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500回記念:家づくりと暮らしを振り返って

今回の動画で、ついに500回記念を迎えることとなりました!これまで家づくりや暮らしに関する内容を、一人喋りで配信してきましたが、こうして節目となる500回目を迎えられたのも、視聴してくださるみなさんのおかげです。本当にありがとうございます。このタイミングで、これまで話してきたことや、これからのことについて少しお話ししたいと思います。いつものようなHow-to動画ではありませんので、お時間のある方だけ、どうぞ気楽にご覧ください。

動画配信を始めたのは、2020年2月8日でした。そして、今日の撮影日が2024年12月13日。実に4年10か月をかけて500本の動画をアップすることができました。もし初期の頃からご覧いただいている方がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます。懲りずにお付き合いいただき、心から感謝しています。

2020年は、忘れることのできない年でした。1月頃からコロナウイルスが流行し始め、4月には緊急事態宣言が発令され、社会全体が不安に包まれる未曾有の状況でした。そのような中で、この動画配信をスタートしました。当時は「私の動画なんて誰が見るんだろう」と思いながらも、自分の考えや持論を発信し、会社のホームページを少しでも賑やかにできればという気持ちで始めたのを覚えています。

そんな中、転機となったのが2020年10月2日に公開した「流行りだけど危ない間取り」という動画でした。この動画では、「1階の上に2階の柱がないと問題が生じる」「広いリビングを取る設計がいかに危険か」といったテーマを取り上げました。当時、広いリビングを求める施主の方が多く、それをそのまま実行してしまう設計者や業者が増えていました。この問題を指摘した動画が大きな反響を呼び、再生回数が一気に伸びたのです。それまでの日々は正直、手応えがあまりなく、「砂を噛むような日々」でしたが、この動画をきっかけに、「私の意見が少しでも役に立てたんだ」と実感しました。視聴者の皆さんからいただいたコメントの一つひとつが、とても励みになったことを、今でも鮮明に覚えています。

さらに翌年、2021年1月には「何度も失敗してたどり着いた最強の暖房器具」という動画を配信しました。このタイトルを見て、「どんなストーブやエアコンを紹介するのだろう?」と思われた方も多かったと思います。しかし、実際にお伝えしたかったのは、最も重要なのは「暖房器具」ではなく「窓」であるということです。窓が家の断熱性能や暖かさを担保する非常に重要な要素であることを啓蒙したくて取り上げた内容でした。

この動画には、私と母とのエピソードも交えています。当時、母は「二重窓なんて面倒だから嫌だ」と大反対していました。それでも私が強行突破で設置したところ、翌朝、母が「こんなに暖かいならもっと早く付けてほしかった」と感激してくれました。この実話が多くの視聴者の共感を呼び、現在最も多く再生されている動画となっています。さらに、この動画をきっかけに登録者数が1万人を超え、薬剤師さんから「森下さんの動画見てますよ」と声をかけられるなど、夢のような出来事も経験しました。この時、「自己満足でやっているだけだ」と思っていた活動が、「人の役に立てるならもっと頑張ってみよう」という大きな励みになりました。

私の配信活動の中で、大きな節目となるエポック的な動画が2本あります。その中でも、特に私の仕事上の使命を自覚させられたのが「ヒートショックについてどうしても知っておいてほしいこと」という動画です。この話は少し個人的な内容ですが、今日、12月13日は私の父の命日です。今年で34回目になります。

父が倒れたのは1989年12月8日、偶然にも母の50歳の誕生日でした。その後、集中治療を受けながらも13日に亡くなりました。突然の出来事に家族全員が動揺し、当時28歳だった私も、母とともに途方に暮れました。父は大黒柱であり、工務店の社長でもありました。死因はくも膜下出血でしたが、引き金となったのは「ヒートショック」でした。

父は冬でもあまり暖かくない家で暮らしており、真冬でも薄着でお酒を飲んで寝ることがありました。倒れた晩も暖まりながら寝ていましたが、明け方、寒い廊下を通り、外気と変わらないほど冷えたトイレに行った時、急激な温度差で血圧が大きく上昇し、くも膜下出血を引き起こしたのです。この出来事を振り返るたび、「あのとき、防ぐことはできなかったのか」という思いが湧き上がります。この経験が、私が建築家として「暖かい家の重要性」を全力で伝えるきっかけになりました。

また、2020年12月には「寒さ一発改善!サクッとできる窓の断熱強化法」という動画も配信しました。この動画では、建築工事を伴わない簡単なDIYとして、プラダンを活用した断熱方法を紹介しました。多くの方から「祖父母の家で試したらとても喜んでもらえた」といった声をいただき、地元の新聞社からも取材を受けるなど、大きな反響がありました。このように、視聴者の皆さんから寄せられる声に背中を押されながら、配信を続けてきました。

私が家づくりを通じて最も伝えたいのは、「暖かい家づくりがいかに人の命や健康を守るか」ということです。寒暖差を放置することは、命に関わるリスクを高めます。「家にお金をかけたくない」という気持ちも理解できますが、これは単なる贅沢ではありません。健康や命に直結する、いわば未来への投資です。そしてその投資は、自分自身のためだけでなく、子どもや孫など家族全体のためにもなるのです。寒さ対策や住環境の改善がもたらす重要性を、これからも多くの方に伝え、少しでも快適で安全な暮らしを実現していただけるよう発信を続けていきたいと思っています。

例えば、「兵庫県は全国でヒートショックの発生がワースト2位」というデータがあります。その背景もあり、私は「冬が来るまでに考えたいシリーズ」で特にリフォームや建築工事を伴わない改善ポイントについて訴えました。「せめてトイレにヒーターを付けてほしい」「脱衣場には必ず暖房を設置してほしい」といったシンプルな提案です。電気代が多少かかるとしても、これだけで命を守れる可能性があります。命に関わる問題だからこそ、私は何度でもこれを訴えたいと思うのです。

私は生まれたときから建築の仕事が身近にあり、大学卒業後もずっとこの業界に携わってきました。その中で、「私たちの仕事には、単に家を建てる以上の深い意味がある」と感じるようになりました。家は単なる居住空間ではなく、人の命や生活の質に直接関わるものです。この思いを胸に、これからも家づくりに向き合っていきたいと思います。

もう一つ、私にとってエポックとなる動画があります。それが2020年11月に公開した「巨匠が作った究極の平屋を解説」という動画です。この動画では、世界三大建築家の一人、ル・コルビュジエが自身の両親のために設計した平屋について紹介しました。この家はスイスのレマン湖のほとりに建つ小さな平屋で、現在は世界遺産に登録されています。建築界では非常に有名な建物ですが、その真の価値や設計意図を深く理解している人は少ないと感じ、この動画で解説しました。

私がこの動画で伝えたかったのは、「よく考えられた家が人生にどれほど大きな影響を与えるか」ということです。コルビュジエの母親は100歳まで生きられ、その間、亡くなる数日前まで身の回りのことをご自身でこなしていたそうです。この家の間取りや設計の工夫が、彼女の自立した生活を支えたのだと思います。家事が楽にこなせ、自分のことを自分で完結できる設計が、その長寿と快適な暮らしを可能にしたのです。

実は、この家については大学時代の友人から教えてもらいました。友人とのやり取りを通じて、「もっと現実の家づくりでこうした設計思想を実現しなければならない」と改めて気づかされました。この経験が、私が家づくりのあり方を見つめ直すきっかけとなったのです。

この巨匠の平屋を紹介した動画をきっかけに、もう一つの重要なテーマが浮かび上がりました。それが「中間領域」です。中間領域とは、内と外の間にある曖昧な空間を指します。日本の伝統的な家屋に見られる縁側や軒先などがその代表例です。この曖昧さが、人間らしい生活と深く結びついていると私は考えています。このテーマについては、2021年8月に改めて動画でお話ししました。私が尊敬する建築の師匠である松尾先生と飯塚先生のお二人からも、この考えの大切さを教わりました。松尾先生からはヒートショックや断熱の重要性を、飯塚先生からは「暮らしを豊かにする空間設計」について学びました。この経験を通じて、テクニカルな要素だけでなく、「人間らしさ」を大切にした家づくりの重要性を強く感じました。

私は動画を通じて、家づくりに関するHow-toや技術的な話だけでなく、家そのものが人の暮らしにどのような影響を与えるかを伝えたいと思っています。設計やリフォームの具体的な方法だけでなく、家を通じて得られる「豊かさ」や「安心感」についても発信し、少しでも多くの方の役に立てればと考えています。これまでお話しした内容が、視聴者の方々の暮らしのヒントになれば嬉しいですし、これからも家づくりの本質に触れる話を続けていきたいと思います。

2021年頃から、YouTubeを通じて建築を学ぶ人が増えていることを実感しています。私の師匠である松尾先生は、その先駆けとして貴重な動画を数多く配信し、多くの人に建築の価値を伝えられました。私もその影響を受け、家づくりに関する注意点や提案を発信し続けています。

その中で特に感じたのは、家づくりを考える際に「子育て」や「家族の安全」といったソフト面、つまりマインドセットも重要だということです。これまでの動画では、「安心して子どもを育てるための家づくり」や、「家づくりを損得だけで考えない人生の優先順位」といったテーマについても触れてきました。また、関東圏では一人暮らしの世帯が6割を超える現状を踏まえ、「一人で住む家」という新しいカテゴリーについても考えています。

さらに、ウッドショックによる建築費用の高騰が家づくりを諦める要因とならないよう、「家が必要な理由」や「コンパクトな家づくりの工夫」についてもお話ししてきました。また、ここ数年で注目されるようになった空き家問題にも目を向けています。石材業の友人から「今はお墓を作るよりも、墓仕舞いの仕事が多い」という話を聞いたとき、建築業においても「家をしまう」ことがこれからの重要なテーマになると感じました。

特に、中古住宅を購入してリノベーションする若い世代が増えています。これは非常に賢い選択だと思いますが、その際には建築のプロからのアドバイスが役立つと感じています。また、60代の方々が「最後のリフォーム」を考える機会も増えてきました。このタイミングでリノベーションという概念を正しく理解し、進めることの重要性を伝えていきたいと思います。

これまで500本の動画を通じて、家づくりや暮らしに関する多様なテーマをお話ししてきました。視聴者の皆さんに心から感謝しています。この記念すべき節目を機に、これからの方向性についても少しお話しさせてください。

これからも新築やリノベーションの話題を続けつつ、空き家問題などにどう向き合うべきか、またそれをプラスに変える方法を考えていきたいと思います。建築家として、単に新しい家を作るだけでなく、「しまう」ことも使命の一つとして捉え、発信を続ける決意です。住まいや暮らしは、人生の基盤そのものだと私は考えています。今後も工務店の親父としてのつたない話ではありますが、皆さんの暮らしに少しでも役立つ情報をお届けしたいと思います。

今回の動画が500本目ということで、これまでご覧いただいた皆さんへの感謝の気持ちを改めてお伝えします。

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