二世帯住宅はどう建てるべきか?について考える。
今回は二世帯住宅の建て方・作り方についてお話をします。
二世帯住宅には大きく3つのパターンがあります。まずは完全分離型というものです。よくあるのが1階が親世帯で2階が子世帯という感じです。次に多いのが一部共有型というものです。例えば、玄関は二世帯で1つでいい。玄関に入って、階段を上がったら子世帯で、そのまま進めば親世帯になるという感じです。もう1つは完全同居型と言って、見た目はただの大きな家です。親世帯が下で子世帯が上みたいな感じですけど、LDK・お風呂・玄関も一緒で単純に親世帯だけの部屋が明確にある感じです。
これらの中でどれが一番ふさわしいのかなと考えた時に、よくあるのは、同居する親がどちらの親なのかという問題です。昔は長男の家が親と同居するのが当たり前で、長男の両親と長男の夫婦が一緒に暮らすことが多かったけど、それだと嫁姑問題みたいなこともあったりします。最近多いのは、いわゆる漫画のサザエさんの家みたいに、娘さん夫婦が親と同居するという形です。あの家にはカツオとワカメちゃんがいるから、要するに、奥さんの兄弟も同居しています。
そうすると、よく言われてるのが、旦那さんの親と同居する時はキッチンは別々の方がいいのではないかということです。娘さんの親と同居する時は、娘さんと親御さんが比較的仲良いケースが多いじゃないですか。だから一緒に使ったらいいのではないかということで、一部共有型になりやすいです。なのでこれは当たり前なんですけど、どちらの親と同居するのかということを軸に、もっと(考えるべき要素が)あるとしたら、もう1つの実家が距離的にどうかということです。例えば関西の二世帯住宅なんだけど、奥さんの実家は九州にあるとか、遠距離の場合も、いろんなことが作用します。
僕は姫路に住んでいますが、(夫婦)どちらの実家も姫路で(実家から)車で10分ぐらいの近いところという場合の二世帯住宅のあり方も微妙に変わってきますよね。例えば、端的に言うと、九州に奥さんの実家があるとしたら、僕も娘を持ってる親だから、毎年は行けないかもしれないけど、たまには娘の家に顔を見に行きたいと思うことがあるので、完全分離型の方が来てもらいやすいような(メリットが)あるじゃないですか。でも(実家が)近所で、しょっちゅう出入りがあると、そこまでしなくてもいいかなとか。
それから、娘さんとお母さんが仲良い場合、キッチンは1つでいいと言ったけど、仲の悪い母と娘だって、たくさんいらっしゃいますよね。お父さんとは馬が合うんだけど、お母さんは苦手という娘さんもゼロじゃない。それからさっきも言いましたけど、カツオやワカメちゃんみたいな兄弟が絡んでくると、もし年頃の長子の方が一緒になる場合に、年頃の弟や妹がいたら、一部共有型で同じお風呂だと、その兄弟が嫌がったりする事だって十分有り得ますよね。
それから最近はご結婚されないという選択をされる方もとても多いので、親のおじさん・おばさんが同居している、おじいちゃんの妹さん(が同居している)みたいなことも、なくはないので、そんなことも関わってくると思います。
なので、結論から言うと、3つの選択肢があるんですけど、1つは家族としてのユニットをどういう風に考えて、どういうテリトリーの取り方をするかということです。それから非常に大事なことで、お金のけじめの付け方はどうするかという問題があります。例えば、子世帯は一晩中電気をつけてガンガン空調をかけてめちゃくちゃ電気を使うとしたら、親があんまり良い顔しないとか、お母さんがすごい洗濯好きでめちゃくちゃ水道代を使うとしたら、メーターとかを分けた方がいいとか。それから、例えば一部共有型の場合、お風呂の使い方のルールのような最初の約束問題があります。それって重要なことじゃないかなと、僕はすごく思うんです。
実は僕も完全同居型の二世帯住宅に住んでいます。もちろん母の部屋はちゃんとあります。それでありがたいことに、うちの母と妻は円満にやってくれていまして、お互いに遠慮するところはちゃんとしてくれてます。これは古い考えかもしれませんけど、台所をちゃんと管理して預かるのは、その家のお嫁さんがするべきだから、私がしゃしゃり出るようなことはないようにしたい。あなたの奥さんの考えで(台所を)運営してくれたらいい。私は台所を使うことはないから、基本的には、あなたがちゃんとしてくれたらいい、それで私は全然いいよとお袋は言ってくれて、それ以来30年ぐらい一緒に暮らしてるわけです。でも最近、母を見てて思うのは、お袋はあんなことを言ったけど、ミニキッチンみたいな小さくていいからお袋の部屋に隣接したお袋のためだけのキッチンを作っておいた方がよかったかな、そんな思いがあります。
母は昔、僕は男兄弟3人だったんですけど、一生懸命ご飯を作ってくれて、父の分も作り、父の部下みたいな人たちもたくさん家に泊まってましたから、その人たちにもご飯を作ったりして、お袋は自虐的に「私は飯炊き女だから」と言って笑っていました。そうしてやってきた人なので、料理を作って周りの人たちに振る舞ったりするのは好きなんでしょうね。なので季節のおかずをよく作ってくれます。子供の頃は大して興味はなかったですけど、この歳になってくると、たまにお袋が作ったおかずが恋しくなります。
お袋も待ってましたと(おかずを)作ってくれたりするんですが、その時にお袋は、うちの女房の牙城であるキッチンを自由に使うことに対してちょっと遠慮があるんですよね。全然うちの女房はそんなの気にしないし、「お母さん作って」と言ってくれるんですけど、下処理みたいなことや、山椒の実を綺麗にすることとかは洗面所でやってみたりしてることがあって、そんなことしなくてもいいのにと思うんですけど、母のためにこんなことをしたらよかったと今になって思ったりします。それって最初の約束じゃないですか。最初にそういう風なテリトリー・ルールをこしらえて納得してGOして、ありがたいことに30年仲良くやってきてくれたんですけど、そういうのがあってもよかったんじゃないかなと思っています。
なので、二世帯住宅を作っていく時に、大体こういうことでいいよねという形がある程度決まった時こそ、家づくりのリーダーになる方、僕は、子世帯の旦那さんに頑張ってもらって、本当のところはどうかなということを考えてあげてほしいです。実際に、うちのお袋なんかは、僕が一緒に暮らすと言った時は、ホンマにありがとうという感じで始まったと思うんですけど、でも僕たち夫婦との距離が縮まることに対する恐れも持ってたと思うんですよね。
ちょっと嫌な話するんですけど、二世帯住宅を建てられた後に、子世帯が離婚されたり、あるいはそこまでいかなくても、子世帯だけが出て行かれたり、という話も一定数聞きます。そこには僕が言うような表出していないけれど本当は抱えていたり、解決しないといけなかったものもあるんじゃないかなと思うんです。二世帯住宅を建てずに別々に暮らしていたら、そんなことはなかったのに、二世帯住宅を建てたが故に何かの摩擦が発生して出て行かれたら、後に何が残るかというと、気まずさでしょうし、やり切れなさでしょうし、ひょっとすると怒り・恨みみたいなものも残るかもしれないです。それはあまりにも悲しいじゃないですか。
なので、二世帯住宅がどうあるべきかというのは、3つの型のようなフォーマット的なことだけではなく、例えば30年・40年、これから一緒に暮らしていくという時に全員)幸せになるためには、もう一回ちゃんと旦那さんが聞く。奥さんが大丈夫・賛成する・頑張ると言った場合、奥さんがちょっと気を抜いてる時にホンマに?って聞いてあげてほしいです。大丈夫?無理せんでええでとひょっとしたら奥さんが旦那さんに聞いてあげなアカン時があるかもしれないし、あるいは自分の親に聞いてあげなアカンかもしれないし、二世帯住宅の計画が始まったら、親は 言うことは言うという人も多いと思うんですけど、息子夫婦を尊重してやりたいと思っている女親の方は、何か思っているものを封じられてるケースが僕はあるんじゃないかなと、特にうちの母を見て、何もないけどそうなのかなと思ったりします。
今日の話は重たい話だったかもしれませんけど、二世帯住宅を考える時に、どう建てるかは30年以上のスパンで、あるべき姿・幸せとは何かなというのを考えていただいて、ぜひ若い旦那さんはリーダーシップを発揮してみんなを引っ張っていってあげてもらえたらなと思います。もちろん奥さんが引っ張ってもいいからね。