家づくりで起こりがちな失敗(住宅ローン選び編)
今回のテーマは住宅ローンの選び方についてです。僕が思う考えの1つをご説明をしたいと思います。
今まで20年以上、デフレとか超低金利時代とかって言われてきましたが世情が変わってきています。にわかに値上がりが続いたり、いわゆるインフレということになってきて金利も上がってきそうな感じですよね。
僕のスケッチを見てください。
住宅ローンを選ぶという局面になった時に考えるのは、どの住宅ローンの商品を選ぶかです。翻って言うと、どういう金利の商品を選ぶか、みなさん結構悩まれるはずです。
住宅ローンにはたくさんの種類がありますが両極端の話でいくと、いわゆる変動金利というものと固定金利というのがあります。
変動金利で選ぶのか固定金利で選ぶのか問題というのに、みなさん必ず突き当たります。
なので僕はこういう質問をします。
「世の中に変動金利と固定金利しかなかったとしたら、どちら選びますか?」とお聞きします。単純に、シンプルに考えていただくための質問ですね。
1つの例を出します。ソニー銀行さんでは確か、①変動金利0.457%、②35年固定金利1.757%という商品がありました。(住宅ローンは概ね35年というのが決まってますので、この期間ずっと固定して1.757%というものになっています)
「①と②、あなたならどちらに入りますか?」という質問をすると意見がパカッと分かれます。
「それは①でしょう。変動でしょう!」という人と「それは②でしょう。固定です!」という答えが返ってきてきます。僕は「なるほど」と思った後、「じゃあ理由を教えてください」とお聞きしています。そうすると、みなさん一瞬「ん?」となるんですね。そして大抵は「それはこっちの方が得だから」とか「こっちを選んだら損だもん」とおっしゃることが多いです。
でも今回僕がお伝えしたいのは、住宅ローンは損か得かということで選んではならない、ということです。
このことをお伝えしたとき「いやでもね…」とおっしゃる人の理屈はこうです。
例えば3,000万円の借り入れして35年返済するとします。
この時に変動金利の0.457%で計算したら、毎月の支払いは77,306円ぐらいになります。一方で35年固定の1.757%のレートで計算すると95,678円。
どうですか?なんと1ヵ月あたり18,372円の差が出ます。僕の周りには月のお小遣いが2万円という旦那さんが結構いますので、旦那さんのお小遣いがほぼなくなるぐらいの額だなぁと思ってしまいます。でも、このときに損か得かで考えてしまうと住宅ローンを考える時の罠にはまりやすくなってしまいます。
お客様にする2つ目の質問で「理由は何?」と聞くのには僕なりの意図があります。
お客様がどちらかを選んだということは、何かその2つのものに違いがあって、こういう違いがあるから選んだんですよね?というのをお聞きしたいからなんです。
その違いって何なのかというところの根本的な1つの原則が、“金利を固定する期間”です。金利を固定する期間が長くなると金利は高くなるんです。
大事なことなのでもう1度言います。金利を固定する期間が長くなると金利は高くなるんです。なので金利を固定する期間を短くすると金利は低くなります。
35年は35年で固定だからわかりやすいですが、変動金利はどれぐらいの期間固定すると思いますか?
変動なので毎月変わるというような商品もあるかもしれませんが、一般的には半年に1回見直しがあります。例えば今この瞬間に3,000万円を借りたとします。その場合、0.457%の金利は半年間有効ですが、半年後の金利はわからないです。
なのでそういう風に決めるということを知っておいてください。
もうご存知の方は「それで?」って感じだと思います。ではもう1つ質問です。
期間を短くしたとき、金利は低くなるという話をしました。なぜ銀行は金利を低くしてくれると思いますか?
お客さんと親戚だから?親友?近所?そういう理由じゃないですよね。もっとクールですよね銀行って。なぜ金利を低くしてくれるのでしょうか?ポイントはここになります。
変動金利の見直しが6ヵ月に1回であれば、銀行は0.457%という低い金利で契約しても損をしない、つまりリスクがないんです。
そうですよね。半年ぐらいの間の金利の変動はまぁまぁ予想できるじゃないですか。なので銀行が損をするという確率は極めて低いです。リスクがないから低くしてあげますよ、ということなんです。
一方で35年間という期間で考えた時に固定金利が1.757%というのは、僕からすると安い金利だと思います。(0.3%とか0.4%という数字になれている人からするとすごく高いなと思うみたいです。)銀行側からすると「35年間この金利でいいよ」というのはリスクがあるんですね。
どういう風にリスクがあるかについては、スケッチにかいたグラフをみてください。(ざっくりとした内容なので詳しく知りたい方はネットでみていただければと思います)
1990年・2000年・2010年・2020年という区分けで金利の変化を書いています。水色の線が旧住宅金融公庫です。いわゆる住宅ローンのうち、国も認めているようなものですね。
その上のやつが長期プライムレートになります。一般的には銀行のプロパーのローンみたいなやつです。大体同じような波形を辿っていますよ。
ちなみに2020年代の今頃は住宅ローンの長期の固定金利って1%あるなしです。0.9%・0.8%みたいなやつがあります。
一方で約30年前の1992年ぐらいの時は金利が最も高かったと言われています。
この頃の旧の住宅金融公庫は金利が5.5%もあります。国が「みんなが家を建てやすいようにちゃんと安くしてあげたよ」という内容のものですが、それでも5.5%あります。
さっき1.75%で高いと思いましたよね。5.5%と言ったら3〜4倍もします。30年間強のスパンで考えたら金利というのはこれぐらい変動があるんです。これは日本の今までの歴史で起きたことです。
これからの歴史はどうなるかわかりませんが、今現在の固定金利1.75%というのは今の変動金利の0.457%に比べたら高いですが、30年前の固定金利5.5%から見たらめっちゃ安いです。
銀行は歩み寄って歩み寄ってリスクを考えても、やっぱりこれだけは貰わないとマズいということで、こういった金利が設定されています。ということは、金利に関しては安い・高いとかはないということなんです。
金利を考えるうえで大事なことは、誰がどれだけリスクを背負うかということになります。これを金融用語ではリスクプレミアムと言います。大事な言葉です。
だから住宅ローンというのは株・債券とかと一緒で金融商品になるんですね。
株を買ったら値上がりする・値下がりするというリスクがあるのはご存知ですよね。住宅ローンも借りる限りはリスクがあります。だから変動でも借りたらリスクはあります。
変動は半年・3年・5年・10年、固定は20年・30年・35年みたいな感じになって長期になればなるほど銀行にリスクが高まります。短期になればなるほど借り手のみなさんにリスクが高まります。だからこれをもって、金利の高い・低いとか損得みたいなことじゃなくて、どういうリスクの取り方をするのか、誰がリスクを取るのかというところを考えて住宅ローンを選びをしないといけないです。
デフレというのは1998年9月から始まったと言われています。ゼロ金利は1999年3月から始まったと言われています。振り返ると20何年間、世の中はデフレとゼロ金利でした。
なので、この24年間ぐらいに家を建てた人の先輩の経験は、もう参考にならないと僕は思います。今までは家づくりをゆっくり進めても良かったんです。デフレですからね。
でもインフレになったら、お金の価値はどんどん下がってきます。お金より物の価値の方が担保される時代に少しずつなっていくとしたら、家を建てる時期の問題が重要になってきます。
金利の変動ということで言うと、しばらくゼロ金利だったので“ゼロ金利”という視点で見ると上がったり下がったりするの振り幅は狭いです。でもこれが解除されて金利が上がっていくとなってくると、振り幅が大きくなっていきます。リスクマネジメントの問題も出てきます。
なので今までの24年間ぐらいに建てた先輩の話は参考にならなくなってしまいます。結果として、あの人たちは良かったというだけです。
これから借りる人の場合、自分たちの選択がいいか悪いかはリスクマネジメントという視点を持っていないと困ってしまいます。
家づくりを進めるうえで住宅ローンを借りるのなら、家づくりの各論に入る前に、根本的な原理原則は忘れないで取り組んでもらえたらと思います。
今回は説教がましくなってしまいましたが大事な話だと思うので、お話をしました。
こういうことを踏まえて営業の方やFP(ファイナンシャルプランナー)の人に相談していただいて、しっかり資金計画をしてみてください。