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風通しのいい家は本当に涼しいのか?

相変わらず暑い日が続きますね。こういう季節によく家づくり談義をしていると、風通しを作らないと暑くて仕方ないですよね、というお話は出てくるんです。

先日の報道では、地球は12万年ぶりに暑い時を迎えていると言われています。12万年ってどうやって比べたの?と思いますけど、それぐらい異常と思える暑さ。特に日本という地域でも、すごい暑い中で本当に風通しの良い家を追求したら、涼しく暮らせるのかということに対して、解説をしていきたいと思います。

僕はいま61歳ですけど、風通しの良い家は涼しくて気持ちいいなぁという経験はあります。あるんですけど、遠い記憶です。僕のじいちゃん・ばあちゃんの家です。実家ですね。特に母方の実家がそうでした。

その頃はほぼ平屋で、縁側が南東の方向に開いてあって、その家には裏側にも縁側がありました。南に対して北側にも縁側があって、夏に僕がじいちゃんちに泊めてもらうと、50年前やと縁側はガラス戸じゃなかったんです。雨戸があって、それを全開にして、その内側の障子も開けて、そりゃ風も通りますよ。北と南が全開やからね。ビュー!ぐらいの勢いで風が通るところにいました。

僕が特に涼しい・気持ちいいというのは、日も陰って子どもやから早く眠たくなるので、寝るって言ったらおじいちゃんが蚊帳を吊ってくれていました。

もちろん蚊取り線香もつけてくれてましたけど、その中に潜り込んだ時分におじいちゃんがおもむろに外へ出て、水道のホースで水を屋根にかけてくれたんです。和瓦の屋根でしたけど、水をかけてしばらくしたらスーッと温度が下がったような子供心の記憶で、拡大記憶かもしれませんけど、そんな感じでした。そうすると知らないうちに寝落ちして、朝方は田舎だったので温度も下がったりして、ちょっと肌寒いぐらいな感じで目を覚ましてたんです。こういうことから言うと、確かに風通しの良い家は涼しかったなという経験はあります。

僕は思うんですけど、70代以上の僕の先輩方の中には、風通しを重んじる方がとても多いと思うんです。ところがどっこい。一番思うのは50年前の日本と今の日本は全然夏の厳しさが違ってる。僕が言うまでもなく、70〜80代の方はわかってると思うんです。

気象庁の東京のデータですけど、50年前の7月の平均気温は25.4℃、最高気温は34.9℃。それでも結構いってましたねって感じですけど、相対湿度75%。これはまぁね、という感じ。8月は平均27.4℃、最高気温35.5℃、相対湿度は69%ぐらいだったそうです。

今の日本はどうかと言うと、平均気温が27.4℃(2022年)、最高気温は37℃。2℃程度やんと言うかもしれませんけど、平均という言葉がついた温度の比較で、1℃上がるのはすごいこと。皆さんの体温も普通は36.5℃ぐらいでしょ。0.5℃上がったらおかしくなるじゃないですか。2℃上がるのはなかなかのことです。

相対湿度も79%。大気(空気)は気温が上がれば上がるほど、飽和水蒸気量が増える。いっぱいの水蒸気が宿るようになった上に、相対湿度も4%上がっているということは、すごい水分量が増えているわけですよ。この2℃プラス湿気が増えて高温多湿化してるから、外気は決して涼しいものじゃなくなったのが、この50年だった。

概略図をみてください。

みんな暑いからエアコンをつけてます。エアコンはつけたら家の中は涼しいけど、その代償として室外機から熱気が出ます。今の時期に室外機の前に立つと温かい風が出てる。各家が気温より高い風を吐いている。エアコンを3台つけたら3箇所から吐いていて、これが密集地で隣棟間隔が2〜3mのところなら、困らない方が不思議ですよね。

それとなにより、じいちゃん・ばあちゃんちは水田とか山とか草が生えてる畑とか土だったわけですけど、都会はコンクリートのアスファルトばっかり。コンクリートやアスファルトの何がアカンかと言うと、若い人も草が生えるとイヤやから、コンクリートを打ったりしたがる。何がアカンかと言うと蓄熱するんですよ。

日没して自分の家のテラスの土間を触ってみてください。温かいから。そうするとこれがジリジリと夜にかけて熱を放出していきますから。これはやっぱり暑いですよ。気温も湿度も上がってるし増えてるのに、条件としては家の周りに蓄熱してるものがゴロゴロしてるし、室外機は動いている。

50年前の日本と言ったら、エアコンもついてる家はあった。僕の家もついてましたけど水冷式みたいな、今みたいなヒートポンプ式ではなかった感じで言うと、すごく条件は悪くなってるんです。

なので結論です。風通しを良くしていくことは重要です。それはなぜかと言うと、例えば5月・10月みたいな季節は外が気持ちいいですから、フレッシュで気持ちいい風を入れるべきです。その時は風通しはいるんですけど、夏場は風通しを望んでそれに頼ったところでアカンのです。

よくお年寄りの方でエアコンはアカン・苦手やとか、もったいないと言って、扇風機をつけたらいいと言ってる人がいる。あれは空気を混ぜてるだけです。空気自体の温度を低くしたり湿度を落としているわけじゃない。確かに風が当たるから一定の気化熱を奪われていくので、涼感はあると思いますけど、ほんまに涼しくないし体に悪い。ここは割り切っていただきたいです。

夏に涼しい家にするには風通しより優先することはエアコンがよく効く家にするということ。ちょっと(考えを)切り替えてもらわなアカン。YouTubeなんかおじいちゃん・おばあちゃんは見てないかもしれないから、周りの若い人が教えてあげてほしいのです。

僕が母親にエアコンつけろって言ったらケンカになる。でも僕の娘がつけなアカンよって言ったら、「そうやね」ってなる。お孫さん・娘さん・息子さんの力を使ってもらって、おじいちゃん・おばあちゃんにつけなアカンでって言ってあげてほしいので、そういうこともあって、エアコンで涼を取るという切り替えをお金はかかりますけど、病気になって病院へ行ったらもっとかかりますから。何よりも気分が悪いし、命までなくなって寿命まで短くなって、本当にいいことはないから気を付けてほしいです。

エアコンがよく効く家というのは、まず家の窓の性能がいいこと。窓から熱が入ってきたりするし、気密の良くない窓だったらせっかく冷やした空気がロスしたりする。次が屋根の断熱性能はしっかりした方がいい。太陽の力が強いので屋根は焼け込みますし、もちろん瓦なら蓄熱しますからね。断熱で隔たりを作らないと、その下で寝てる人は暑い。屋根の断熱が効いてる家ならそういうことはない。

屋根以外の壁とか床とかも断熱性能があって、気密もちゃんと取れてる。気密がしっかり取れてないとエアコンは効きにくい。最後に庇(ひさし)でもいいですし、すだれでもよしずでもいいし、サンシェードみたいなものでもいいので、南から大量に入ってくる夏の太陽の熱を日射遮蔽してください。極端に言ったら庇があっても、南の大きい窓にサンシェードを下げた方が、直射日光は入らなくても太陽熱は入ります。サンシェードを下げるとガラスの表面温度が変わってくるので、エアコンがわずかな電気代でしっかり冷やしてくれます。

もったいないという気持ちも薄らぐと思います。こんなことを思っていただいて、風通しを含めた涼しい家というのは、何かなというのを考えていただけたらと思います。

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