オーニング(日よけ)のメリット・デメリット
今日のテーマはオーニングについてです。
オーニングというのは直訳すると日除け・雨よけになります。
昔、小売の八百屋さんとか果物屋さんに行くと、入口の上とかからテント生地みたいな屋根が出ていませんでしたか?あの屋根がオーニングです。直射日光が野菜に当たってしまうと、せっかくの商品が傷むじゃないですか。だから日よけをしていたんですね。朝、八百屋さんの前を通ると、おじさんが鎖を引っ張って準備していたのを見たことがある人もいるかもしれませんね。
オーニングは今も海外のカフェとかで、よく見ます。店の外にテーブルと椅子が並べてあって、その上をパラソルではなく、建物からビューンと出てるテント生地が覆っているというケースですね。
で、今回なぜオーニングについてお話しているかというと、ある方からご質問をいただいたんです。「オーニング興味あるんですけど、メリット・デメリットってどういうもの考えられますか?いいやり方があったら教えてください」と、ご質問をいただいたので、これを取り上げさせてもらいました。
まずはオーニングの種類について確認していきます。
先程オーニングというのは日除け・雨覆いという意味があると言いました。建築の業界では、オーニングというと巻き取り開閉ができるテントを指すことが多いです。
一番よく見るのは壁付けタイプ。これは最近すごくいいのが登場しました。折り畳みで格納できて、使うときはロールスクリーンみたいな感じでピューッと出せる。さっきお話しした八百屋のテントの進化版みたいな感じです。
2つ目がスライドタイプ。大掛かりな仕組みですが、洒落たカフェなんかでよく使われています。四角枠のやぐらを組んで、そこに2本のレールを這わしてテントを引っ張っていく。真冬なら陽が入って暖かいし、真夏は日差しをカットできるから涼しくなりますよね。スライドタイプは大掛かりなので結構値段が張りますが、実現したらすごくかっこいいです。
3つ目がスクリーンタイプ。1つ目に紹介した壁付けタイプにプラスアルファしたものですね。日本で言う簾に近いものです。コスト感で言うと2.5mぐらいの間口で150cmぐらい出るようなものなら市場価格は大体20〜30万円ぐらいになります。
ネットで探せば、もっと安いものがあるかもしれませんが、そういったものは大抵作りがちゃちなので、僕はあまりオススメしないです。
せっかく付けるのであれば20万強、できたら30〜40万ぐらいのしっかりしたスクリーンタイプを選ぶ方がいいと思います。予算と相談しながら検討してみてください。
ここからはオーニングを付けた時のメリットをお伝えします。まず1つ目が目隠し効果があることです。デッキって大体は南のいい所につくりますよね。でもすぐそばに道路があったら、外から丸見えになってしまいます。ここで例えばスクリーンタイプのオーニングを下げると、ある程度緩和することができます。
2つ目がエアコンが効率よく使えることです。夏の日差しをカットしたいとき、オーニングは、部屋の内側につけるカーテンやブラインドと比べて10倍ぐらい効果が高いと言われてます。
これは早稲田大学の先生が研究されていました。例えばオーニングなしの部屋でエアコンを使った場合の稼働率が100%とします。一方でオーニングを付けた家でエアコンを使うと、同じ涼しさを実現するのに稼働率は33%で済むそうです。約1/3ぐらいの省エネ稼働になるということが立証されてるとのことでした。
オーニングにはデメリットもあります。
1つは風に弱いということ。普通の風は大丈夫なのですが、台風の日に出てくるような風速10m/s以上の風のときは畳んでおいてください。
2つは紫外線劣化することです。オーニングは一般的にテント地が使われるので、カラフルであることが多いです。茶色とかグリーンとかオレンジとか。そういう色は紫外線で劣化して薄くなってしまいます。1年ほどなら大丈夫だと思いますが、2〜3年使うと場合によってはみすぼらしく見えるようなこともあるので、柄の選び方・色の選び方は気をつけてください。
3つ目は、目隠し効果の反対で視界を妨げることもあるかもしれません。あとは使い方を間違えると家のデザインが壊れてしまうこと。これは僕、最大のデメリットだと思います。せっかく考えた家の外観なのに「そこにそれ付ける?」みたいな家を時々見かけます。もしオーニングを付けたいのであれば、家づくりの最初の方でお伝えして、家と上手に融合するようなものを考えていただくのがいいです。そのほうが満足感が高くなります。
デメリットもお伝えした上で、僕が思うオーニング最大のメリットは、簡単に中間領域ができることになります。以前もフィリップ・ジョンソンのタウンハウスの動画で「中間領域」の話をしました。最近、僕は師匠の飯塚先生の受け売りで盛んに言っている言葉です。
豊かな住まいにおける空間の要素って、いろいろなものがありますが、名建築と言われてるものは中間領域の使い方が非常にうまいという話ですね。
このオーニングという簡単に出る庇(ひさし)があると、ハンドル1つで、建物の内側でもない外側でもない中間的な領域が簡単にできちゃうんですね。
オーニングというと「日よけだから夏のもの」というイメージが強いかもしれませんが、僕は秋もすごく活躍するものだと考えています。
昔は、暑さ寒さも彼岸までと言って、日本は9月20日ぐらいで夏の終わりが来てましたけど、ここ最近は9月20日過ぎても暑いですよね。しかも9月は真夏の頃より西日の角度が低くなります。真夏の頃よりも部屋に入ってくるんですね。このときオーニングを活用すれば、大きくカットしてくれるというメリットがあります。
それから秋にね、オーニングをうまく取り入れたウッドデッキでビールを飲むのって最高なんです。(完全に僕の趣味の話ですが)
夏の風物詩にビアガーデンがありますよね。でも、ビアガーデンって今の日本では暑くて暑くて、外で飲むよりエアコンの効いた部屋で冷たいビール飲むほうがおいしいという人もいます。なのでね、外で飲むとしたら秋の中頃とか終わり頃がいいんです。その頃になると、外では涼しい風が吹いてて、気持ちいいときが多いですからね。そうした日に、家のウッドデッキで飲むビールっておいしいんですよ。
みなさんそれぞれに予算があると思いますが、もし可能ならオーニングをうまく使ってほしいなと思います。中間領域が簡単にできますし、エアコンを効率よく使えるので、省エネで快適な暮らしに繋がりますのでね。
オーニングを知らなかったという人は、ぜひ頭に置いていただいて、これからの家づくりに活用していただけたらと思います。