窓の取り方の極意(外観編)
今日は窓の取り方の考え方をご紹介します。
家づくりを考える時に、せっかくならカッコいい外観にしていきたいですよね。その時に、外観にすごく影響を与える建築の要素として大きいものは、やはり窓です。窓の取り方で、建物の外観の印象は随分変わります。今日はその極意と言ったら大げさですが、窓の取り方をどんな風に考えるべきかということについて解説していきたいと思います。
まず最初にお断りしておくと、今回お話をするにあたって参考にさせていただいた本があります。いつも動画でお話ししている飯塚豊先生が書かれた「ぜんぶ絵でわかる木造住宅」という本です。学生さんや普通の方にも読んでいただけるような、すごく網羅的に書かれている本です。この本の中から少し抜粋させていただいて、私なりにまとめたことに関して解説していきます。
まず、飯塚先生も書かれていましたが、窓を選ぶ時には2つの選び方があります。1つは既製品と言われているものです。例えばYKKAPさん、LIXILさんなどの窓メーカーさんの、既製品の窓を選ぶ方法です。
もう1つは、別注で作るという方法です。こちらは、ある程度の自由な寸法や形で作れますが、その分非常に割高になります。そういう中で、既製品のサイズを上手く使うということがあると思います。
日本のこれまでの多くの建築では、いわゆる引き違い窓と言われている、一番ポピュラーな窓を使って外観のファサード(正面)の衣装を構成することが多かったと思います。
しかし、最近本当に思うのですが、この引き違い窓で外観をカッコよくするのは骨が折れます。簡単で割とやりやすい方法としては、例えばスクエアな窓・2連窓・3連窓や、縦すべり窓・横すべり窓などを使う方法があります。
これは松尾先生に言語化していただいて「なるほど」と思ったことですが、普通の引き違いの窓は、当たり前ですがど真ん中に縦桟がありますよね。人間は不思議なもので、見た時に中央が目に入ります。だから、窓ではその縦桟がノイズになるという言い方をされていました。人間は、ノイズがなくてクリアなものが美しいと思うんです。だから、ノイズがあるとそれだけで何となく「うーん」と思うようです。
スクエアな窓や、2連・3連の窓というのは、フィックス部分が大きくて真ん中に桟がありません。視覚的に、窓のノイズに見えないんです。このような形でも、建物の外観がカッコよく収まりやすいと思います。
「じゃあ引き違いの窓は使われへん」と言われますがこの引き違い窓でも例えば4枚建てと言って、同じ寸法でもさらに細かく分ける方法があります。たしかにノイズは残りますが、趣が変わる感じがします。もっと言うと、2枚建ても連続して並べると趣が生きてくる感じがします。
京都なんかに行くと、筆で龍や大きな波などの綺麗な絵の描かれた屏風がありますよね。屏風絵というのは大体4枚建てですが、これと同じように2枚建てが2つ連続して4枚建てになると、視野・視界が広がるのかもしれません。このように、ごく簡単なことでもちょっと意識すると、外観を良い方に持っていきやすくなります。
そして、ここからが今日の一番の本題です。飯塚先生は、「窓の取り方を考える時に一番大事なものは”ゾーニング”だ」といつも言われます。ゾーニングってわかりますか?
平面図で間取りを考える時に、この辺がリビング・この辺が水回り・この辺が玄関と、ゾーンを作りますよね。ゾーンを作ってから、間仕切りやドアはこの位置、などと細かく考えていくと思います。これを、立面でもやりなさいということをおっしゃっています。
特に、できれば間取りを考える前に立面のゾーンから決めろともおっしゃっています。これは難しいことです。
どういうことかをご説明していきます。こちらに、よくある外観を描きました。ここにリビングがあって、隣に和室があって、などという感じで考えて、「いい間取りができた!」となって、それを立面図にしたらこうなりました、という外観です。このような考え方が家づくりの全体の9割以上ではないでしょうか。
そして、5%ぐらいの物件が、このようには考えずにゾーンで考えています。外観の立面が、窓のゾーン・壁のゾーンと分かれています。これは間取りから決めたのではなくて、立面から考えて決めた窓です。
立面から考えて決める・ゾーンで考えるということが、窓を綺麗に見せる・外観を美しくする最大のポイントです。
さらにゾーンの分け方をご紹介します。1つ目は、これは飯塚先生の理論ですが、「平屋の各層を積み上げていくようなイメージで窓を考える」という教えです。開口部のゾーン、窓があって、腰壁があって、腰窓がある、という風に、ゾーンに分かれています。このようにした上で、できた水平方向のラインに凹凸を付けてメリハリを出すというのも、テクニックの1つです。
例えばオーバーハングと言われるようなものです。2F以上の部分全体がボコッと前に出ているようなイメージです。このようにしても、水平方向のラインが強調されます。
あるいは、窓はへこんでいるけど腰壁部分に出っ張った部分が少しだけあるようなものでもいいです。ほんの5cm・10cm出るだけで、水平方向にスッとラインが引かれて外観が非常に整った印象を受けます。
材料の色・質・素材を変えてもやりますが、たとえば庇を付けたり、オーバーハングで境目を明確にすることで、窓だけでなく外観全体のゾーニングに関わることとして、綺麗に見せられます。
2つ目の方法は、建物を上・中・下という感じで3分割する方法です。イラストで描いた例では、窓の層・屋根の層・下の部分で3分割していて、窓を対称で配置しています。また、最初にも例を挙げましたが、縦の3つのゾーンに分ける横並び方式という形も非常に有効です。
それ以外のゾーニングでは、例えば家の壁のある一面だけを、そのゾーン全体を窓にしてしまうという方法もあります。これはカッコいいですよね。店舗なんかで見たら「おっ!」と思うものだと思います。
もう1つは、壁の1面を1つのゾーンとして見た時に、窓を1つだけ中央に配置して、上手く重心を取るような方法です。こういうものを、ゾーンに1個の窓で「モノアイ」と言います。こういうものも非常にカッコよく、美しく見えるということでご紹介されています。
あとは、当たり前に見たらわかることですが、一般的に窓は縦に揃う方が綺麗です。これがガチャガチャとズレると、見た目が雑然としています。間取りから家づくりを考えると、「間取りで言ったらここに窓でいいかな」と安易に考えて、実際立面にしたら窓は全然揃わないことがよくあります。
また、ガチャガチャなんですけど面白いのが、窓の形を揃える方法です。私の拙い絵で描いていますが、大中小様々な大きさのスクエアな窓をランダムに配置しても、これはこれで面白くないですか?こんな風に、同じ形の窓、スクエアなものばかりを組み合わせても、縦のラインは揃っていませんが、何かハマる感じがします。
それから、メインの窓・サブの窓というように、メリハリをつけて考えることも窓をカッコよくする方法の1つです。
最後に、私がすごく印象的に思っている窓の写真があるのでご紹介します。「ヤマダの木構造」という本の表紙になっている写真です。
これは四国の徳島の方にある建物で、山田憲明先生という木構造の名人が作られたものです。古いお家の窓を寄せ集めて、ある一面のゾーン全部を窓にした建物です。これは本当に卓越したセンスで、面白いなと思います。これで構造的にも成り立っていると言うから、さらにすごいなと思います。
このように、外観は窓の取り方で支配されます。これを頭に置いて考えていただいたら、きっとあなたの家もカッコよくなると思います。ぜひ参考にしてみてください。