デッドストックが生まれない収納を考える
今日のテーマは収納です。デッドストックが生まれない収納を考えたいと思います。
お打ち合わせしたお客様から、こんなお話を聞きました。
その方のお母様は収納に食品も置かれていて、気付かないうちに傷んでしまって捨てるというのが度々あるそうなのですね。「あれってどうしたらうまく回避できますか?私たちがこれから建てる家で、上手な方法があれば教えてください」と相談を受けました。
これまでの動画でも似たようなことをお話ししていますが、おさらいの意味も含めて解説していきたいと思います。
▼片付く家と散らかる家の違いとは?
https://www.m-athome.co.jp/movie/kataduku_ie_chigai
▼片付く家の各論(キッチン編)
https://www.m-athome.co.jp/movie/katazuku_ie_kitchen
僕の板書を見てください。
デッドストックが生まれるか・生まれないかというのは、収納の広さとば別のところに理由があります。
みなさん収納量が欲しいとおっしゃいますよね。でも大きな収納を求めたが故に、起こる弊害というのが今回のデッドストック問題だと僕は考えています。
今日の話は台所周りのお話になるので、パントリーや食器棚とかを想定しながら話していきますね。収納の1つのユニットの考えに間口900mmというのがあります。家具でも80〜90cmというサイズは多いです。
間口が決まれば、あとは奥行きの種類を考えます。いろいろなタイプがあるかと思いますが、大きくわけて3つのパターンがあります。30cm・45cm・60cmです。
結論から言うと、奥行きが60cmの収納は使うのがかなり難しいと思っています。今回のテーマであるデッドストックも、ほとんどが奥行き60cmの収納で起きていると思っています。
以前、片付け上手な方のお家を見学させていただいたことがありました。そのお家は奥行きが30cm収納にA4のファイルボックスを使って、持ち物を種類ごとに分けて管理されていました。このA4ファイルボックスは普通のものです。ニトリさんとか無印良品さんで売られているものですね。ラベルを貼ったり、透明なものを使って中身が一目でわかるようにされていました。これをやるとデッドストックはかなり無くなります。
さらに「これもいい方法だなぁ」と思ったのが、トレーボックスの活用です。受け皿みたいな物を使って、それにレトルト食品や調味料を並べていました。こうすると、ものが出しやすいし、量の把握もしやすいからデッドストックが生まれにくくなりますよね。
これまでの収納を見ていると、多くの場合、奥行き30cmの収納はデッドストックが生まれにくい傾向があります。特に頻繁に使うものをしまうときは、今挙げたような方法が合っていると思います。
一方で大きめのお皿など、奥行き30cmでは足りない物もありますよね。そういった場合に奥行き45cmの収納を使うとします。このとき重い物を入れることもあると思います。例えばオリーブオイルの瓶とかトマトの水煮缶とかシーチキンの缶とかです。
僕は、ああいった重さがあるものも奥行き30cmの収納に置かれたら一番いいと思います。ただ、そうは言っても奥行き45cmの収納に入れないといけないときもあるはずです。そうしたときはワイヤーバスケットを使うのがおすすめです。これはモリシタのお客様で片付け上手な奥様から教えていただきました。取手が付いていたり、下げられたりするワイヤーバスケットだと尚いいそうです。ワイヤーバスケットだから、中に入れているものが見えますよね。先程のA4ファイルボックスと同じでデッドストックが生まれにくくなります。
最近はダイソーやセリアのような100円ショップに行くと、安くて便利なものがたくさんありますよね。(会社の女性スタッフが買ってきたものを見せてもらうと、いつも「こんな便利な物が100円で買えるの?」とびっくりします。)
ああいうお店にもワイヤーバスケットはありますので、収納の奥行きに近いもの探して、うまく活用していただけたらと思います。
ここまで奥行き30cm・45cmの収納について話をしたので、60cmの収納についてもお話ししておきますね。なぜ奥行き60cmの収納はおすすめできないかというと、奥行きが深すぎて使い勝手が悪いんです。図面上だと奥行き60cmの収納は“ちゃんとした収納”って感じがしますが、実際使ってみると、また印象が違います。
あまり使い勝手がよくないなぁというものに、ワイヤーバスケットをスライド版のようなものがあります。これは昔、高価格帯のシステムキッチン収納で、よく見かけました。これは重たい物を仕舞うのには不向きなんです。乾物・ラーメン・そうめんのように軽いのはいいかと思います。砂糖では少し重くて不向きかな、と思います。
重いものはそういう所に入れてしまうと、出すのが面倒になるので、しまいっぱなしになる傾向があります。引き出しも手前30cmくらいまでしか出せないので、奥側でデッドストックが生まれやすくなります。なので、よく使うものをしまうこと前提で、力に自信のない方は奥行き浅めを意識して収納していただくのがいいと思います。
あとキッチン周りで言うと、ホットプレートや電気鍋の置き場所って困りませんか?ダイニングテーブルの近い所にある方が便利なので、キッチンに置きたいけれど、常に置いてあるとスペースが取られて邪魔に感じる方が多いと思います。
電気鍋って大きいと40cm弱あります。奥行き45cmの収納なら、かろうじて入るとは思います。一方でホットプレートだと、もっと長さがあるので、奥行き45cmの収納では入らないかもしれません。今だと「メガホットプレート」というものもあるみたいですね。この前、家電屋さんに行ったら55cm×75cmくらいのホットプレートがあって「大きいな!」と驚きました。そういう物を置く時は奥行きが60cmある方がいいと思います。
それ以外に関しては奥行き45cmでいいと思います。例えば2リットルのペットボトルケースでも、23cm×27cm×33cmぐらいなので収納できます。350ml缶のビールケースも、28cm×12〜3cm×40〜41cmぐらいです。ということは、奥行き45cmであれば、いろいろなものが収納できるということです。
なので、収納を考えるときは奥行き45cmぐらいを1つの基準として考えていただくといいと思います。もしメガホットプレートみたいなのを使うのであれば、棚の一番上だけを奥行き60cmにするという手もあります。一番高いところにある収納はあまり使わないと思いますので。もしくはホットプレートって重いものなので、収納の一番下部分を奥行き60cmにするのもいいと思います。ペットボトルの水とかも下に置いていただくほうが取り出しやすいですね。
先程のホットプレートの収納で、ある程度の高さより上に置くのであれば、オーバーハングみたいにせり出す形でもいいと思います。使い勝手のいい収納ができて、かつデッドストックが生まれにくくなるはずです。
ムダにしないということは、収納を考えるということです。収納が大きすぎたが故にムダが生まれて、家計に関してマイナスになることもよくあります。「パントリーは容量が多い方がいいから大きくつくろう!」という考えの方が多いですが、収納って貯蔵すること以上に、貯蔵したものをうまく運用することが大事なんです。
上手にロスなく使っていくことが大事なので、そういったことも頭に置いていただいて収納の計画をしていただけたらと思います。今日の話は家づくりというより暮らし方に近い話でしたが、参考になれば幸いです。