暖かい家の基本中の基本「気流止め」を解説
今日のテーマは暖かい家づくりの基本となる「気流止め」です。
以前も動画で話したことありますが、改めて解説してもいいかなと思いましたので、喋らせていただきます。
なぜ、また「気流止め」について喋ろうと思ったかと言うと、若いお客様から「昔からちゃんとやってきているような家でないといけないんでしょうか?と」質問を受けたんですね。
もしかすると、お父さんとかから「きっちり修行した大工さんがつくる家でないといけない」というようなことを言われたのかもしれません。
ここで言うきっちり修行した大工さんというのは、墨付け・手刻みで、かつ、ちゃんとした木材を使っていたり、立派な入母屋の家が建てられる大工さんを指していると思います。
僕の田舎でも、こういった大工さんは「いい大工さん」と言われていました。僕のおじいちゃんもそういう人だったので、腕の良さとか、つくられた家の良さというのは良く分かります。
でもですね、時代が変わって、人が家に求めるものも変わってきたので、昔ながらの家づくりにも変えていったほうがいいと思うところがあります。僕はその1つが「気流止め」かなと考えています。
乱暴な伝え方ですが、昔ながらの家の特徴って僕は3つあると思っています。
1つが基礎が布基礎であること。T字型のものを柱通りとか耐力壁のところに作るものですね。
2つ目が根太(ねだ)です。
木造建物では大引きとか土台みたいなものがあって、その上にある程度の大きさの根太を引き、その上に床材を張るというのが、昔ながらの工法としてあります。
古い家で床がブカブカするというのは、根太が折れたりしたときに起きる現象なんですね。立派な家は立派な根太を使うけど、安いお家は小さい根太使うから折れるんや、というようなことがありました。
3つ目が屋根の小屋組の組み方です和組(わぐみ)とか筏組(いかだぐみ)という工法があります。昔ながらの母屋があって屋根垂木があって野地板がある、みたいな組み方ですね。
これらが昔ながらの特徴で、かつ、僕が今の時代からすると改めた方がいいんじゃないかなと思う部分になります。
僕のスケッチを見てください。
T字型をしているのが布基礎ですね。
家の造りとしては大引きとか土台があって、この間を通ってる大引きとかの上に根太があります。
今は根太と根太の間に断熱材を組み込んで上に床板を張るという形をとるのですが、これが災いを生みやすいんですね。
根太って大きな土台の上に交差して乗るので、乗っかっている箇所に隙間ができやすいんです。
隙間には断熱材を入れるんですが、断熱材は繊維系のものとかも多いです。スポンジみたいなものなので断熱性能はあるけど空気が通ります。
床下を乾かしておかないといけないので、外から空気入れていくんですが、この空気が隙間を通って、壁の中とか外壁とか間仕切りの上に上がろうあがろうとするんです。これが良くないんですね。
隙間風の外の冷たい風が上がってくるので、家は全然暖かくならないんです。
家に住んでる人からすると、冬は寒いからストーブとかをガンガン焚いたりしますよね。でもガンガン焚いている状態で、壁の中に冷たい空気が通ったら結露が起こります。これは壁体内結露と呼ばれています。
なので昔ながらの方法だと、部屋が温まりにくいという問題もさることながら、それ以上に見えへんところで結露が起きて、立派な大工さんが良い木使ってくれたのに、見えないところでそれが腐っていくということが起こるんですね。
もう1つ問題があります。2階の天井を組むとき、天井際とか間仕切りというのは一番タチ悪いものになります。
部屋と部屋の間の間仕切りの上って、断熱材がきちんと入ってないことがあるんです。
そうすると煙突みたいになって空気が通り放題になるので、ますます部屋は暖まらないです。しかも暖房していたり家族みんなで寝てる場所であれば、結露を起こす可能性は高くなります。
気流止めというのは、この冷たい空気がを上がらないようにすることです。簡単に言うと木を打ったりテープを打ったりして、栓をするわけですね。
ツーバイフォーであればファイヤーストップと言うものがついていますが、木造の家はこれが無いです。
またファイヤーストップをするにしても、筋交いとかいろんな取り合いがあったり、吊り木とか桟木を受けながらになるので、手間をかけないと、きちんとした気流止めにはなりにくいです。
不可能ではないですが、頑固な昔ながらの職人さんだと、こういうことをやらない可能性がありますし、やる意味があまり分かっていないケースもあると思います。
あと現場の立場で言うと、ここの気流止めは結構手間がかかってやりにくいし、一生懸命作業しても、うっかりが起きやすいんです。
なので僕は布基礎・根太・和小屋組に対して、こんな方法をおすすめします。(ただしモリシタの独断です。)
まず基礎はベタ基礎にします。根太に関しては、根太レスと言いまして24mmぐらいの分厚い構造用合板をベタッと引いてください。そうすれば根太入れなくても床がグニャグニャたわんだりせずに済みます。
和小屋組については、和小屋でもいいんですが、断熱を天井断熱じゃなくて屋根断熱にしてください。コストは少し上がりますが、僕は今のところ、これが一番いいかなと思います。
ここの根太に対して根太レスの分厚い床板を張ったら、隙間がなくなるので、そもそも冷たい空気が上がらなくなります。細かく加工しなくていいしペタッと押さえるだけなので施工もしやすいです。
何よりもベタ基礎は床下からの冷気が上がりにくいです。基礎断熱にしておけば外からの冷気が家の中に入らなくなるので、冷たい空気も上がりようがないですよね。
屋根断熱と根太レスでやると、結露するための条件がそろわなくなります。なので部屋の中で、どれだけ水蒸気が出たとしても、結露しません。気流止めもないし気密ラインもないということは、水蒸気が入ると悪さをします。
一方で、現代の家は気密ラインが揃いやすくて、施工も簡単です。壁の中や間仕切りの中に隙間風も入らないし、湿気が壁の中に入って壁体内結露を起こしたりする可能性も少なくなります。
なので、暖かい家がほしいと思ったら、昔ながらの家のいいところは取り入れつつ、今の時代にあまり合わない部分は今回解説した方法でカバーをしてください。
構造的に気流止めが簡単に、しっかりできるようにしてもらうと暖かい家ができます。
これは超基本中の基本なので、勉強されている方からすると「またその話?」とか「当たり前すぎるよ」って思われたかもしれません。
でも、とってもとっても大事なことなので、ぜひこれから家づくり始める人は頭に置いていただいて「自分の家はどうなってるかな?」と意識していただけたらと思います。