蓄電池を選ぶ基本知識とおひさまエコキュートとの相性
前回の動画で住宅用の蓄電池をそろそろ導入してもいいんじゃないかという話をさせてもらいました。その話を受けて、あるお客様から質問を受けました。そのことに答えていこうと思います。この話は前回と同じで、私の師匠の松尾先生が新建ハウジング新聞社さんの記事の中でおっしゃったコラムをベースに、私なりに解説します。
この前も「蓄電池は買いです」と興奮してガーッと喋ってしまいました。そもそも蓄電池ってどんなものかという話をもう一回復習します。太陽光発電はある一定数のキロ数を設置すると電気が余ります。余った電気はあまり高く買ってもらえないから、自分で使うのがいいということを私は強く言っています。余った分は安く買ってもらおうということになりますが、余った電気をそのまま蓄電しておいて夜に使えたら一番お得です。なので蓄電池はそういう意味で良いんです。
もし売ったらキロあたり16円です。でも夜に自家消費できたらキロあたり35円以上かかる電気を16円で使えることになります。蓄電池がある程度のコストで買えたらお得になります。そのことで蓄電池がいいよという話をしたり、その前には松尾先生も「蓄電池はまだまだ高いから自家消費するなら『おひさまエコキュート』を先に導入した方がいいよ」という話もしてきました。復習でもう一回解説します。
太陽光発電で自家消費をするときに「エコキュート」がお得でみんな使っています。ただし、エコキュートは深夜電力帯の夜11時から明け方7時ぐらいまでの深夜電力割引を使ってお湯を沸かしています。そうではなく、大体朝10時から夕方4時ぐらいの、一番発電している時間帯に沸かしたら一番得ということをやるためのタイムシフトをしているのが「おひさまエコキュート」です。エコキュートは夜間にお湯を沸かして朝には沸き上がっています。そのお湯をその日の夕方に使おうと思ったら12時間後ぐらいですよね。でもおひさまエコキュートは昼間にお湯を沸かすので16時〜17時でも沸いています。12時間先と2時間先、どちらがお湯が冷めにくいかは分かりますよね。なのでおひさまエコキュートは省エネになって電気代が削減でき、太陽光発電の自家消費比率をより高めるので素晴らしいと言われています。でも蓄電池が使えるんだったらおひさまエコキュートはなくていいんじゃないですか?という質問を受けたので、そのことについて回答します。
まず一般の4〜5人の家族の場合、年間を通じて家でテレビ・炊飯器・冷蔵庫などの家電も含めて、すべてのエネルギーを賄おうとする太陽光発電は大体6kWh、できれば7kWhぐらいあった方がいいと言われています。その6〜7kWhの太陽光の中で発電量が多いのは5月頃で、1日の時間で言ったら昼の12時ぐらいが一番よく発電しています。その時にどれぐらい太陽光発電で電気を作っているかというと、例えば7kWhの太陽光発電のパネルのセットだと1時間あたり5kWhぐらい発電するらしいです。結構しますよね。しかし、5kWhの太陽光発電をそのまま蓄電池に5kWh充電できるかというと、それはできません。それは蓄電池の電池自体に充電速度という抵抗のようなものがあるからです。
この表を見てください。数社並んでいますが、充電速度という項目があります。要は、電池が容量を度外視して1時間あたり最大何kWhの電気を充電できるかということを表したスペック表になります。これを見てもらうと、充電速度が0.63kWhから3.36kWhまであります。さっきの5kWhを思い出してください。充電速度が良いもので3kWhくらいなので、5から3を引いたら2kWhです。2kWhの発電している分が充電できていないんです。それでも使えなかった分は安く売らなきゃいけませんが、その時にエコキュートが動いてくれていたら良いですよね。エコキュートは冬場の寒い時が一番電気を使いますが、1時間当たり1.5kWhぐらいと言われています。冬以外は平均0.95kWhぐらいの電気しか要らないので、2kWhの余剰電気を冬場に1.5kWh分使ったら得ですよね。この前、7〜8kWhぐらいの太陽光発電と10kWhの蓄電池の組み合わせが一つのモデルケースだという話をしました。その時に、この充電速度が速い蓄電池を選んでおひさまエコキュートを使うと、二度おいしいということになります。なので蓄電池をローコストで買えたら、おひさまエコキュートと一緒に使うと相性が良いということを一つ覚えておいてください。
その上で蓄電池を導入検討すると、多くの人が失敗します。それはなぜかというと、基本的な知識がないからです。今日は失敗しないための基本知識も合わせて解説します。みなさん「これは何kWhの蓄電池なんですか?」「コストはいくらですか?」と、kWh当たりのコストに敏感に反応されます。この時に忘れてはいけないのは、同時に充電速度がどれぐらいなのかということです。コストが安くて容量が大きい蓄電池でも、充電速度が低いと全然利用するメリットが出にくい場合が多いです。だから、充電速度もチェックしてください。
次に重要なことは実効容量のチェックです。例えばカタログに10kWhと書かれてあっても、実際に使えるのは8〜9割ぐらいで、良いもので95%と言われています。つまり、同じ10kWhでもA社の10kWhとB社の10kWhでは実効容量が違うことがあります。だから、10kWhを買ったつもりが実際には8kWhしか使えないこともあり、本当のコスト感は実効容量で見なければいけません。そうしないと、間違った判断をしてしまう可能性があります。
さらに、蓄電池は電気を貯める部分が重要ですが、それ以外に重要なパーツもあります。それが蓄電池用のパワコンです。パワコンと電池のセットが蓄電池だと考えてください。このパワコンには「単機能タイプ」と「ハイブリッドタイプ」があります。単機能型は電池を充電するだけ、電池から放電して家庭用の分電盤に送るだけという片側通行しかできません。一方、ハイブリッドタイプは充電もでき、同時に両面通行で電池から家庭用の分電盤まで電気を供給することもできます。これは何が良いかというと、災害時に停電した時、太陽光発電を日中していても単機能型だと蓄電しかできないので使えないのです。それは嫌じゃないですか。だから、私はハイブリッド型を好みます。しかし、単機能型の方が安いので、そちらを選んでしまうことがあります。それは安物買いの銭失いになりやすいので、注意してください。
そしてもう一つ大事なチェック項目が、定格出力です。容量が大きくて大量の電気を貯められるということはカタログで見たら同じかもしれませんが、それは貯める容量を示しているだけです。蓄電池の使用には定格出力というものがあります。例えば先ほどの表を見るとS社は定格出力が2と書いてありますが、これは2kWということです。この2kWを、もし「8.4kWhの容量があるから」と選んだ場合、1000Wのドライヤーと1000Wのホットプレートを使ったら、それで終わりです。テレビを見たり冷蔵庫を動かしているときの電気は、電力会社から買わないといけません。「いやでもまだ蓄電池にたくさん溜まってるから、これを先に使ってよ」と思いませんか? そうなった時には、2kWでは頼りないんです。そこで松尾先生は「理想は定格出力4kW以上が使い勝手が良い」とおっしゃっています。1000W使えれば大丈夫という人は2kWでOKです。しかし、いざという時に「たくさんお金をかけてよかった」と私は思いたいので、定格出力もよくチェックしておいてください。カタログを見ると、1.5kWもあれば4.95kWもあります。基準がないので、失敗がないようによく確認してください。
それからもう一つ重要なこととして、蓄電池の様々なスペック以外に「特定負荷型」と「全負荷型」というシステム特性があります。負荷というのは、電気を使うことを指します。特定というのは、エリアが決まっているということです。例えばダイニングだけとかキッチンだけなど、限定された範囲でしか機能しないのが特定負荷型です。全負荷型は、家中の分電盤に送られる電気を、どの場所でもその容量内で使うことができます。災害時に「お父さん、蓄電池をつけてくれて素敵」と家族が言ったのに、部屋に行ったら電気が使えない、なんてことになったら全然ダメですよね。
最後に、今回松尾先生の記事ではなく、蓄電池を議論している動画を何本か見ましたが、大体「寿命は15年ぐらい」という論調が多かったです。しかし、今、価格破壊で台頭してきた業者はよく考えていて、顧客がより満足して購買できるように、超寿命型のものを選定していると思います。蓄電池に関しては、サイクル数で寿命を判断します。「何の単位?」と思いますよね。これは、蓄電池は充電して、貯めた電気を使い切るという0から100への充電と100から0への放電という一連の流れを1サイクルといいます。大体これが1日1サイクルです。これまでは3650サイクルが多かったので、365日で割ると10年です。だから10年の寿命というわけです。しかし、今は12000サイクルのものがあるんです。365日で割ると32.8年です。すごくないですか? 30年。私は前の動画で「20年で元が取れる」という話をしましたが、20年で元が取れるということは、30年間使ったらその10年間は丸儲けです。12000サイクルの蓄電池、欲しくなったでしょう?
このように基本知識を持った上で、価格が高いのか安いのかを考える必要があります。価格破壊を提案している業者さんは、シミュレーションをしっかりやってくれる傾向にあるので、そういった人たちを上手に活用してください。そして今日お伝えした、実効容量・充電速度・単機能型かハイブリッド型か・特定負荷型か全負荷型か・何サイクルの商品なのかを頭に置いて、購買判断をしていただくと、失敗は少なくなるかと思います。ぜひ参考にしてください。