ベタ基礎は水害に弱い?
今日のテーマはベタ基礎です。
木造の建物でベタ基礎というのは主流ですが、とあるお客様から「これって水害に弱いんですか?」という質問を受けました。
このご質問ですが、どこかの住宅会社さんにこんな話をされたのかもしれません。
僕のスケッチを見ていただきたいのですが、ペタ基礎というのは底面がコンクリートになっているんですね。一方で布基礎というのはTの字型の基礎が連続で並んでいて、底面は一部土になっています。
なので、仮に水害が起きて基礎に水が流れ込んだとき「布基礎のほうが水が早く抜けて復旧が早いですよ。ベタ基礎だと水は抜けないので大変です」といった説明をされたのだと思います。
でも、僕からすると、この話は全く根拠のないものです。実際は逆です。
水害に関しては個人的に体験があって、浸水が起きた際、家の復旧作業も経験したことがありますので、そのことを踏まえて話をしていきたいと思います。
まず浸水に関しては2つ種類があります。
被害として一番深刻なのが床上浸水です。1階のフロアラインより超えてしまうものですね。これが起きると家の中に泥が入ったり、断熱材が繊維系だったら泥水が染み込むので壁をめくって修理する必要があります。
もう1つが床下浸水です。床上浸水よりも床下浸水のほうが、被害件数としては多いです。
で、ベタ基礎と布基礎の家とで、どちらが復旧早かったかというと、答えはベタ基礎の方になります。
ベタ基礎というのは、たしかに底面から水は抜けません。でも人海戦術で水を掻き出しやすいんですね。
布基礎の場合は水が入ったときに、土に染み込んでくれるから、こっちのほうが良さそうと思われるかもしれません。
確かに水は染み込みます。でも実際に床下浸水が発生した際、流れてくる水って蒸留水みたいにきれいなものではないですよね。流れてくるのは泥水です。しかも川の氾濫とか水路の氾濫になると、その泥水の中には藻とか虫とかも入っています。
となると布基礎の場合、浸水が起きたあと、土が見えている部分には藻などが堆積します。僕は潜ったことがあるので分かりますが、これを綺麗にするのはすごく大変です。モロモロした腐葉土みたいなやつがあると、より手間が掛かります。
こういったものは奥へ奥へ入っていくので、そのお家は、綺麗にするために、最後は床をめくって対処することになりました。
一方でベタ基礎の家だと、たしかに底面に水が溜まります。布基礎の比べて溜まる水の量も多いです。でもかなり溜まった水は水中ポンプで簡単に出せるんです。
水中ポンプであらかた出した後、5mm〜1cmぐらいの水が残ります。これはポンプで取り切れないので、人の手でやることになります。これはちりとりを使うと楽に取れます。
ちりとりですくって小さいバケツに入れて、バケツリレーで出してもらうんですね。ちりとりだと、底に溜まった泥も取りやすいんですよ。底面がコンクリートでカチカチなのでね。
そうやって水を掻き出して、ちりとりで泥も取って、雑巾やスポンジで綺麗にしたら、消毒をします。土を綺麗にする作業と比べたら、短時間で終わりました。
なのでね、水害に対して布基礎が強くてベタ基礎が弱いということは無いんです。
ただ布基礎だとしても、最近は防湿モルタルであったり、底面を覆ったりして一見ベタ基礎と変わらないような形で施工している会社さんもあります。これだと湿気が床に上がらないんですよね。
こういった形を取られているなら、布基礎もありだと思います。
特にハウスメーカーさんだと工業化住宅認定の関係で、布基礎になっているけど、ちゃんとパイル打ったり防湿モルタルを使うことで、きっちり対策取られていることも多いのでね。
なので、これから家を建てられる方は「布基礎やからダメ」と批判せず、ディテールを確認したうえで判断してください。
「ここは先祖代々の土地だから住まなアカン」という時でも、コストの関係で土を上げたり高基礎にできないケースもあると思います。
そうした場合「何十年かに1回は床下浸水で修復費用がかかるのは仕方ない」と割り切って、先程紹介した布基礎で凌ぐというのも1つの考え方だと思います。こうしたケースにはベタ基礎も有効ですので、知っておいてください。