冬の乾燥対策:加湿量はどのくらい必要か?
▼失敗しない加湿器の選び方
最近ちょっと寒くなってきましたね。寒くなってくるとよく耳にするのが、「乾燥する」という声です。寒いのも嫌だけど、乾燥して唇がガサガサしたり、風邪をひきやすくなって嫌だという声もよく聞きます。そういう中で、いろんなお客様から「加湿ってどうなんですかね?」「どんな風に考えたらいいんですかね?」という質問をよく受けるので、今回はこの1テーマに絞って考えていきたいと思います。
そもそも内気にどれぐらいの湿気を入れるべきなのか、またどれぐらいの湿気であれば不快ではないんでしょうか。もちろん外気はどうにもできないので、外に出る時はリップクリームや化粧水をつけて、乾燥から守らなければなりません。ただ、家の中でもそんなことばかりするのは嫌だから、ノーストレスでいるために、どれぐらいの加湿量が必要かということを何となくイメージすることが大事です。そこでモデルケースとして、7.28m×7.28mぐらいのよくある総2階の建物を挙げてみます。合計106㎡、延床面積32坪ぐらいのポピュラーな広さのお家です。これぐらいのお家では、どれぐらいの加湿が必要なのかということを紐解いていきます。
東京や6地域では、平均気温は5.5℃、相対湿度は51%くらいです。一方で、室内は最低でもどれぐらいにしておきたいかというと、温度は20℃、湿度は辛めに言うと40%くらいです。40%を切ったらちょっとまずいかなという感じです。また、外の空気に関しては、1㎥あたり3.59gぐらい、20℃・40%の室内には、1㎥あたり6.92gの水分が含まれているそうです。そう考えると、室内と外気の水分差は3.33gです。つまり、外の方が1㎥あたり3.33g乾いているということになります。
このお家は、7.28m×7.28mの表面積に対し、4.8mの高さがあるため、気積は254.4㎡あることになります。また、シックハウスにならないための換気回数が法律で決まっており、1時間あたり0.5回、空気が入れ替わるようにしておく必要があります。これを1つの基準とすると、1時間あたり127.2㎥空気が入れ替わることになります。言い換えると、127.2㎥の外気が入ってくるということです。127.2㎥に対して3.33gの空気が乾いた空気が入ってくるということは、湿気た空気が出て行ってしまうということにもなります。そしてこれらを掛けると424g、つまり0.42ℓが1時間で出て行ってしまうことになり、さらに24時間を掛けると10.08ℓになるため、1日10ℓの加湿が必要という結果になります。
10ℓというと、2ℓのペットボトル5本分です。その量を加湿しなければいけないということなので、まあまあすごいですよね。なので、かなり意識的に加湿しなければ家の中が乾いてきてしまいます。特に暖房器具でエアコンを使っていると、省エネ性は高いけど、余計に乾燥が助長されることになります。
加湿側の要素は何があるのかというと、1つは自然湿気といって、何もせずともある湿気です。人間の喉が乾いたり皮膚がガサガサになったりするのは、身体から水分が出ているためです。それから、水道をジャーッとひねって、茶碗を洗ったり、洗濯をしたり、顔を洗ったりすることでも水を使います。トイレでも水を流しますよね。こういうことで、4人家族だったら5ℓぐらいの水分が、家の中で供給されていることになります。そうなると、5ℓは自然に入ってくるとして、残り5ℓ必要です。
他に対策としてよく言われているのは、室内干しです。洗濯物を家の中に干しておけば水蒸気が出るので、それにより加湿されます。人間1人あたり1.5kgぐらいの洗濯物が出るらしいので、4人家族だったら1日に6kgもの洗濯物が出ることになります。また、6kgの洗濯物のうち半分は水分と言われているので、室内干ししたら3ℓの水分が供給されるイメージです。
さらに、お風呂の残り湯というのも有効です。一般的な4人家族が住むような家についている浴槽だったら、12時間で2.7ℓぐらい乾くそうです。換気扇をつけていたら外気に水蒸気が出てしまいますが、換気扇を切って、ユーティリティや脱衣所も開けておけば、2.7ℓぐらいが加湿の対象になり得ます。そういう感じで、残り5ℓ分も加湿することが可能です。
ただ、湿度というのは50%を超えた方がいいと言われています。そうなってくると、これらの対策だけでは正直しんどいです。そういうわけで有効なのが、やっぱり加湿器です。また、三種換気のように外気をダイレクトに入れて出すのもいいですが、一種換気のような全熱交換型換気を利用するのも手です。湿気を100%出してしまうわけではなく、50%ぐらいの設定のものだったら、残りの50%の湿気は残ってくれるので、加湿を有利にするという点でいいわけです。また、夏の湿気対策にもなってオススメです。今まで一種換気は、コスト面を考えるとどうかなという感じでしたが、最近は電気代もどんどん上がってきていて、一種換気でも十分ペイすることになるので、そういうことも含めて検討してみるのもいいかと思います。
まとめると、家の換気方式を一種・三種のどちらでやるかによって作戦は変わります。そして、暮らし方でも変わります。それから室内干しはあんまり好きじゃないとか、室内干しするスペースがないという時は、加湿器にどれだけ貢献させるかということがポイントになると思います。それ以外にも、観葉植物や水槽を家の中に置くと、そこから蒸発して加湿されるという方法もあります。この辺も含みながら考えていくということになります。どんな加湿器がいいのかについては別の動画で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
赤ちゃんがいるとか、アレルギー性が強くて風邪をひきやすいとか、お肌が敏感な家族がいるという方は、加湿は真剣にやってください。5ℓ単位でチャージするということを考えなければ、室内環境が悪くなって、快適な冬を過ごせなくなってしまいます。何と言っても、湿度が低いというのは体に悪いですし、カラッカラの20℃と湿気がたっぷりある20℃とでは、全く感じ方が違います。特に女性はそういうセンサーが発達しているので、奥さんやお子さんの意見を聞いて調整してもらえたらと思います。