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玄関の断熱を考える

今日のテーマは玄関土間の断熱です。

「玄関の土間ってなに?」という人もいらっしゃると思うので、これもお話しします。

僕は最近、家に求める機能が少し変わってきてるのかなと思っています。
僕のスケッチを見てください。一般的な玄関を立体的に描きました。玄関にはドア(ゲート)の部分があって、外・内と分かれていますよね。
ここをもって玄関の土間「内土間・外土間」と言ったりします。

多いのが 特に寒い所なんですけど

西日本ではあまり実感がないですが、北海道や長野などに行くと、外に出たら殺人的な寒さを感じることがあります。こういった地域は、玄関ドアをいきなりバーンと開けたら外の冷気が家の中に入って困るということで、緩衝帯みたいなものを設けています。スケッチに描いたのは最低限の仕様です。

ドアがあって、玄関は内土間で、建具で仕切って中間に緩衝帯をつくる、みたいな感じです。いわゆる風除室みたいなものになります。こうやって緩衝帯をつくっておけば風が入ってくるけれど建具があるから冷気がダイレクトに来ることは阻止できるというものになっています。こういうのは西日本でも見られます。

一方で北海道・長野のような地域だと、風除室は外にあります。冷気がダイレクトに来るのを阻止する、というより、入ってこないようにするんですね。なので、風除室には今ご紹介した2つのパターンがあります。

ここで1つ問題になるのが、玄関土間の断熱です。
スケッチを見てください。ここ(ドアの下)は基礎の立ち上がりになってるので、外の熱をそのまま受けて、室内に伝えようとする所になっています。
これまでに建てられた家の多くは、よほど強く要望を出されないと、この箇所に断熱というのはあまり考えてられてこなかったんじゃないかなと思います。

以前、別の動画でバスルームユニットの床の下を、断熱材で包んで床下が冷えないようにする、変な気流が上がらないようにするというのを解説したことがあります。

▼暖かい浴室を作る方法
https://www.m-athome.co.jp/movie/atatakai_yokushitsu

玄関に関しても「絶対にこうしないとダメ」という規定はないです。でも、高気密・高断熱を設計されている方の実際の事例を今までたくさん見てきた中で、説明した箇所が無断熱というお家は結構多かったです。

玄関は家のわずかな部分になるので「ここが無断熱でも何の問題もない」という判断だったのかもしれません。一方で、風除室的なものがなくて玄関とホールが繋がってるようなお家だと、冷え込みが厳しい日に立ち上がりの部分が結露することがあります。玄関の土間に居室が隣接してるケースだと時々発生しています。

土間なので多少結露したとしても、立ち上がりの部分がちょっと濡れるぐらいで済むので、これが起きたからといって家の品質がすごく下がるということはないです。でも、気になると言えば気になりますよね。

なのでこれからは風除室を設ける、もしくは緩衝帯を作るという選択があるのを知っておく、玄関の土間にも断熱材をちゃんと入れておくというのも大事じゃないかなと考えています。

というのは、高気密・高断熱の家で、家の空調もしっかり計画されて、玄関や階段といった部分も温度差のない家を考えるなら、玄関の断熱は大切ですし、この動画を見ている方にも、ぜひやっていただきたいという内容だからです。

玄関というのは壁に断熱材が入っていて、ドアにも断熱材が入っています。(ドア自体に断熱材があるケースもあります)ところが、立ち上がりの部分に断熱材が入っていなかったり、床断熱を採用しているお家だと断熱が途切れている箇所ができてしまいます。その時はスケッチで赤く描いたように断熱材をL型に入れておくのがいいです。全て敷き詰める必要はないですが、土間も立ち上がりの分ぐらいはL型に入れておいて、なるべく熱が伝わらないようにされた方がいいと思います。

それともう1つ聞いていただきたいことがあります。
外土間と内土間は、大抵は一体に打つので連続してることが多いです。もし可能であれば、内と外の土間の間を断熱材で縁切りしておいてください。

外の土間は絶対に冷えますよね。その冷気は内に伝わろうとします。そこで内に伝わる所には、断熱材を2cmでも3cmでも挟んでもらうと冷気の伝わりがだいぶ緩やかになります。ここで言う断熱材はスタイロフォームとかカネカライトみたいなものになります。

「玄関の寒さ=土間の冷たさ」なので、他の部屋と玄関との温度差を抑えるには、土間の冷たさがダイレクトに入ってこないようにするのがポイントになります。

最後に僕の友人で、岐阜で工務店をしている方が採用しているもので、これは面白いなというのがありましたのでご紹介しておきます。それは玄関の土間を木床にするという方法です。

スケッチを見てください。一般的に玄関ドアというのは切り込みをします。玄関ドアが少し下がるんですね。
僕の友人の場合、多少の段差はつけますが、玄関ドアは下げないです。下げたとしても1階のフロアラインより少し下ぐらいで、玄関ドアを収めるという形をとっていました。そうすると懐ができるので木床が組めるんですね。

土間が木床だったら「水を流せない」と思う人もいらっしゃいますよね。実際に住んでいる方にお聞きしたところ、暮らしには特に何の支障もないとのことでした。普段はほうきで掃いて、泥が入った時は雑巾で拭いたりすることもあるけど、これまでに困ったことはないそうです。

スケッチで赤く記したように基礎断熱にしておけば、ドアを開けた先を室内空間という形にすることもできます。

木材にもいろいろなやり方があります。例えば長尺シートみたいなのを貼る方法です。重歩行用という店舗の床に貼ってあるような土足で上がってもいいようなシートがあるんですね。これを貼れば、ある程度の水も簡単に拭き取れます。シートは嫌だという人には、ウッドデッキに使うようなウリンとかセランガンバツのような堅木で油気の多い木を使うのがおすすめです。ウリンやセランガンバツは外用の物なので、充分に耐久性を担保できると思います。

あとは土間の高さが高くなるので、完全に外土間の熱伝導はシャットアウトします。かつ木を使っているので、そんなに冷たくなることはないです。

ドアを開けると、いきなりリビングが現われる間取りを採用しているお家があります。僕ら仲間内では“いきなりリビング”と呼んでいます。僕は最初「この間取りってどうなんだろう?」と思っていました。この間取りで実際に暮らされてるお家にお伺いしたことがあります。割とコンパクトなお家なんですが、上手に取り入れられていて、住み手の方も「いきなりリビングは悪くないですよ」とおっしっていました。

玄関という普段使わない空間を、リビング空間の中に取り込むと、部屋の広さはキープしながら、面白い空間ができたりすることがあります。このときに木床玄関も取り入れたり、断熱・気密をきっちりやると、建物の温度差はより緩和されます。

この動画は公開されるのが3月の終わりで春めいた頃なので、寒さに関してイメージしにくいかもしれません。でも「数ヶ月前は玄関土間が冷たくて嫌だったな」という覚えのある方は、今回の内容を頭に入れていただいて、玄関の土間の仕様を考えると、快適な家の実現につながるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

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