家づくりで起こりがちな失敗(資金計画編②)
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今回も資金計画について解説をします。前回の動画もぜひご覧ください。
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前回は「住宅ローンを借りるならどのように計画するべきか」というテーマでお話ししました。その際、返済期間は定年までの年数を基準にし、リスクの少ない全期間固定金利で計画を立て、借りてもよい金額の上限を算出してくださいと提案しました。しかし、その話だけで「頑張ってね」と終わると、現実的には計画通りに進まないことも多いです。
例えば、リスクを避けた計画では、思ったほど借りられない場合があります。「この金額では家を建てられない」と感じたり、「全期間固定金利で借りるべきですか?」と疑問を持つ方も多いでしょう。ただし、これはあくまでリスクを理解するための枠組みであり、その上でどのタイプの住宅ローンを選ぶべきかを考える必要があります。今回は、住宅ローン選びの基本的な考え方について解説します。
住宅ローンには大きく分けて3つのタイプがあります。1つ目が「固定金利型」です。これは全期間固定金利で、借入期間全体で金利が一定です。安定性がある反面、他のタイプよりも金利が高めに設定される傾向があります。2つ目が「変動金利型」です。こちらは市場の状況に応じて金利が変動します。金利が下がれば支払いが減る可能性もありますが、上昇すれば負担が増えるリスクがあります。3つ目が「固定期間選択型」です。最初の一定期間(例えば5年や10年)のみ金利を固定し、その後は変動金利に移行するタイプです。金利が一定期間安定するため安心感はありますが、固定期間終了後に金利がどう動くか予測がつかない点には注意が必要です。
多くの方が最も気にするのは「金利」だと思います。何%で貸してもらえるのかが非常に重要ですよね。この金利には簡単な仕組みがあります。金利のベースとなるのは「基準金利(店頭表示金利)」です。これは銀行の窓口に行くと確認でき、現在では3.7~3.8%程度が一般的です。この数字だけを見ると「そんなに高いんですか?」と思うかもしれませんが、ここから「優遇金利」という値引きが適用されます。この優遇を差し引いたものが実際に適用される金利、つまり「実行金利」です。
また、優遇金利には「通期優遇」と「当初優遇」の2種類があります。「通期優遇」は借入期間中ずっと同じ優遇が適用されるタイプです。一方、「当初優遇」は最初の数年間のみ大きな優遇があり、その後は優遇幅が縮小されます。「当初優遇」は一見金利が低く魅力的に感じるかもしれませんが、優遇期間終了後の金利上昇に注意が必要です。
ちなみに、私が若い頃(35年以上前)の住宅金融公庫の実行金利は5.5%でした。そのため、世の中の状況によっては再びそのような高金利時代に戻る可能性もあります。そう考えると、「変動金利は怖いけど固定金利は高いし、最初の10年間だけ金利が固定されているタイプで様子を見よう。優遇も大きいし」という考えに至る人が多いかもしれません。
しかし、例えば10年後に金利が上がった場合、その上昇分に加えて優遇幅が縮小するケースもあります。ある地方銀行では「当初10年は2.3%の優遇、10年後は1.5%の優遇」といった内容が小さく記載されています。この場合、10年後に事実上0.8%金利が上がることになります。これでは、金利の変動以上にリスクを感じるのではないでしょうか。そのため、固定期間選択型を選ぶ際は、優遇幅が「通期優遇」なのか「当初優遇」なのかをよく確認することが重要です。また、優遇幅の縮小がもたらすリスクは、金利の上昇以上に深刻であることを認識しておく必要があります。
では、住宅ローンを選ぶ際の基本的な考え方をお話しします。固定金利と変動金利のどちらにすべきか迷った場合は、それぞれのシミュレーションをしっかりと行うことが大切です。例えば、3000万円を頭金500万円で35年返済すると仮定します。フラット35Sを利用すれば、金利1.85%で35年間同じ金利が適用され、返済額は毎月97,085円です。元利均等払いのため、最初は利息の占める割合が大きいですが、じわじわと元金が減っていきます。最終的には総支払額が40,775,428円となり、リスクの少ない返済方法と言えます。
一方で、変動金利型のシミュレーションは未来の金利が予測できないため、難しい部分があります。しかし、自分なりに将来を想定してみることが重要です。例えば、最初の5年間は金利0.5%と仮定し、その後は金利が徐々に上昇するとします。5年後には1.5%、さらに5年後には2.0%、最終的に3.0%に達する可能性を考えると、大きな金利上昇も視野に入れた計画を立てる必要があります。
この条件でフラット35Sと変動金利のシミュレーションを比較すると、変動金利の方が当初13年間の返済額はフラット35Sよりも低くなります。例えば、最初の5年間は毎月77,875円の返済額となり、フラット35Sとの差額である19,210円を貯金することが可能です。次の5年間では返済額が89,830円となり、差額は7,255円に減少します。その後、さらに5年間で返済額は95,203円となり、差額は1,882円まで縮小します。これらを13年間で平均すると、毎月約10,000円程度の貯金が可能です。この貯金をコツコツと積み立てたり運用したりすることで、後半の金利上昇に備えることができます。
また、住宅ローン控除の仕組みも重要です。控除はローン残高に応じて受けられるため、最初の13年間は繰上げ返済を急がず、残高を維持しつつ控除を最大限活用することをおすすめします。その後の金利上昇に備え、貯蓄や計画的な繰上げ返済で対応するのが現実的でしょう。
このシミュレーションの延長で、変動金利を選んだ場合、13年間の貯金をどのように活用するかを考えてみましょう。例えば、毎月1万円を積み立てNISAに回し、年利回り2%で運用した場合、13年間で元金156万円が約178万円程度まで増えると試算できます。この178万円を14年目に繰上げ返済に充てることで、金利上昇後の月々の返済額を抑えることが可能になります。
具体的には、変動金利が上昇して返済額が月95,000円程度に増える場合でも、繰上げ返済を活用することで86,000円から90,000円程度に抑えることができます。このようにして家計が吸収できる範囲内に調整すれば、例えば15年目以降に子どもの大学進学などで発生する大きな出費にも対応しやすくなります。
一方で、さきほども述べたように、変動金利型のシミュレーションによる総支払額は約3,977万円となり、フラット35Sの総支払額より約100万円少なく抑えられます。これは、変動金利を選び、自分でリスクをしっかりマネジメントした結果得られる「リターン」です。
ここから私の結論を述べます。変動金利を選ぶということは、ハイリスクを取る選択です。しかし、そのリスクをしっかり管理することで、ハイリターンを得られます。ハイリターンとは、毎月の返済額の差額を貯金や運用に回し、将来の金利上昇に備えることができるという点です。ただし、そのためにはリスクマネジメントが不可欠です。世の中の金利が大きく変動した際、備えていた貯金や資産を適切に活用できる計画を立てておく必要があります。住宅ローンの営業担当者や工務店に頼り切るのではなく、自分自身でリスクに向き合い、対策を講じなければなりません。
一方、フラット35Sのような固定金利型を選ぶことはローリスクな選択です。その代わり金利は高めに設定されていますが、これは一種の「保険料」と考えれば良いのではないでしょうか。優秀なリスクマネージャーを雇うための報酬や手数料と同じようなものです。悪い選択では決してありません。車に乗る際、多くの人が任意保険に加入するのと同じで、ローリスクを選ぶことで安心を買っているのです。
最も避けるべきなのは、ハイリスクを取ったにもかかわらずリスクマネジメントを怠り、その差額を生活費や遊興費に充ててしまうことです。例えば、家族で旅行や外食を楽しむことは素晴らしいことですが、ハイリスクを選択した人がそうした使い方をするのは危険です。
以上を踏まえ、自分自身のライフスタイルや将来の見通しに合った選択をし、しっかりと計画を立てることが重要です。ぜひ参考にしてください。
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