暖かい家の基本中の基本「構造」を解説
今日は暖かい家を作るための基本となる、構造全体の話をします。
僕のスケッチを見てください。家の構造を描きました。
「暖かい家」というテーマは、これまでに何度も取り上げているので知っている方も多いと思いますが、もう一度解説したいと思います。
基礎があって、壁があって、窓があって、屋根があってという構成を建物の構造と呼びます。(今回は地震とか耐久性は、いったん置いています。暖かい家を作るための構造に絞った話なのでご了承ください。)
まず暖かい家の基本中の基本であり、筆頭に出るのが窓の性能です。
これまで出した動画の中で、たくさん見ていただいてるものに「何度も失敗して辿りついた最強の暖房器具」というのがあります。この動画では窓の強化の重要性というのを語っているんですね。
古い日本家屋の最大の弱点は、窓の性能になります。シングルガラス1枚とか、良くてペアガラスのアルミの枠、みたいなことが多いです。
でもこれからの家づくりで、暖かく過ごせる家を考えたら、窓ガラスは最低でもダブル、お金を掛けられるならトリプルにしてください。窓の枠は樹脂がいいです。結露しにくくて、断熱効果が高いので。絶対に窓の性能は一定以上にしてください。
窓のことに関しては別の動画でも解説してますので、よければ見てみてください。
2つ目にポイントとなるのが窓の配置。南に大きい窓を取ります。
家の地形の都合で難しいケースがあるかもしれませんが、なんとか知恵を絞って、南側の太陽の熱を大きい窓でしっかり取り込むことが重要だと思います。
太陽の熱ってタダですよね。冬の晴天時、太陽の熱を取り込むことができれば、それだけで充分に暖かく過ごせるはずです。
3つ目が家の断熱性能です。
家を建てる方なら「断熱性能をしっかりしてください」というのは言われると思います。このとき大切なのは屋根や天井の断熱です。
壁の断熱、外断熱とかW断熱というのは、みなさん、すごくこだわります。でも僕としては「それも大事だけど、もっと大事なのは屋根とか天井の断熱ですよ」と思っています。
例えばハウスメーカーさんでは、ZEHとかZEH+という性能をアピールしていることがあります。でも、これは外皮性能なのでUA値だけでの評価なんですね。
僕が思う断熱のポイントというか勘所というのは、屋根の断熱になります。
なぜ屋根断熱かと言うと、冬の一番寒い日というのが、晴天の朝だからです。雲ひとつない、青空がバーっと広がっているときが一番寒いんです。
その時に温度を計ると、だいたい氷点下とかが多いです。なぜかと言うと、天気がいいことは空に雲がないということになりますよね。
冬に発生する自然現象に放射冷却というものがあります。地球の表面の温度を宇宙に向かって抜こうとする現象です。
温度というのは宇宙空間が一番低いんです。絶対零度になっています。地球を取り囲む宇宙空間というのは、ものすごく寒いです。雲がある日は、表面の温度が宇宙に抜けないよう、雲がダウンジャケットのように守ってくれます。一方、晴天の日だと守ってくれるものがなくなります。
家も地表の小さな凸凹の一部と考えたとき、家に人間が住んでいるから暖房をしていますよね。でもせっかく温めた熱を屋根から奪っていこうとする働きがあるので、屋根断熱が重要です。
屋根の断熱は一般的に、グラスウール換算で10cmぐらいですが、僕は倍の20cmでした方がいいと思います。屋根とか天井の断熱が、壁のアベレージより2倍ぐらい強力になってないとバランスが悪いです。
「外皮性能がいい」と言っても、屋根の断熱が壁と同じだったら夏は2階が暑くなると思いますし、冬場は家全体が寒くなるはずです。
4つ目は気密になります。
断熱性能・省エネ性能は、家の屋根とか壁のような外皮の性能の優劣だけで評価しがちです。でも気密が悪いと、せっかくの外皮性能が意味のないものになってしまいます。
特に今のお家には24時間換気が義務付けられてますよね。この換気に関しても気密がしっかり取れていなければ充分に効かないです。
例えばストローの表面に穴が空いていたら、飲み物は吸えないです。家も同じで隙間があると空気が引っ張れないです。なので気密を意識してほしいです。
ちなみにC値に関しては、よく「1以下がいい」と言いますが、最近のHEAT20で奨励してるのは「C値=0.9以下」になります。気密に関して、さらにコストを掛けれるのであれば0.7以下にはした方がいいです。0.9でもいいのですが、長く住んでいると性能が2〜3割落ちる可能性があるんですね。なので将来の事を考えて0.7以下にしておくと、なお良いよねということを言っています。
5つ目は暖房の方法です。
効率よく使う、家を上手に暖めるという意味では、暖房は下から上にする方がいいです。1階を暖房すれば、階段とか吹き抜けなどを通して、暖気は上へ上へとあがっていきます。下で暖めた空気が無駄にならないです。
また、人間が一番快適なのは頭寒足熱と言って、足元が暖かくて上の方は温度が低い状態になります。頭がボーッとせず気持ちよく暮らせるんですね。この点から見ても、下から暖めるのが理屈に合っています。
最後のポイントが温度差になります。これは上下空間や水平空間のつながりがカギとなります。
リビングはすごく暖かいけど廊下は寒い、脱衣場は寒い、トイレは寒いというのはNGです。
リビングが暖かければ暖かいほど、メインベッドルームが暖かいほど、その場所から廊下やトイレに移動したとき、温度差でウッとなりますよね。ヒートショックを起こしてしまいます。
そのためにはできるだけ、暖かい家を考えたら、上下の空間の繋がりとか下で暖めたものを上で共有すること、それから水平空間の繋がりも意識して、温度差をなくしていってください。
吹き抜けをつくったり、建具の下をアンダーカットして換気扇をつければ、リビングで暖めた空気が脱衣場に流れるようにするとか、トイレや廊下にも流れ込むようにすることができると思います。
例えばトイレには換気扇が付いてますよね。トイレの換気扇を回したら、必然的に暖気もトイレに入ってきます。また脱衣場はリビングに隣接することが多いので、脱衣場の上の方にファンを付けておくといいです。ガラリだけでもいいかもしれません。
リビングの暖かい空気は上の方にある可能性が高いです。それが脱衣場に供給されれば、脱衣場は特別暖房してないんやけど、エアコンがつくった暖気を共有することが可能になります。
このように下から暖める暖房方法を活用しながら、上下空間・水平空間の繋がりを工夫すると、温度差が少なくて家中まるごと暖かい家というのができます。これが暖かい家を実現する基本的な構造になります。
性能とか、いろいろ気になることはあると思いますが、まずは今回解説した家の造りを抑えてください。でないと中途半端な性能になって、住み始めてから残念な結果が出るということが、経験上よくあります。ぜひ参考にしていただいて、暖かい家づくりに役立てていただければと思います。