24時間連続冷房は得なのか?損なのか?
今日は夏場にエアコンをつけっぱなしにするのと、ON・OFFするの、どちらが得かに関して解説をしたいと思います。
ここ2年ぐらい、エアコンというのは実はつけっぱなしの方が省エネで、かつ光熱費も安く済むというような内容のブログや動画が増えました。そのなかでも個人的にきっちりした動画だなぁと思ったものがあります。エアコンのトップ企業、ダイキン工業さんが発信しているものです。
どんなことを発信されているか、概略を軽く説明します。まず前提があって、マンションの2部屋、大体14畳ぐらいでの実験になります。外が36℃ぐらいで、室内温度を26℃設定にしてエアコンをつけっぱなしにするのと、30分ごとにON・OFFという2パターンで実験しています。
イメージにすると板書のようになります。エアコンはスイッチを入れると、グンと電気代がかかります。そこから一定の温度までグーンと冷やしていって、部屋が涼しくなると稼働が収まって弱い電気代で運転が続いていく、という構図になります。
一方でこまめにON・OFFというのはグラフにするとポンと上がってポンと下がって、少し横ばいになったらエアコンをOFFにして、またしばらくするとさっきのサイクルを繰り返すことになります。となると、グラフに書き込んだ緑の斜線部分、この面積が電気代になります。
この2つを比較すると、意外とつけっぱなしのほうが面積は小さいです。こまめにON・OFFしているほうは山が何回も来るだけに、合算したら面積が大きくなります。これが、ダイキンさんの動画のポイント1です。
ポイント2は、エアコンを稼働する時間帯によって消費電力に少しばらつきがあるということです。
9時〜18時 と18時〜23時ぐらいまでの時間帯で実験をされています。縦軸が累積の消費電力、横軸を時刻にしてグラフを書いてみました。
9時〜18時の場合だと、こまめにON・OFFするほうが、つけっぱなしよりも累積の消費電力が高くなります。一方で18時以降に関しては、つけっぱなしのほうがわずかに上回ります。
ダイキンさんの動画では、「結論としてはこういう特性を活かしてエアコンを使ってくださいね」とおっしゃっています。大きな会社さんですから、こういった伝え方になるのだとおもいますが、多くの人は「つけっぱなしだと時間帯によっては得だとわかったけど、どうしたらいいのかな?」という感じでモヤモヤすると思います。
このダイキンさんの動画、非常に興味深いなと思って僕も観ました。で、僕は、どちらが得かを判断するうえで、みなさんに1つ考えていただきたいことがあるなと思いました。
こちらの動画ではマンションの2室に関しての話をしていますが、1軒の家になると別のファクターが関わってくると考えています。それが区分冷房か全館冷房かになります。冷房の運用の仕方の違いになります。
今どきの家には、床や壁、屋根といったいわゆる外皮と言われている部分には断熱が施されています。なので、断熱層がある中で部屋があるんですね。そういった構造で、夏になれば太陽の過酷な光を受け、外気温も高く、熱の影響を受けることになります。
区分冷房というのは、例えばリビングだけを冷やすとか寝室だけ冷やすという考え方になります。この区分冷房というのはエアコンをつけっぱなしにしようがこまめにON・OFFしようが、エアコンが部屋を冷やすために戦う相手が増えます。一般的には夏という気候と戦うことを想像しますよね。ですが区分冷房だと、冷房していない部屋も敵になります。
冷房していない部屋というのは意外と暑いです。断熱性能が高い家ほど窓から熱が入ってきて、外皮のところが外よりも暑いなんてことが冗談抜きで発生します。
となると、先ほどの動画の中では、9時から18時の場合、エアコンはつけっぱなしのほうがお得に感じましたよね。でも、つけっぱなしにしたら冷やしてない部屋からの熱移動が発生したりして、結構過酷な稼働をさせることになります。
一方で、夜のつけっぱなしは損するという印象でした。でも全館空調の家だと話は別です。
全館空調の家も外皮が断熱されています。また冷房は最上階ですることが多いです。断熱された内側を冷やすことになるので、冷やす面積は区分冷房より広範囲になりますが、電気量は意外と安く済みます。ちなみに区分冷房の場合だと、寝室以外の室温は外気に近いので、夜も過酷な稼働をさせることになります。
ダイキンさんが提示してくれたことを一戸建てに当てはめて考えると、そのまま採用していい部分と、また別のファクターを考えなくてはいけない部分があることがわかったと思います。
なので、つけっぱなしとこまめなON・OFFのどちらが得か損かを考える場合は、自分の家は区分冷房なのか全館冷房なのかにもよって結果が変わります。これがリアリティのある、生活に根ざした答えなのかなと僕は思います。
ちなみにモリシタの家はHEAT20 G1やHEAT20 G2という断熱性能で、全館空調で、小屋裏エアコンのように効率的にできる形を採用しています。この場合、お施主には「夏は24時間冷房がおすすめです」とお伝えしています。
この家だと、朝起きてから寝るまではリビングだけ、寝るときは寝室だけ、お子さんがいるご家族なら子ども部屋だけ冷やすといった区分冷房をするより冷房費用が安く済みます。各部屋での温度差もなくなり、どの部屋も涼しくなります。24時間連続冷房の優位性に関しては、このような観点も持ちながら判断していただけたらと思います。