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いまさら聞けないグラスウールのメリット・デメリット

今回は、グラスウールのメリット・デメリットについて解説します。

寒い・暑い季節になると、家づくりについて考えている人は、断熱材はどんなものがいいかと考えますよね。そういう中で、久しぶりにベーシックな質問を受けました。

「やっぱりグラスウールっていいんですか?」という質問です。

グラスウールは、数ある断熱材の中で一番ポピュラーで身近なものです。私が子どもの頃は、家づくりの現場であまり見ることはなかったんですが、どこからか断熱材を入れるようなった一番最初がグラスウールでした。それぐらい基本的で身近な断熱材です。

それゆえにいろんなことを言われるので、今日はグラスウールについて解説していきます。

まずはメリットです。一番は、コスパがいいことです。コスパというのは、ただ単に価格が安いだけが強みではありません。欲しい性能あたりの価格が安いということです。

これは会社によってもばらつきがありますが、例えばグラスウールのコストを1としたら、ウレタン発泡は1.5倍ぐらいです。セルロースファイバーも人気がありますが、これは2倍ぐらいです。フェノール系のボードみたいなものなら3~4倍です。比較しても、いかに安いかがわかると思います。

また、いろんな材料がある中で、どこでも手に入りやすいという点もあります。そして、グラスウールはハサミ・カッターで簡単に加工できて、施工性がいいこと、軽いこともメリットです。つまり現場で使いやすいので、職人さんの手間も省きやすいです。それも含めてコスパがいいと思います。

次に、不燃性です。ガラス繊維でできていますから、燃えにくいです。木造の建物・2×4の建物では、ファイヤーストップと言って壁や天井の中に、火事になった時に火が走っていかないようにする施工をします。グラスウールはそれにも使われていて、一定以上の不燃性があります。

それから、経年劣化が少ないことです。世の中のものは、時間が経てば劣化します。しかし、ガラスのコップがめちゃくちゃ傷むことはないですよね。グラスウールも、ガラス質なので変質しにくいのです。

そして何といっても、グラスウールが断熱材として使われてきた歴史が長いことです。いい意味でも悪い意味でも、何が起きるかが世間に知れ渡っているし、技術者も熟知している可能性が高いです。

また、吸音効果も高いと言われます。繊維なので、音を吸収してくれます。これを利用して、防音材・吸音材にも使います。

次に、自然に優しいことです。ガラスなので、昔は発がん性を気にする方もいましたが、調べたところこれは結構低いそうです。

それから、ガラスですからリサイクルが効くという点もあります。捨てるしかないのではなく、溶かしてもう1回使えます。

一方で、デメリットもあります。まずは、施工のポイントが何点かあって、それをわかって施工しないと断熱性能が確保できないという点があります。

グラスウールは袋入りのものが多いですが、あれは最悪ですという人が一定数います。あれは防湿層とグラスウールとの固定を兼ねたもので、結構いいものです。ただ袋に包まれているがゆえに、向こう側が見えないんです。比較的白っぽいシートが多く、完全な透明なシートは少ないです。

そうすると、決められた寸法の時はいいですが、ちょっと加工が必要な時には、うっかり小さく切りすぎて隙間が空いてしまい、それを見過ごすことがあります。また、袋入りを使っている人の中には断熱・気密に関する十分な経験値・知識がなくて、うっかりやってしまっている事もゼロではないと思います。

また、湿気・雨水の侵入があって濡れてしまうと、著しく性能が下がります。ただ、これはグラスウールだけでなく、多くのものは水に浸かったらダメです。

それから、熱橋問題があります。これは壁を輪切りした状態の図で、柱・間柱がある中にグラスウールが充填されています。グラスウールの充填があるところは断熱が効いていますが、木の部分はグラスウールと比べると断熱性能が落ちます。これが熱橋といって、熱を伝えてしまう道になります。

次に、施工のポイントについてです。グラスウールの中に風や湿気・水蒸気を含んだものが入ってくると、結露などの悪さをすることがあります。これが入っていかないように、気流止めもなどをしっかりする必要があります。これが面倒なことが、デメリットだと言われています。

ここでせっかくなので、袋入りのグラスウールがなぜでできたかを紹介したいと思います。

昔の人は、グラスウールはチクチクするから嫌いだとよく言っていました。私のおじいちゃんは「お前が入れてくれ」と言うので、私が高校生の頃は、雨カッパを着て台所で使うゴム手袋をして、なるべく肌が直接触れないようにしてやっていました。

今はガラスの繊維を細くする細繊維化にメーカーが成功して、チクチク感が随分減りました。ガラスが割れたら刺さるのと同じで、それが大きければ大きいほど皮膚に引っかかりやすかったのですが、細かい繊維になってそれが随分和らぎました。

こういうこともあり最近は、袋入りのグラスウールよりも、私はむき出しのグラスウールを使います。直接目に見えますから、もしカットを間違えたり凹んだりした時に、目視で修正しやすいからです。

細かい繊維になって良かったことは、弾力性・剛性です。ふわふわしたものの剛性というと不思議かもしれませんが、スポンジでもふにゃふにゃのものと硬質のものがありますよね。あの硬質スポンジみたいな感じで、スポンジなんだけどしっかりしているという感じです。

よく「グラスウールを入れても落ちてしまいますよ」と言う人もいますが、それは普通のグラスウールの話です。高性能グラスウールはしっかりしているので、垂れ下がったり曲がったりすることは少ないです。

この高性能グラスウールは、密度に種類があります。16・20・24・8・32・36・38Kなどの種類があり、16K以上あるものが高性能グラスウールと言われます。

断熱性能の効果を測る尺度は、断熱材の性能×厚さによって決まります。薄い断熱材より厚い断熱材の方が効きます。ただその時に、厚さには制約があります。

例えば在来木造住宅では、柱は大体105~120mmと決まっていますから、断熱材はいっぱい入れても120mmなんです。でも厚くして性能を上げたい時に、より密実なグラスウールを使って性能を上げることができます。

よく出回っている16Kの熱伝導率は、大体0.038W/mKですが、24Kでは0.036W/mK、36Kでは0.032W/mKになります。0.038と0.032ではあまり差がないように思うかもしれません。しかし設計を詳しく知っている人間の視点では、「0.032なら結構性能が出るじゃん」という感覚です。

同じ厚みでも熱伝導率が違うもので性能値を上げるということは、若干コストは上がりますが、施工の手間はあまり大きくは変わりません。そういう意味で、高性能グラスウールは使い勝手がよくなっています。

次に、施工のポイントでよく出てくる話です。絵に描いたように、外側から外壁、通気層、透湿防水シート、グラスウール、気密シート、石膏ボードを施工して、室内を担保します。

室内に人がいたり煮炊きしたりすると、水蒸気がでます。それが、石膏ボードも透湿性がありますから、湿気が入ってきます。その時に、気密シートで水蒸気もカットします。それによって水蒸気が入って、面材の裏あたりの温度が低くなることがあります。結露の条件である温度差と水分を小さくできるので、こういうところを留意しないと、グラスウールは性能を長く保持できません。

技術に詳しい方と議論すると、もしグラスウールに水蒸気が入っても、どんどん透湿防水シートから逃げてくれて、カラカラに変わっていくと言います。しかし最近は、通気層は防水の役割が大きいのではと言っています。

壁材などがピチャっとくっついていると、もし亀裂などがあって雨漏りした場合に、毛細管現象といって水分が登ってきて、その水が抜けないということがあります。しかし15mmでも隙間があると、雨が染み込む前に切れていったり、多少漏れてもすぐ通気したりするから大事にならないということもあります。

グラスウールのデメリットを緩和するために通気層を施工していたのが、翻って高い防水性能・止水性能にも貢献して、グラスウールはより守られているということです。

最後に、グラスウールの悪口を言う人に「グラスウールは黒くなりますよ」「外れますよ」という人がいます。それが起きるのは、結露のせいです。結露を防ぐメカニズムがなかったから、グラスウールは悪者だったんです。

今は、気密シートで水蒸気を入れない、万が一入っても透湿防水シートで速やかに出すというメカニズムが機能しています。何より高性能グラスウールは、細い繊維になって剛性が高まったから、昔みたいに簡単にずり落ちたりしません。

グラスウールのデメリットを言う人には、現場を知らないのではないかと思う人もいます。現実は、対策が結構できてきています。そうすると、性能も出てコスパも良いものと考えられます。そんな感じでグラスウールを見るのが、一番ニュートラルだと思います。

ぜひ参考にしてください。

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