り壁だと部屋がカラッとします」と言うのは、ちょっとオーバートークじゃないかな?と僕は思いますね。

塗り壁が湿気をまったく吸わない、という話ではありません。僕の大親友の小暮さんも珪藻土に惚れています。すごくいいものですが、それだけ珪藻土をいいものだと考えている彼でも、「一定数は吸収してくれるけど、梅雨とか、部屋で料理をしていてたくさん水蒸気が発生している状況ではカバーしきれない」と言っています。ですから、「塗り壁にすればジメジメはすべて解決する」という風に考えてしまうのは誤解だと思います。

塗り壁を取り入れている住宅会社さんで、時々「うちは塗り壁ですし、石膏ボードも貼っていますし、断熱材はセルロースファイバーを使っています。だから調湿力がすごくある壁になっていますよ。大丈夫です」と謳っているのを見かけます。

一方で、セルロースファイバーを使うときには注意が必要です。セルロースファイバーだけで家の気密性は担保できないので、石膏ボードとセルロースファイバーの間には気密シートが必要です。

気密シートはポリエチレンシートなので水蒸気とかを全然通しません。セルロースファイバーは断熱性が高くて音抜けが少ない優秀なものですが、湿気に関しては注意が必要です。気密を外で取るということをきちんとしないと湿気を吸ってくれません。

そうすると気密は面材というところで取りますが、面材というのは一般的に構造用合板という板と接着剤が層になっているものになります。水蒸気を通しにくいけど強度がすごくあるというものもあれば、透湿型のダイライトやタイガーEXボード、あんしんというものもあります。

ダイライトやタイガーEXボード、あんしんには透湿性があります。透湿性があるということは何かと言うと、湿気が融通するということです。

部屋内に水蒸気があって、壁にこもったとき、その水蒸気は速やかに外に出されないと冬型結露が発生しやすくなります。なので、面材は透湿型を選ばれることが多いです。そうすると今度、夏は外の湿気が入って来ないことはないです。

面材で合板を使われていたら、湿気は多少入らないかもしれませんが、普通だったら入ってくるということを考えたとき、外からどんどん湿気が入ってくるとしますよね。気密が取れている場合に関しては、外の湿気に絶えずさらされることになりますから、仮にセルローズファイバーに調湿性があっても、どこかで飽和すると思います。

今度は夏型結露というのがあります。気密シートにはポリエチレンシートを使われることが多いですが、この夏型結露が心配ということで、可変透湿型という湿気の融通が利くタイプのシートを貼る技術者もいると思います。そうすると、外から入ってきた湿気と夏型結露で水蒸気を冷やそうとしているものが、部屋内に出ていこうとしたら、壁にとってはどんどん過酷な状況になっていくということが予想されます。

今日の最終結論ですが、塗り壁の調湿効果はゼロではないです。ですが、過信は厳禁だと思います。一番効果的な除湿の方法はエアコンや除湿機を使うことです。

「塗った感じがステキ」とか「風合いがやっぱりいいよね」という理由で塗り壁にすることはOKですが、塗り壁にしたからといって、部屋のジメジメがなくなるということではありません。

もし部屋の湿気を気にされるなら、エアコンや除湿器をしっかり効かせることのほうが大事です。これができていれば、壁はビニールクロスでもいいと思います。その方が、部屋がカラッとして過ごしやすいはずです。

今回の内容を頭に置いていただいて、塗り壁を評価していただくといいと思います。ぜひ参考にしてみてください。

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