家づくりで起こりがちな失敗(間取り編)
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今回は、家づくりで起こりがちな間取りの失敗について解説します。
「間取りの失敗」というキーワードで検索すると、収納で失敗したとか、家の広さで失敗したとか、外から・内からの視線を考えてなかったとか、音が抜ける・篭るとか、臭いが逃げないとか、動線がうまくいかなかったなどなど、うんざりするぐらいいっぱい出てきました。ここで私は「そもそも間取りの失敗は、どういうことが原因で起きるのかな?」と考えました。
まず間取り作りは、「家そろそろ建てようぜ」「土地が見つかった」などと言って始まります。その一番最初にやることは、プランニングシートという方眼紙みたいなものを出してきて、「1階はこんな感じで…」などと言って始まります。これはご本人で考える時もそうですし、住宅会社の営業マンに相談してもそうです。「リビングはどれくらいの広さがいいですか?」「パントリーは要りますか?」「キッチンはどんな感じですか?アイランドキッチンですか?」などと聞いて考えていきますが、これをやると大体失敗すると、私は思っています。
どういう失敗かというと、まず一番に予算がオーバーしやすいです。もう1つは、あんまり快適な居心地のいい家になっていないことが多いです。これはなかなか根深い失敗です。
ではどうしたらいいのかと言うと、まず一番最初にやるべきことは、その土地の方位を調べることです。道路が土地のどっち側にあって、その道路はどっち向きなのか。その家の周りには、どんな家が建っているか。山・川など、何があるか。土地としてのロケーションの一番重要なことが、方位です。
住宅のプランを方眼紙で書く時には暗黙の了解があり、特別指定がなければ下側を南として書きます。なので下が南と考えて「これなら日当たりがいいかな?」などと考えます。しかし実際は、真南が真下を向いている敷地は少なく、多くの敷地は東西どちらかに振れていることが多いです。建て替えなら、そこに住んでいたわけだから「おおよそ方位はわかってる」とよくおっしゃいます。しかし意外と、意識していないからわかってない人も多いんです。この方位を押さえないと、快適な家は作りにくいです。
ちょっと悪口かもしれませんが、高性能な家を売っている会社の、文系の大学を出たての営業マンの子などは、方位に全然無頓着だったりします。でも私は「まずは方位を聞けよ、調べろよ」と思います。
方位を確認した後に考えるのは、その家なら駐車スペースはどこがいいかです。大体多いのは、方眼紙から考えて、できた家を敷地図に落として「ここが駐車場かな」と当てはめるパターンです。「駐車場から玄関が近い方がいい」などの希望があるはずですが、それを考えずにやってみたら駐車場から遠くなって、振り出しに戻ることもあります。
次に見るべきなのが、家の勝負の面を考えることです。大体家は道から見るもので、多くの人は人から「素敵なデザインの家ですね」と言われたいとなると、ここで勝負の面を考えます。これは多くの場合、道路から見た面ですが、角地の家だったら2面だし、3方を道に面した土地もあるし、高台に建っていて向こうからも見えるような家もあるかもしれません。これによっても、間取りの自由度が変わってきます。
方位を考える時には、まずは間取りの前に、ゾーンで考えてほしいんです。ゾーンというのは、LDKみたいに家の中で一番パブリックな、みんなが使う・長く居る所ゾーンや、水回りみたいに必要な時だけで使うゾーンなどという分け方です。大きくは、このゾーンをどのように敷地に落とすかが重要です。ここから間取りを考えることが、いい間取りにするための鉄則です。
そういうことを頭に置いた上で、具体的な作業としてやるのは、その敷地で一番日当たりのいい場所を見極めることです。南側道路のすごく恵まれた土地なら何も考えなくてもいいかもしれませんが、実際は南側に隣家があったり、大きな看板・マンション・鉄柱・大きな木など、いろんなものがある敷地が多いと思います。そういう南側のものについて、影がいかに敷地に影響するかをある程度予測します。
ここで使うのが「等時間日影図」という、図のように時間ごとに影が動いて移り変わっていくものです。これは南側の隣家複数軒に対して作成するのがいいです。複合的に影が動いて、影が重なるところがわかるので、「ここの部分には何時間日が当たる」と、ある程度予測できます。これをもって、その敷地の一番日当たりのいい場所を判断します。
例えば建て替えの場合、古いお家の残像が残っています。「昔の家ではここにリビングがあったから」と、何も考えずに同じ場所にリビングを作ることがありますが、ちゃんと日影図で確認したり、3Dの日影シミュレーションみたいなものを使ったりして確認する方がいいです。「うちの敷地は、実はここが一番日が当たるんだ!」みたいな新たな発見があったりします。そうすると、間取りはガラッと変わってきます。
あとは、南側には平屋の家が建っているからよく日が当たるという場合にも注意が必要です。古い家なら数年のうちに建て替わるかもしれません。なので、もし建て替えた時に建築基準法上の目一杯の大きさを建てられた場合に、今想定しているリビングで大丈夫かどうかも、確認が必要です。
隣家のすべての家の複合的な影のことと、将来日が当たらなくなるかもしれない最悪のパターンも入れながら見極めていくと、間取りを作るためのマインドセットができます。条件が悪いなら悪いで、そこにどういう意味があるのかを知ることから始めてください。これが、間取りを始める前に絶対やるべきことだと思います。
そして、次に決めておくことは、建物の大きさとシルエットです。さっきも言いましたが、営業マンは「どれくらいの大きさがいいですか?」などと聞いてきますが、昨今は建築費も高いです。「希望を出して作った間取りだけど、高くて建てるのは無理」となったら時間の無駄です。ここで私は、予算から逆算することが大事だと思います。
会社さんによっても違いますが、大体この会社のお家なら坪単価がこれぐらい、という目安があると思います。例えば予算が3000万円だったら、平均的な坪単価で割れば、おおむね建てられる面積がわかります。2軒×2軒なのか、2軒×3軒もできるのかなどのコスト感が出てきます。それによって、後戻りしない方向性が出てきます。
間取りというのは、希望を重ねていくことではありません。限られた領域の枠組みの中で、パズルすることです。これが限界という枠組みを先に作っておいて、その中で考えるのが、間取りづくりです。
その上でもう1つ知っておいてほしいのが、建物の外形についてです。基本は、正方形に近い長方形の、シンプルな矩形で建物を考えることがセオリーです。
最近は、中庭がある家に憧れてコの字の家を作ったり、L型にして庭や駐車場を作ったりすることが多いと思いますが、南面に関してはなるべく凸凹がない方が、いろんな意味で有利です。凹凸があると影ができてしまうので、まずはなるべくガタガタしない形で間取りを考えるのがいいと思います。
例えば、サイコロみたいなキューブで建物の形を考えてみます。キューブ8個で、床面積は一緒とした時に、この並べ方によって表面積は変わります。例えば2×2×2の立方体なら、表面積は24面です。4×2×1の細長い形なら、表面積は28面、図のような平屋のコの字形なら、34面になります。24面に対して34面になるわけだから、それだけ外壁が増えて、壁面積も断熱の面積も増えるので、平屋が高くなる理屈はわかると思います。
このように、建物の形はコストとすごく関わってきます。まずはベーシックなスクエアな形から始めるのが、間取りの大きな間違いが起きにくいコツだと思います。それより複雑なことを考えるのも、ここがベースにあります。
そして、無駄な面積を作らないことがすごくコストに重要なことだと言いましたが、その1つのポイントは、廊下をなるべくなくすことです。例えば、廊下じゃなくて居室・水回り・収納などにすれば、面積を有効に使えます。さらに、玄関をなるべく真ん中に持ってくる方がいいです。2階建てなら、階段と玄関をセットで建物の真ん中に作る方が、廊下を少なくできます。
例えば、図のように玄関を入ってすぐのところに階段があったら、廊下は全然いらないですよね。しかし、端に玄関、反対端に階段があったら、玄関から階段までの廊下が必要になります。さらに、階段を上がりきったところがどこかも大事です。上がりきったところが建物の真ん中あたりなら、階段を中心にクローバー型に各部屋を作れるから、廊下が少なくなります。でも、階段が端にあったら、反対端の部屋に行くための廊下が必要になります。このように、なるべく階段の上がり口が真ん中に来て、できたら玄関も階段のそばにすることがゾーニングでできると、結構すっきりしたプランができやすいです。
その上で、全体の配置と日当たりのいい場所を考え、パブリックゾーン(LDKなど人が一番居る所)はどこかと考え、残りを水回りにしたらいいという順で考えます。この時、トイレ・階段はプランを作る時に後回しになりがちですが、トイレ・階段は置き場所1つで間取りが大きく決まる、大きなものです。
例えば、トイレが玄関からすぐの所にあるのは嫌だったら、玄関から視線がパッと行かないように工夫したり、リビングダイニングのすぐそばにトイレがあったら、トイレで頑張ってる時に壁1枚向こうのリビングに家族がいるという状況を気にしたり、2階の寝室とトイレを近くにしたりなど、トイレの位置も頭に置いてください。その上で、階段下・小屋裏も上手に使ってもらうと、無駄な面積にならないことが多いです。
この辺りが、無駄な面積を作らないコツです。知っておいてもらうと間取りがうまくいくと思います。
また、南北に細長い土地の場合は、南面から北側までの奥行きがあるので、日が一番北側まで行きにくいです。もしくは南の隣地にビシッと家がくっついてる時も、日当たりはありません。その時には、屋根・窓・吹き抜けで工夫します。どこに屋根・窓をどういう形で作り、どこに吹き抜けがあると効果的かと考えることがポイントです。
図に書いた事例のように、招き屋根にして南面の2階の窓から光を入れたり、招き屋根から光を通して、吹き抜けを介して1階に光を注ぐやり方もできます。そうすると、俄然間取りの切り方が変わってきます。南側にリビングを作るよりも北側の方が明るいこともあります。このように、日当たりのいい場所を見極めることが重要です。
最後に、間取りに関して失敗を起こさないために思うのは、家の形・シルエット・大きさ・配置は、コスト・家の性能・快適さに、ものすごく大きな影響を与えるということです。間取りに関しては、いろんな各論で心配事があると思いますが、まずはここを押さえていただくと、間取りはうまくいくんじゃないかと思います。
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