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30年後に味が出る家とみすぼらしくなる家の違い

今日は、30年後に味が出る家とみずぼらしくなる家の違いについて話したいとおもいます。

これは先日お客様からいただいた質問になります。
「森下さん、家建てて20〜30年経った時に『この家味があっていいなぁ』と思う家とそうじゃない家ってありますよね?あれって一体何がポイントなんですかね?」と。
核心を突く質問だなと思いましたので、自分なりに考えてみました。

いろいろな考え方があると思いますが、今回カギとなるのは「味」というものは何なのかということと、流行り廃りの2つだと思います。

僕のスケッチを見てください。

味のある家というのは、なんだかんだ言ってもデザインが関わっていますよね。
これまで僕は、美しい立面の建物を作ることより、構造とかがしっかりした快適な家を作ることのほうに重きを置いていました。

でも、長く住むことを考えると、飽きのこないデザインだとか、味わい深いところがないとダメだなと個人的に反省しています。なので冒頭に出てきたお客様から質問をいただいたとき、すごく大切なことを問われているなと感じました。

やはりデザインの賞味期限という問題は、味のある家を建てるうえで、大きな影響があると思います。

「この家が悪い」ということではありませんが、例えば昔はこういう家がありました。
1つが屋根にドーマーとかいろいろな装飾をつけた家。それから家の壁面途中にボーダーを入れたりとか、コーナーストーンと言って装飾の石を置くこともありました。

コーナーストーンは、素材が石なら良いんですが、表面にそれらしい柄のプラスチックを貼ったみたいなものもありました。

お客様から「これ憧れなんです」とリクエストされてすることが多かったので、僕たちも「いいですね!」とやってきたことがありますが、賞味期限が早かったです。

家が完成してから1〜2年は、かっこいいなと思うのですが、正直言って5〜6年もすると「ひと昔前の家やな」となっていました。
僕の師匠の飯塚先生とか松尾先生も「ないですね」と言われます。

一方で例えば切妻の家で窓を1つに統合してやるデザインがあります。「モノアイ」とか「シンメトリー」と言って、普遍的なデザインというのがあります。

これらはル・コルビジェのような巨匠が「普遍デザインとは何か?」って研究されて、出てきたものですね。ミース・ファン・デル・ローエとか、いろんなものがあります。

これから家づくりされるみなさんは、かっこいい家を希望されていると思います。でもデザインには、“今”かっこいいというものがあるんですね。そうするとすごく短期的な視点になってしまう可能性があるので、ここはよく吟味された方がいいなあと思います。

僕のように、この業界に30〜40年いる身からすると、絶対にその時々に流行りというのがあるんですね。

例えば友達と街を歩いていたり、あるいは旅行先で散歩しているときに、そこにある家を見ると「この家は30年ぐらい前の家やなぁ」と分かります。違う業界で働いている人からすると不思議に見えるそうですが、僕ら工務店のオヤジはみんな分かると思いますね。

デザインには流行り廃りがあるので、「いま流行りだから」「今カッコいいと言われているかた」という理由だけで選んでしまうと、後々チープになってしまうかもしれないので気を付けてください。

味のある家で、もう1つ大切なのが素材です。特に自然素材の持つ力ですね。
これは最近すごく見直されていて、木張りの家や焼杉の家など、昔なら和風建築で使われていたものを好んで使う設計士の先生や工務店が結構増えてきました。

ちなみに耐久性のある素材という視点でいくと、タイル貼りの家なども出てきます。でもタイル自体にデザインの流行り廃りがあったりするんですね。なのでタイルの耐久年数は長くても、デザインの賞味期限はわりと早い段階で切れちゃうというケースもあります。

一方で木張りの家とかは、30年経つと、たしかに古くはなりますが、 “味がある”と表現したくなるような見た目になります。

例えば法隆寺を見たときに「かっこ悪い」と言う人っていないですよね。何百年、何千年の歴史がありますがかっこいい建物です。

なぜそうなるかというと、法隆寺には完成された普遍的なデザインと素材の持ってる力が合わさっているからなんですね。国宝なので定期的に改修している点もあると思いますが、この2つの力が大きいはずです。

あとは塗りも大切ですね。左官屋さんが廃れて、サイディングが流行りましたが、やっぱり塗りの家の方が時間が経った時に味が出ます。

金属も似ていますね。ブリキと言って揶揄した時代もありましたが、今は鉄板を張ってる方が、多少腐食したりすることも含めて味わい深いと感じる人が増えています。

昔の家には銅葺きの屋根がありました。ピカピカ光った銅を使うんですが、すぐにサビて緑色になるんです。でもそれが、すごいかっこいいんですね。

なので、いい素材を選ぶとデザイン面での賞味期限は伸びるし、家の味は深まります。これは事実だと思います。

一般的に、サイディングや樹脂を活用した家は、ある程度時期が経てば、一定のお金をかけて手入れしていく必要があります。これを怠って放置してしまうと、みすぼらしい感じが出てしまうんですね。

この話を踏まえて、素材というテーマで僕がもう1つ大事だなと思っているのが「植物」です。

昔、大阪かどこかで同じような建売が並んでいる街にいきました。その時、庭が荒れている家と、定期的に手入れされている庭がある家を見たんですね。

手入れといっても、すごくキッチリしているわけではありません。時々落ち葉を掃除したりとかです。でも、庭が荒れている家と比べて、味わいがまったく違いました。

「子育てで忙しい」「共働きで忙しいのに、木なんか植えたらそんなん大変や」という人は多いと思います。

でも、たった1本の木でも、家に寄り添うだけで、その家の味は変わると思います。時々、落ち葉をちゃんと掃除したりすれば、年を重ねるたびに、味が出て豊かな空間になっていくはずです。

手入れの面倒くささとかは確かにありますが、一方で得られるものも大きいと思います。ですから、こういったことを知っていただくと何十年と経ったとき、家の違いに差が出てくるなと思いました。

今回の内容は見る人にとっては当たり前の話だったかもしれません。でも、中には今流行りのデザインで建ててほしいという方もいらっしゃると思います。あるいは、いい素材を使いたいけど価格が高くなりすぎるから躊躇されている方や、植栽植えたら手入れが面倒だという方など、いろいろな人がいるはずです。

これはみなさんに知っていただきたいのですが、僕から言わせてもらうと、何もかもを完璧に満たす家というのはありません。必ずトレードオフです。

何かを捨てて何かを得るというのが家づくりですから、僕は時間が経った時に「やっぱりうちの家ええな」って思えるように、進めてもらうのが、一番大切なのではないかなと考えています。

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