地鎮祭って必要なんでしょうか?
今日のテーマは地鎮祭です。
私の動画を観ていただいている方が、これから家づくりを始めるそうで「地鎮祭はやらないといけないものなんでしょうか?」と質問をいただきました。
僕のスケッチを見てください。
地鎮祭というのは神主さんを呼んで行うものなので、宗教的な部分があります。
日本人は宗教に関して、神教と仏教という形で考える方が多いです。地鎮祭は神教が多いですが、仏教にに沿ってすすめる方もいらっしゃいます。このことも解説すると長くなってしまうので、今回は一般的によく言われている地鎮祭についてお話ししていきたいと思います。
そもそも地鎮祭というのは、家を建てる前に神主さんのような儀式を司る人をお呼びして、これから始まる工事の安全を祈願する儀式です。
多いのはいわゆる神式のものです。敷地の中の中央部に杭を打って笹を四方に立てて(宗派によっては真ん中にも1本立てて)しめ縄という細い縄を巻いていくんですね。結界とかフィールドみたいなものをつくります。その中に祭壇を置いて、お施主さんとか家づくりの関係者が一緒に入って神主さん主導で行う儀式になっています。
一般的な地鎮祭というのは、良い日・良い時を選んでやります。
日本人であれば大安・友引・先勝といった日を選びます。時間は午前中が多いです。一番いいのは午(うま)の刻と言って11時から13時ぐらいまでの間です。
この午の刻というのは馬の神様みたいなのがいて、それがすごく力があるという風に言われているんですね。
また地鎮祭は神事なのでお供えがいります。
神事としてのお供えで、まず最低でも必要なのがお米・塩・綺麗なお水、それからお神酒(お酒)です。その上で海の幸・山の幸と言って、土地柄によって鯛を供える所もあれば昆布みたいな海の幸を用意したり、山の幸で野菜を用意することも多いです。根菜とか果物の場合もあります。地域などでいろいろありますが、そういう物をお供えして、神様に対してお願いをしていくんですね。
地鎮祭では、どんなことをするかについてもお話ししておきます。(
修祓(しゅばつ)の儀と言って、まずは神様に、これから工事の安全をお祈りすることに対してのお祓いをお願いします。
日本人は祓うという概念を持っていて、綺麗にして引き締まった気持ちで、神様に結界まで降りてきていただくという形をとります。
それからお供えを置いて、「神様、実はお話があるんです」とお伝えをします。それから「実はこの土地に僕らがいよいよ住むことになりました」もしくは「新たに家を建て替えることになったんです」ということをご報告します。
祝詞奏上(のりとそうじょう)と言って、儀式として神様に「こういうような住所で、こういうような建物を、こういうような関係者と共にやりますのでよろしくお願いします」と言うのが祝詞です。
神様にそういうことをお伝えした後、敷地の四隅とか中央とかに、お塩を撒いたりお米を撒いたり、お酒を撒くこともあります。そういう風にしてお清め・お祓いをしながら、これから家族が幸せに住もうとしている場を整えていきます。
その後、敷地に草が生えているのを刈って「鍬入れ(くわいれ)」というのを行って、そこに鎮物と言って土地に神様からいただいたものを鎮める儀式も行います。
地鎮祭で最大のクライマックスは「玉串」になります。
玉串は榊(さかき)ですね。榊という神様に供える木を用いて、2礼して2拍手して1礼することが多いです。これは神社に参るところの正式なお参りの仕方で、「よろしくお願いします」「どうぞ安全に家が無事にできますように」という祈りです。
最後に直会と言って、みんなでお神酒で乾杯をします。「頑張りましょう!」みたいな感じで決意表明に近いものですね。地方によってはその後、宴会をすることもあります。
最近はお神酒で乾杯するまでが多いと思います。ここまでの一連の儀式が地鎮祭になります。
ここまでの話を聞いて「神教じゃないし…」とか「別にやらなくてもいいかな」と思われた方もいると思います。でも僕は60歳の還暦オヤジとして物申したいことがあるので、ちょっと聞いていただけたらうれしいです。
人間の営みにおいて、昔から儀式というのはすごく大事にされています。それをどんどん省略しているのが現代です。なので薄まったというか、失われたものもあるなということがあるんですね。
儀式に真面目に取り組めば、みなさんにも実感していただけるのですが、地鎮祭を体験すると何とも言えない、心が清々しくなるというか落ち着くような効果があります。損得で言ったらアカンと思いますが、そういった実感が絶対に生まれると思うんですね。
最近は核家族で、自分たちだけで家を建てるということが多いです。でも、そういった場合でも、地鎮祭に双方のご両親を呼んで参加していただくというのは、とても素敵なことです。
そういう集まり方をするのって、一般的には結婚式ぐらいですよね。でもその後に地鎮祭いうものがあれば、またみんなが集う大きな機会ができます。
地鎮祭のときは、夫婦の間に子どもが生まれていることが多いですから、結婚式のときとはまた違った状況で、みんなが集いますよね。
小さなお子さんに地鎮祭の意味はまだ分からないと思いますが、お父さんとお母さんに
連れられて一緒に玉串奉奠したり、お父さんとかお母さんの姿を一生懸命見て、お辞儀を真似したりすることは、すごくいい経験になるはずです。
親の自己満足かもしれませんが、本当にいい思い出になります。
多くの場合は、そういった行事を映像に撮られたりとか写真を撮られたりすることが多いですよね。子ども側からすると当時のことは覚えていないかもしれません。でも、映像や写真が残っていれば自分の記憶が強化されていくので忘れない思い出になります。
「お父さん頑張って家を建ててくれたんだなぁ」とか、そういった記憶になっていくんですね。これはすごくいいなと思います。
少し脱線しますが、儀式というのを広辞苑の定義みたいな感じで紐解いてみました。
一定のルールに基づいた人間が行う日常的な生活の行為とは異なる、特別な行為が儀式だそうです。この特別な行為というのがお祓いであり、お清めであり、僕にとって最大の意味が決意表明だと思っています。
僕も工務店のオヤジなので、ありがたいことにたくさんのご家族の地鎮祭に参加させていただいています。玉串奉奠をする時は「一生一回の家づくりを担当させてもらうんだ」と思って毎回気持ちが引き締まります。
ご夫婦が神妙な顔されたり、お子さんが嬉しそうにしてたり、おじいちゃんとかおばあちゃんが「良かった良かった」と言っている姿を見たら、いい家づくりをしようと考えますよね。
ここまでのことを担当してきた設計士も、これから担当する施工者も、僕らみたいな工務店もハウスメーカーの工事担当者も覚悟が決まる。そういう効能があります。だから僕は、地鎮祭をされた方がいいと考えています。
ちょっと脅すような話になりますが、土地というのは何億年も昔からあるものですよね。
初めて住む土地でも、長く住んでいる土地でも、いろんな人が利用していくのが土地というものです。そうすると、その土地には宿ってるものがあると僕は考えます。神様なのか、(あまり言いたくないですが)霊みたいなものなのかは分かりませんが、そういうものがあると思うんですね。
例えば、ずっと人が住んできた宅地だと井戸があることが多いです。
井戸というのは歴史の中で埋められたり隠されたりするんですね。で、井戸があるのが分かったときは「埋めるのはいいけど、井戸の中には神様が宿ってるという考えがあるから、きちんと息抜きを入れておかなくてはいけない」というのがあります。これはちゃんとしておいたほうがいいと個人的には思っています。
また水路や道がある(もしくは過去にあった)土地もあります。そうすると、その土地にはいろんなものが通っていることになるので、建てる前にきちんと仁義を切って「ここに住まわせてもらいます」と言うというようなことをしたほうがいいと僕は思います。
その上でちょっと特殊な話をさせてください。お節介オヤジの1つの話として聞いてもらえたらと思います。(宗教的な話になるので、そんなことはとても受け入れられないという人は頭に入れなくて大丈夫です。)
日本で最大の神社は伊勢神宮ですよね。もう1つが島根県の出雲大社。
他にも大きな神社はありますが、出雲大社の宮司さんに来ていただいて、土地のお祓いや地鎮祭をしていただくといいことがあります。出雲屋敷と言うらしいんですけど、出雲大社の神様には特別な力があるんです 。方位をなくすことができるそうです。オカルト的な話で信じられないかもしれませんが。
家を建てるとなると、家相が気になることもありますよね。家相というのは必ず方位にまつわる話です。
出雲大社の宮司は、鬼門とか裏鬼門もなく、北・南・東・西もない出雲屋敷という1つの結界を作ることができるそうなんです。
いろいろプランを提案してもらったけど、「家相で言うとどうなのかな」って不安が残るときがあるじゃないですか。出雲屋敷だったら方位がなくなるので、その心配はゼロになります。今回のテーマからするとおまけみたいな話かもしれませんが、しゃべらせていただきました。
でも長年家づくりに関わってきた身からすると、家づくりというのは、1つひとつ節目があって、1つ1つひとつ納得して、1つ1つひとつ積み上げて進んでいくものです。
実際に家を建てるときと一緒ですね。基礎から始まって、そこからいろいろなものが建ち上がっていくように、ステップを踏んで進んでいきます。
進んでいく上で、地鎮祭というのは、まさに家づくりの実際の施工のキックオフになるので、僕はされた方がいいんじゃないかなと考えています。
地鎮祭をされたら、その際にはご近隣さんへのの挨拶もしていただくといいです。昨今は造成地の何区画もあって、まだご近隣がないという所もあるから、挨拶の習慣も薄れていると思います。でも古い家の建て替えとかであれば、ご近隣さんが必ずいらっしゃいますよね。
この前に参加した地鎮祭では、僕が朝、地鎮祭の用意を監督さんたちとゴソゴソやってたら、ご近所の奥さんが洗濯物を干してました。僕が「おはようございます」と言ったら「今日は地鎮祭ですか?天気が晴れて良かったですね」みたいなやり取りがあって、お隣の人も家づくりが進んでいるのを喜んでくださってることが分かったりします。
地鎮祭が終わったあとも「さっきは儀式でにぎやかになってすみませんでした」とご挨拶をしたら「良かったですね」とおっしゃってくださって「今回の工事も気持ちよくスタートできるな」「絶対エエ家ができるな」と予感しました。
こういう良いところもあるので、ぜひ地鎮祭というものを改めて考えていただいて、大事にしていただければと思います。節介おじさんからの提案でした。