物干しの位置を考える
今回は洗濯物を干す問題です。
よく乾かしたいという問題と、洗濯物は目立つ所に置きたくないみたいな気持ちがありますよね。そのことに関して、物干しの位置をどういう風に考えたらいいのか、その考え方について解説をしていきます。
そもそも洗濯をしたらしっかりと乾かしたいですよね。うちの母は乾かすことに関しては結構こだわっています。うちは私以外は女性陣ばかりなので、女性の下着というのは視線に関しては気を使うところがあります。気を使うだけだならいいですが、建物のデザインを考えて建てた家の一番目立つところに家族の下着やタオル、シーツなど生活感が溢れる物がヒラヒラしていると、見た目にどうかな?というところもあると思います。
まずしっかり乾かすこと関して、何点か確認していきます。
そもそも洗濯物が乾くってどういうことでしょう?洗濯物には水分が含まれています。これが蒸発することが乾くメカニズムです。要は水分はいろんな条件で水蒸気になって洗濯物周辺に出てくるわけです。そうすると洗濯物が水蒸気の塊に擬似的に包まれる状況になるので、その水分を含む空気がどこかに移動してくれるほどよく乾く、つまり風通しによって乾きが促進されるというのが乾くメカニズムの一番重要な要素になります。
一方で天日に干すことにこだわりを持つ人も多いです。うちの母なんかその典型です。なんで天日に干すことにこだわるかと言うと、よく乾くから・清潔だから、という感じでしょうか。
よく乾くのはわかりますよね。太陽の光に当てられると、水蒸気の蒸発が促進されるので、それは乾きますよね。殺菌で大体言われる人の論法は、太陽光には紫外線が含まれるから、その紫外線によっていろんな菌が死ぬという話です。
ただダニや菌というのは、なかなかしぶといです。代表的なもので言うと、洗濯物が生乾きの時に発生する臭いがあります。あれはモラクセラ菌が悪さをしているらしいです。モラクセラ菌が臭いのではなくて、モラクセラ菌が出す排泄物が原因のようです。
菌は洗濯物に残っている人間の体の脂とか、洗剤も油脂の一種なので、そういうものを養分にして繁殖するようです。天日に干すとか風通しという以前に、充分にすすぎがされていないと、この匂いを防ぐことは難しいです。
そして、この菌は紫外線にすごく強いようです。紫外線ごときでは死にません。それよりも温度が重要だそうです。60°Cぐらいの温度が10〜20分以上続いてその菌は死ぬらしいです。ダニも、布団や洗濯物を干したら、日を避けるように裏側に逃げるそうです。なのでダニとか菌を殺したいなら、真夏の車の中に入れるほうが効果があるぐらいです。夏の車の中は暑いですからね。
それからどうしても僕が言いたかったことが、太陽に干したら日なたの匂いがするという話です。僕も子どもの頃は、お母ちゃんがシーツを洗って干してくれたあとの匂いが好きだった1人です。
ただ、この日なたの匂いは一体何?という話です。調べてみると、カネボウ化粧品の研究所の人と、経産省が研究したという論文みたいなものが出てきました。洗濯物に残った体の油脂や洗剤の残りみたいな物の成分が紫外線に当てられると、熱分解して化学反応を起こし、その際に揮発性のあるアルコール系みたいな物に転換されるらしいです。その揮発成分が日なたの匂いらしいです。
なのでそういう意味で言うと、残ってた油脂が分解されるという面では清潔感の促進にはなるし、悪いものではないということは確かに言えると思います。乾くか・乾かないかということになると、いかに風通しが良くて、洗濯物の周りの湿気がちょっとでも減る状況が一番望ましいということになります。
続いて美観問題です。よく目立つ所が南だった時に、そこにどうしても洗濯物を干したい時はどうするのか?解決策は隠すしかありません。見えるようにして、カッコ良くしてというのは難しいです。
最近建っているマンションはほとんどがそうですが、腰壁のベランダに洗濯物が顔を出して見えるというのは、入居者の人が意図して出さない限りはほぼ見えません。あれは手すりの内側に洗濯物を干すようになっているだけです。
なので住宅でも目隠しをした後ろ側に洗濯物を干せばいいということになります。でもそうすると乾かないと言う人がいます。確かに腰壁上の風通しがない手すりは厳しいです。なので格子状の物で格子面がある程度あって、ちょっと隙間があるようなものを付ける必要があります。
あとは建物の壁面と腰壁の格子の部分との間があまり狭いと風通しが悪くなります。一般的には910mmというモジュールの中に有効寸法で77cmぐらいの所に干すので、干す所のスペースも一定の広さが必要になります。
その上で日当たりを気にしてください。冬場はもちろん当てたいですが、冬は空気が乾燥しているので洗濯物はガンガン乾きます。夏は太陽高度が高いので、十分に日は当たります。
洗濯物を干す高さが1階の床の高さとあまり変わらなければ、道路側の人の視線が入る所から2mぐらいの塀を作れば良いです。中は約1m40〜50cm弱ぐらいになるので、そこへ低めに置けばいいと思います。よく売っている折り畳みの洗濯金物みたいな物の方が、物干しより使い勝手が良いです。
南がダメなら東という手もあります。洗濯物は大体が朝に干すと思います。夜に干す人は夜に干しておいて、朝方から乾かすということだったら朝日を受ける東のバルコニーも有効だと思います。それが道路に向いてない敷地なら、格子や何だとややこしいことをしなくてもある程度の目隠しはできます。
それがダメなら西バルコニー。西バルコニーは西日しか当たらないので、一気に乾かさないと臭いが出るという問題が出てきます。なので大体は南か東か西、ダメなら北という感じです。
ちなみに狭い空間、近隣の建物が建て込んでる時は意外と風が通ります。ビル風って言葉がありますが、いわゆるベンチュリ効果ですね。科学的なメカニズムがあるので、意外に北側の狭い所に干したら、敷地条件によっては風がものすごく通って意外と快適という話も聞きます。
これらは家を建てる敷地が決まれば、周りをリサーチしておくことが重要です。すぐお隣の家がもしあれば好都合かもしれません。その家には擬似的に隙間が成立していますからね。
こういうところを基本知識に置いていただいて、しっかり乾かす、かつ見た目や目隠しもちゃんとやるというのを決めていただいたら家づくりはうまくいくと思います。ぜひ参考にしてください。