提案された間取り図を見る時のチェックポイント
今日のテーマは提案された間取り図を見る時のチェックポイントです。
設計する側からすると、ドキッとするような内容です。でも、僕なりに「こういうところを気にするといいかな」と思う点を解説をしていきたいと思います。
僕のスケッチを見てください。18ポイントも出てしまいました。重複したりする箇所もありますが解説をしていきます。
今回挙げた18個は、部下から「社長、この間取りどう思います?」と言われてチェックするとき、僕が見る順番でもあります。
まず1つ目は方位です。敷地とか建物がものすごく大きいとか、特別な事情がない限りは、下を南として描くのがお約束です。
「方位は気にせずに間取りを見てください」という風に言われることもありますが、実は方位次第で間取りの評価は変わります。
たとえば四角形の敷地があったとします。でも、まっすぐ南という敷地は、ほぼないです。たいていは絶対10°・20°・30°、東西どちらかに振れています。振れた度数によっては、西日が強いとか、そういういった特徴があります。
なので方位は絶対に押さえてないと評価ができないです。まずは図面の中に方位がどういう風に入ってるかを見てください。
2つ目は駐車場の位置です。
敷地に対して、家をどう配置するかというのは多くの人がよく考えますが、駐車場の最適な切り方ができていないということが結構あります。
車を2〜3台停めることを優先した結果「なんでこんなところに家を配置したの?」という場合もあるし、逆に車を上手に停められない図面になっていることがあります。
僕は駐車場の位置を決めて、次に自転車の置き場所、次に庭木のシンボルツリーの位置などを考えて、最後に家の配置を考えます。
駐車場が決まらないと、家の配置も決まらないとういうことがあります。なので図面をチェックするときも、「駐車場はどうかな?」というところから見てみると良いです。
3つ目は建物の大きさと屋根の形です。これは最も重要です。
建物の大きさは、法律と予算の両方に関わってきます。
「いい間取りにしよう!」と思って、お客さんの要望をいっぱい聞いていくと家は大きくなります。僕も若い時にやりがちでした。でも、その方には予算があるはずです。会社ごとに坪単価もありますよね。予算が3,000万円だとしたら建物は何坪になる、という風に「この大きさで収めいといけない」となるはずです。
なので間取り見てくださいと言われたら「このお客さんは予算どれくらいなの?」「なんでこの大きさになったの?」と確認します。
作ってもらった間取りを見たとき「大きくなりすぎて金額が現実的じゃない」と「なんでこんなに小さく絞ったんですか?」という2つの反応があります。
この場合は、大きすぎる間取りを描いた設計士より「お客様の予算を頭に置いて、間取りを作成したんです。なので、この広さになりました」と説明する設計士の方がレベルが高いと個人的に思います。
屋根形状というのは、斜線制限に関わってきます。家づくりをしていると、道路斜線、北側斜線、壁面後退線というものが出てきます。こういったことに屋根形状はすごく影響が出るんですね。
そういったのをスルーして「かっこいいから」という理由で間取りを描くことを進める場合があります。若い営業系の会社さんに多いです。でも違法になるので建てられないです。
せっかく描いたものを、絵に描いた餅にしないために、建物の大きさと屋根形状は超重要なポイントになります。
4つ目がリビングの窓と道路、隣地との関係です。
みんな、南の道路側に家を欲しがります。南に広いリビングが取れるし、大きい窓を付けて明るい・暖かい家にできるからいい、となりますよね。
でも、こういった窓は道路から見ると、家の中を丸見えにしてしまうことが多いです。リビングの日射取得を確保するための窓が、プライバシーに影響してしまうんです。
道路ではなく隣地という時でも、こういったケースは発生します。なので視線とか高さ関係も含めて、どういう見え方になってるのかも最初にチェックします。
5つ目が外の良い景色とのつながり。
南には窓を取った方がいいです。じゃあ北・東・西とかは小さければいいのかというと、そうでもないときがあります。北側に素晴らしい景色があるとか、春に美しい桜の木が見える、というような敷地であれば北にも窓を取った方がいいですよね。こういった場合は日射取得の最適性とかパッシブ設計のセオリーを越えてもいいと考えています。
6つ目は玄関と階段の位置です。玄関と階段は近い方がいいです。そういう配置だと、いい間取りになってることが多いです。ただ離れていても、離れていることへの対策・アプローチがきちんとされていれば問題ないです。
その7つ目が動線。
最近は回遊型の動線がすごく多いです。くるっと回れるのはいいですよね。でもぐるっと大きいのは行き来が大変です。一方で、くるっと回れるということは、そのことを中心に放射線状にいろんなことができます。小さい回遊でクローバー型になってるか、というところも、とても大事かなと思います。
8つ目がトイレの位置です。
トイレの位置を玄関の近くにしたいという人もいらっしゃいます。ただ、玄関ドアを開けたらトイレのドアが丸見えみたいなのは、あまり良くないですよね。
あとはトイレがリビングに面してるケースも時々見かけます。
これもトイレの切り方によっては、みんながダイニング・リビングでゆっくり過ごしている近くで、ドア1枚だけ隔てた空間で、催した時に大きいのできる?となってしまうことがあります。なのでトイレの位置もチェックします。
9つ目が洗濯機と物干しの位置です。洗濯機の位置と物干しの位置が長かったり、階層が上だったり下だったりすると、干すのに手間がかかったり、回収するのに手間がかかります。
これは僕すごくこだわりがあって、洗濯動線が長くなるのに対して、お客さんから「それでいい」って言われても「本当にいいんですか?」としつこく聞きます。
10番目が脱衣場と収納。脱衣場がただの脱衣場であるのは絶対にNGです。必ず収納をつけてください。脱衣場周辺というのは、絶対に散らかります。洗面ユニットと洗濯機を置いていたら余計に散らかります。
11番目がベッドと空き寸法。
例えば、最近は子ども部屋を小さくする傾向があります。「4畳半でもいいよね」って感じです。これは僕もいいと思いますが、その際、ベッドの置き方が気になります。
最近の子どもは身長が高いので、ベッドが1m80cmで収まるということは、ほぼなくなってきました。大体2m以上になってきます。そうすると4畳半やから大体2,700mmで、さらに内々になってくるので、実際に置く空間はより狭くなり、短辺方向の通路が狭くなります。通れないことはないけど「本当に大丈夫?」と思うことが時々あります。
「4畳半でいいよね」と終わるのではなく、ベッドをどういう風に置くというところまで考えているかもチェックします。
12番目が最近マイブームでしつこく言っている中間領域です。
家には必ず、家の中と外がありますよね。豊かな家には、外でも中でもない中間領域というのがあります。中間領域については別の動画でも詳しく解説してるので、ぜひそちらを見てください。この中間領域が取れていると、評価が二重丸の間取りが花丸になります。
また中間領域にまつわる話で、“たまり”という言葉があります。
13番目が“たまり”になります。人が集まる場所ですね。
これは広い部屋を取ったらOKという話ではありません。広いリビングに人が1人2人、ゆっくり佇めるみたいな場所もあると、より良くなります。さらに、そのたまり空間は家族がどこに座るのか分かるようになっていると、もっといいです。花丸を超えて桜丸になります。
14番目が抜けです。5番目の窓の話にも繋がっています。
窓を切るとき日射取得の最優先だけじゃなくて、外の景色を取り込むとか、北側であっても高い所に窓があると室内空間や廊下・ホールが非常に明るくなります。
南から差し込む光の明るさではなく、もっとソフトな光の明るさですね。そういう抜けがあるかどうかをチェックします。
15番目が地獄。「地獄って何?」と思われたかもしれません。
例えば2階の廊下やホールでまったく窓がない空間ありますよね。逃げようがない空間みたいなのを、僕らは地獄と言ったりしています。
色々調整しても、スペースの問題などで、こういった空間ができてしまうときもあります。でもプロなら、なるべく地獄ができないようにすることも考えてほしいなと思います。
16番目が天井高。間取りは平面で見るので、天井高は、どうしても見落としがちになります。天井高は建築のコストにも繋がってくる要素です。
広い空間がほしい人とかですと「天井高は高いのがいい」というリクエストをもらうことがあります。でも天井高をむやみに高くしていくと家がペンシルみたいな形になって、ずんぐりして見えます。外観が損なわれる時もあるので、ここも気にします。
勾配天井で一番低いところが2mしかなくても、実際にみると「全然低く感じない」となることが多いです。むしろ気持ちいい空間になったなぁと感じられます。
17番目が今の住まいの不満はちゃんと解消されているかどうかです。
間取りの提案を受けてる時、設計する人からヒアリングをされますよね。「今のお住まいにご不満があるんですか?」と。
これは設計用語でいう満足条件を聞いています。これを聞いて次に理想の家の要望を聞くみたいな流れになっています。
そこの確認も、間取りを見るにあたってチェックしていただけたらと思います。
設計の人からしたらドキドキする内容だと思います。でも、みなさんには、きちんと確認をしておいてもらえたらと思います。「今の住まいの不満聞いてくれたけど、この間取りでは解消されているのかな?」という感じです。
最後の18番目が、いろいろ要望を出して設計の方も考えてくれたけど、それでも間取りに反映されなかったことのチェックです。
繰り返しになりますが、家づくりというのは常にトレードオフです。
予算が決まっていれば建物の大きさを絞らなくてはいけなくなったり、あることを優先する代わりに、犠牲にしなければいけないことというのが出てきます。
設計士の人から「頑張って考えましたが、お客さんが言われた夢とか理想みたいなところから言うと、このことは申し訳ないです。割愛しました」ということも出てきてしまいます。ですので、これも確認をしてください。
おそらく、上手な設計士さんであれば、「〇〇さん。今、理想を10個言われましたが、そのうちで絶対に譲られへん条件って何ですか?2つだけ教えてください」みたいな聞き方をすると思います。
その質問がちゃんとされていれば、お客さん側の理想を絵に描いた餅にしないために、設計士さんはいろいろ考えるはずです。仮にできなかった場合は、省いたことの説明もするはずです。
そういう説明された時に初めて「それって俺が譲れへんかった部分なんや」って気が付くこともありますよね。「ヒアリングの時はそんな風に言ったけど、今思うと、そうでもなかったかも」という確認にもなります。
間取りというのは、ファーストプランで決まることは、ほぼないと思います。修正が入って、2回目、3回目のプランを見た時に、「じゃあ、今の内容いれておきますね」みたいなやり取りがあって、間取りというのはグッといいものになっていきます。