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いまさら聞けないセルロースファイバーのメリット・デメリット

今回はセルロースファイバーについて解説します。

寒い・暑いというシーズンになると、家づくりを考えている人は断熱材について考えると思います。断熱材の中でもすごく人気のあるセルロースファイバーについて、先日「セルロースファイバーっていいんですか?」という質問を受けました。

セルロースファイバーは、断熱材の一種です。原料は新聞紙や古紙です。昨今は新聞の部数があまりないので原材料の入手が難しく、代わりに段ボールや木材を加工したチップなど、木質系のセルロースを含んだものを粉砕して、それにホウ酸という薬剤を混ぜて撹拌して作られています。そういうものを総称して、セルロースファイバーと呼んでいます。

これをポンプで吹き込んで、空間の中にぎゅうぎゅうに押し込める方法が、セルロースファイバーによる断熱工事です。こだわりの家づくりをする人には人気の方法です。

では、なぜ人気があるのかを解説していきます。

まずメリットです。セルロースファイバーは古新聞が原料と言いましたが、これは断熱性能が高いんです。高性能グラスウール並みで、熱伝導率で言うと0.038〜0.04W/mKぐらいです。

断熱の特性には、素材としての性能もありますが、施工的な側面もあります。いろんな隙間に入れていきますから、ミチミチに入る方が施工品質も上がります。こういうことも含めて、断熱性能が高くなります。職人さんの気分・力量に左右されずにちゃんと入る点が、最高にいいと言われています。

2つ目が、それ自体が木の繊維だから調湿性能があることです。湿気が多い時は空気中の湿気を吸い込んで、乾燥している時は自分が持っている湿気を吐き出します。ですから、壁体内結露には冬型結露・夏型結露がありますが、両方に強いです。湿気を保持する力があり、それをある程度保持しても事故が起きにくいです。内部結露耐性が高いと言えると思います。

3つ目に、防音性能が高いことです。粉々の紙で防音性能が高いと言っても信じられないかもしれませんが、アメリカでは空港近くの騒音がひどい地域の住宅は、セルロースファイバーを使えと指定されるぐらい、防音性能の実績があります。

4つ目に、防火性能が高いことです。紙なのに?木なのに?ダンボールなのに?と思うかもしれませんが、ホウ酸という薬剤は難燃性が高く、これを付加しているから燃えにくいのです。さらに、セルロースを粉々にして圧力をかけているので密実になり、断熱材の中に酸素が入りにくいことも要因の1つです。そして当然、燃えないので有毒ガスも出ません。

5つ目に、防虫・防カビ性能が高いことです。ホウ酸と言ったらゴキブリ団子です。あれはシロアリ・ゴキブリなどの昆虫がとても嫌がります。そしてカビも生えにくく、カビ耐性も高いと言われています。

一方で、デメリットもあります。

1つ目が、コストがかかることです。大体グラスウールの倍ぐらいです。業者さんや工法によっても差があるので一概には言えませんが、例えば16Kのグラスウールと比べると、倍ぐらいかかる印象です。

圧送して音が漏れないくらい密実に入れるから、材料費もかかり、ポンプでやるから手間もかかります。また、ポンプ車は軽車両に積んでやることが多いので専用の車両が必要です。パイプを通す手間や器具の償却費もかかるので高くなります。

また、グラスウール・パネル系のものは大工さんが貼ることが多いですが、これはセルロースの専門業者がやることが多いです。大工さんと合わせて専門業者も入るから、少し工期が余分にかかる点もあります。

そして、セルロースの一番のデメリットと言われるのが、沈下問題です。

例えば壁・屋根に圧送して入れる際に、セルロースはどれだけ密実に入れたとしても、一定の隙間があります。粉々になったセルロースの間には空気があるわけです。そして、セルロース自体に重さがあるから、これが沈んできた時に上側に隙間ができて、断熱欠損してしまいます。

初期セルロースの施工では、こういう問題がよくありました。なぜかというと、吹き込み方にばらつきやムラがあったからだそうです。

このムラを減らすために基準が設けられ、吹き込み密度が55kg/㎥以上とされています。ただ、職人さんの中には55kg/㎥以上にした方がいいという人もいます。

自沈したら嫌だからたくさん入れておきたいと思うかもしれませんが、入れすぎると返って悪さをする時もあります。密閉された空間だから、空気が逃げていかなければセルロースは入っていきません。

そういう時には、片面をガーゼのような空気が抜けるシートを使います。それは板みたいに強度があるわけではないので、思いっきり圧力をかけるとプクッと出る時があります。出てしまうと、その面に面材やボードを直接貼り付ける時に、貼り付かず、大工さんが板・壁を貼れないことになってしまいます。

それであれば、胴縁みたいなものを使って、膨らみが胴縁の厚みで収まるようにして、胴縁に壁を貼るようにするといい感じに収まります。

それから、これは欠点と言われるかわかりませんが、在外木造住宅みたいに壁厚が決まっていて、でも寒い所だからセルロースファイバーでもう少し性能を上げたいような場合もあると思います。しかしそのためには、壁の厚さを増す必要があります。それを在来工法みたいな形でやる時には、ちょっとやりにくいという側面があります。そういう時は付加断熱と言って、外側に断熱材・ボード系断熱材・グラスウールなどを張ることになります。

2×4や2×10などのように外壁の構造材の寸法が大きい時は、セルロースはすごくやりやすくていいので、デメリットと言うべきなのか建材の特性というべきなのかわかりませんが、そういう点があります。

ここで、セルロースファイバーのこぼれ話を紹介したいと思います。

まず、セルロースファイバーの防音性能は本当になかなかなものです。例えばセルロースで箱を作って、中に防犯ブザーを入れて、セルロースで蓋をすると、びっくりするぐらいピタッと音が止まります。厚み5cmぐらいのものでも音は聞こえなくなります。

また、以前北海道の友達の工務店に見学に行った時には、外はすごい吹雪でしたが、セルロースファイバーの家の中では吹雪の音が聞こえませんでした。ドアを開けたらゴーッと音がするのに、閉めたらシーンとするんです。セルロースの快適性を言う人は、この点をよく言います。

それから、私たちがよくやったのが、同じ壁にグラスウール・ロックウール・セルロース・発泡ウレタンなどの断熱材をつけて、意地悪くバーナーを当てることです。これはハウスメーカーもよくやります。

実際にこれをやった時は、グラスウールは時間が経つと、ガラスですから溶けます。溶けて穴が開いた感じになりますが、燃え上がりはしません。ロックウールは石の綿ですから、なかなか燃えません。セルロースは、表面が炭化して黒くなり、皮膜みたいになってそれ以上は火が進みませんでした。

一方で発泡ウレタンは、メーカーは燃え上がりませんとおっしゃるんですが、私が実験をした時は、チリチリと樹脂が溶けて、小さい火がついて、黒い煙が上がりました。

ですから、セルロースファイバーは安定感がある良い物だと言えると思います。

最近、あるお客さんから「セルロースナノファイバーってあるらしいですね、すごいセルロースファイバーなんですか?」という質問がありました。私はよくわからなくて調べたところ、木質性のバイオマス資源だそうです。木材などの植物繊維のある素材から主成分であるセルロースを取って、それをナノサイズに粉砕したもので作るバイオマス資源で、いろんなものに使えるそうです。軽くて強く、そして寸法安定性と言って、縮んだり曲がったりしくい性質があるそうです。

プラスチックに付加されたり、電子デバイスなどプリント基板みたいなもの、シートやフィルム、なんと食品・化粧品にも付加できるそうです。

木質バイオマス資源なので、今回のセルロースファイバーのような断熱材として使うものではありません。言葉がとても似ていますが、ちょっと毛色が違うものだと知ってもらえたらと思います。

ぜひ参考にしてください。

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