断熱等級6の家とはどんな家なのか?
今回は断熱等級6について解説をします。
最近は断熱等級5や6といった言葉を耳にしますが、これには国交省が制定した省エネ性能の表示制度が関係しています。断熱等級という言葉からもわかる通り、これは断熱性能のランキングです。しかし、断熱性能という言葉だけでは具体的な情報が足りないと思います。国交省の定義によれば、冬には建物から外部に熱が逃げにくく、夏には外から熱が室内に入りにくい性能を指します。また、建物は太陽の影響を受けやすく、夏季には太陽の直射日光が家に当たります。これがどう家の中に侵入するかも、断熱性能の一部です。
国交省の定義に従えば、断熱性能は建物からの熱の逃げやすさを外皮の平均熱貫流率という指標で表します。簡単に言えば、屋根や壁から逃げる熱、窓から入る熱、床から地面に向かう熱を合計し、外皮の面積で割ったものがUA値と呼ばれています。冷房期における建物への日射熱の入りやすさは、夏の平均日射熱取得率として表され、これはηAC(イーターエーシー)値と呼ばれる指標で示されます。ηAC値は屋根・天井から入る日射熱、壁から入る日射熱、窓から入る日射率の合計を外皮全体の面積で割った数値です。
一般的には、家全体で言えば、屋根・天井から入ってくる熱が11%、壁から入ってくる熱が7%で、73%以上の熱が窓から入ると言われています。そのため、実質的には窓からの日射率が一番気にされています。地面の方にはわずかに3%しか熱が逃げないと言われているため、この基準・評価に基づいて断熱性能が評価されています。
断熱性能はこの2つの指標で表現できますが、一般的には条件が非常に悪い温室のような家でない限り、ηAC値よりもUA値が優先されて評価されると考えても大きく外れません。厳密には異なりますが、この考え方を基にしています。そして、表を見ていただきたいのですが、断熱等級は全国一律の評価ではなく、日本列島が非常に長いため、北海道から沖縄まで、本州内でも地域ごとに気候が異なり、また高度によっても気候が変わります。そのため、地理的に細かく1から8の地域に分けられています。
1・2は北海道の寒い地域を示し、1は特に寒い地域を指します。3は東北の寒い地域、4は東北以外の一般的な東北地域を表します。5・6は本州の一般的な地域で、関東や関西、中国地方、四国もこれに含まれます。7は九州の一般的な地域、8は沖縄や周辺の島を指します。それぞれの地域によって、断熱等級の基準が異なります。たとえば、断熱等級4の場合、1地域は0.46、5地域以西(九州など)は0.87であれば適合とされ、これが省エネ基準として新築の最低基準です。断熱等級5の場合、1地域は0.4、関東以西は0.6が誘導基準とされ、断熱等級6はこれらの国の推奨する基準よりもさらに高い性能を示す基準です。たとえば、北海道であれば0.28、関東以西の地域ではおよそ0.46となります。
断熱等級以外で一般的に使われている断熱の尺度として、HEAT20という会議体がG2グレードを提供していますが、これも国の推奨基準から一段階高い性能を示します。しかし、UA値が0.28の家のすごさは、数値を理解しているエキスパートやプロにしかわかりません。一般の人々には分かりにくいものです。具体的に説明すると、断熱等級6の家は、冬には暖房がうまく家の隅々まで行き届き、温度差が2〜3度程度になります。冷房期においても同様に、冷房がうまく作用し、温度差が少なくなるのが特徴です。
冬に足元が寒いのが嫌な人はいますよね。一方で、足元は寒いけれど暖房したら顔だけが暖かくなるという温度差は、女性だけでなく男性にも嫌われるものです。この温度差が非常に小さいのが断熱等級6の特徴で、一般的には1~2度程度と言われています。この程度の温度差ならほとんど感じず、センサーのない人以外にはほぼストレスになりません。また、窓際に座っていると窓から冷たい空気が降りてくることがあると思いますが、断熱等級6の家ではこのような現象が非常に少なくなります。冬季にはヒヤッとすることがなく、夏季には日射熱の影響を受けずに快適に過ごすことができます。これにより、夏季における熱中症の危険も軽減されます。断熱等級6の家では、夜間に寝ている間にヒヤッとすることがなく、日中には暖かく感じることができます。また、結露も非常に少なくなり、ほとんど問題になりません。完璧にゼロではありませんが、結露が発生することは稀です。このような状況が実現できるのが断熱等級6の世界です。
断熱等級6の上には断熱等級7が設定されており、これはHEAT20のG3と呼ばれ、さらに省エネで様々な制御が容易になります。ただし、私は断熱等級6の家が最も効率的で快適性が高いと考えています。建物の工法や断熱剤、工法の組み合わせを選び、6を目指すと、結果的に6よりも高い性能になることが多いです。つまり、6を目指すとコストパフォーマンスが高く、快適性が向上するということです。家づくりを考える際、まずは断熱等級5を目指すことが国の基準とされていますが、5に少しプラスすることで6に達成できます。その際、忘れてはいけないのが日射取得と気密性能です。日射取得は冬季に太陽の熱を取り入れることで快適性と省エネ性を向上させます。気密性能については、現在の断熱等級の中には基準が存在しないため、C1という基準で達成されることが一つの目安となります。
断熱等級6の家は万能ではない部分もありますが、温度差がほとんどなく、窓からの不快感や結露が起こりにくいといった暮らしの質を向上させる効果があります。この情報を頭に置きながら、ハウスメーカーや住宅用紙、公共団体などとの打ち合わせを行う際に、判断基準として考慮していただけると良いでしょう。