太陽に素直な家づくり「なぜ夏は大暑、冬は大寒で考えるべきなのか?」
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今回は「太陽に素直な家づくり」をテーマに、なぜ夏は大暑、冬は大寒で考えるべきなのか?について解説します。家づくりの基本でとても重要な内容です。
私の住宅設計の師匠は、松尾和也先生です。松尾先生が私に教えてくださった重要な設計の概念に「太陽に素直に家を作りなさい」という教えがあります。この「太陽に素直な家」を考える時の1つのポイントが、夏至と冬至です。夏至は、太陽が出ている時間が最も長く、太陽高度が最も高くなる日で、冬至は太陽が出ている時間が最も短く、太陽高度が最も低い日です。この2つを意識して、家の窓の位置・配置を考えないと、住み手に対して申し訳ない設計になってしまう、という戒めがありました。
私も最初の頃は、とにかく夏至と冬至を意識してやっていましたが、今いろんなことがわかるようになってきた中で「もう少し幅を持った考えも要るよな」と思いました。そんな中、先日ある本に巡り合いました。
「ぜんぶ絵でわかるエコハウス」という本で、森林文化アカデミーという学校の辻先生が書かれた本です。辻先生はとても素晴らしい方で、この本もまた素晴らしいです。すごくよくわかる本ですから、これから家づくりを考えている方や、住宅業界の新入社員の方はぜひ読んで参考にしていただけたらと思います。
今日はそのトピックの中で、これは素晴らしい説明だというものを、受け売りの部分もありますが、私なりに解説したいと思います。
この本の中で辻先生がおっしゃっているのは、「家づくりでは、夏は大暑で、冬は大寒で考えなければいけない」という教えです。まずは大暑と大寒について説明します。
日本の季節は四季と呼ばれる通り、春夏秋冬があります。これらの4つの季節それぞれをさらに6つに細分化する、美しい言葉があるんです。二十四節気という考え方です。一覧で書いていますが、綺麗な言葉が並んでいますよね。これらは全て、言葉に意味があります。例えば立夏は、夏が立つと書いて、夏の始まりを言う言葉です。
二十四節気はそれぞれ時期が決まっていて、5月の何日とか8月の何日などと決まっています。さらに、その時々の太陽高度(太陽の高さ)がまとめられています。太陽のエネルギーはとても強いです。四季の中でも気温は太陽の影響をすごく受けます。ただ、その影響にはタイムラグがあります。
例えば、夏至は6月の21日頃で、大体梅雨本番の頃です。雨が降って鬱陶しいですが、めちゃ暑いかと言われたら、そんなことはないですよね。しかしそれから2ヵ月経って8月になると、めちゃ暑いですよね。それぐらい、地表が太陽熱を受けて温まるのにタイムラグがあるということです。ここが1つのポイントです。逆に言うと冬は、太陽が出ている時間が一番短くなる冬至が来た後に、だんだん家や土地が冷えて、寒さが募るという構造になっています。これが四季の気温の構造です。
ここで、太陽の入射角を家の断面図の絵に加えた図を見てください。夏至の日は、太陽の入射角は78度で、ほぼ真上から降り注いでいる感じです。これだけ太陽高度が高いので、日陰がなくなります。
ちなみに「本当に78度なの?」と思う人がいるかもしれませんが、太陽高度は割と簡単に計算できます。例えば、太陽が直接地面に直角に当たるとしたら90度で当たることになります。しかし実際は、地球は自転しているので地軸があって、それは23.4度傾いていると言われています。90度に23.4度を足して、そこから太陽高度を測る場所の緯度を引きます。緯度は、日本では大体35度ぐらいです。私の住む姫路は34.8度ですし、東京では35〜36度ぐらいの間です。青森では40度を超えたり、鹿児島では32度だったりするので、ご自分の地域によって読み換えてください。平均値の35度を使うと、90+23.4-35=78.4となり、太陽の入射角が求められます。冬の場合は地軸の傾く方向が逆になるので、90-23.4-35=31.6となり、約32度の角度で太陽光が入ってくるとわかります。だから冬の日は、家の奥まで陽が入ってくれるんです。
ここで考えないといけないのは、庇の出方です。太陽の光がめちゃくちゃきつい時には影を作りたいですよね。でも冬は寒いから、影はいらないわけです。だから、程よい庇の出方にして、冬も暖かく夏も涼しくしたいわけです。これを体系的に考えた結果、日本の緯度35度ラインだったら、窓の高さを10とした時に庇を3ぐらい出したら大体最適だと言われています。ここで注意してほしいのは、庇が3というのは、窓の上端の付け根から入射光までの距離が3だということです。
この理屈で考えると、この絵のような入射角になり、庇のおかげで夏は陽をカットしてくれるけど冬は邪魔せずに陽が入るということになります。これが、夏至と冬至で家づくりを考えるという方法です。しかし現実は、先ほども言ったように暑さ寒さにはタイムラグがあります。
例えば二十四節気では、夏の大暑は7月23日、最も暑いとされています。しかし最近はずっと暑いですよね。秋になっても暑いぐらいです。昔は「暑さ寒さは彼岸まで」と言って、「秋分の日を過ぎたら涼しくなるよ」とおばあちゃんにも言われました。しかし今は、秋分の日を超えても暑いし、夏の始まりも早くなっている印象です。
そこで辻先生は、夏は夏至から白露(9月8日頃)までを一括りに考えて、ここの期間に庇が効くような形を考えるべきじゃないかとおっしゃっています。私が思うには、もう1節ずつ広く、芒種から秋分で考えてもいいんじゃないかと思います。
白露では、太陽の入射角は61度ぐらいあります。そうすると、先ほどの10:3の庇の考え方では、図のように太陽が少し室内に入ってしまうことになります。9月に入ってもエアコンを効かせておく方がいいのに、太陽光が入ってきたらエアコンの効果が薄れてしまい、電気代が余分にかかってしまいます。だからもう少し考えた方がいいと思います。また、春分の日・秋分の日では、太陽の入射角は55度ぐらいです。ですから、夏もこの55度ラインで考えた方がさらに安心です。
夏に関しては、ピークは夏至じゃなくて大暑。冬の寒さは、ピークは冬至じゃなくて大寒です。この時に十分な日射取得ができること、十分な日射遮蔽ができることを考えた方がいいんじゃないかと思うんです。そうすると、結論は大体1つになっていきます。
さらに、そもそも今のシミュレーションは、敷地・窓が真っ直ぐ南に向いている家での話です。しかし実際は、方位は東か西にずれていることが多いですよね。そうすると、入射角はまっすぐ入ってくるよりもさらに緩くなり、ますます日射のコントロールが難しくなります。庇だけを考えていても限界があるということです。
私が思うのは、庇の出方は夏至に合わせて最適に近い形にすることはもちろんですが、それ以外の時も日射をカットしたいので、アウターシェードという日除けを絶対つけた方がいいということです。これは新築では絶対つけなきゃいけないし、既に建っている家も、今からでも遅くないのでつけてください。経験的に葦簀などを下げている方もいらっしゃると思いますが、これをやるだけで夏の暑さは全然違います。庇をすごく出したがる人もいます。それは、夏は確かにすごくいいんだけど、冬の寒さ対策、いわゆる日光の暖房利用には逆行しているので、注意していただきたいです。
この二十四節気を1つずつ読み込んでいくと、夏が始まり、だんだん日が強くなり、雨雲が増え、最も日が長い日がきて、暑さが本格化し、すごく暑くなり、お盆が来て暑さの峠を超えて…と、グラデーションで変わっていく様子がわかります。この季節の節目で、家や間取りの利用を考えると、家づくりが楽しくなるんじゃないかなと思います。この辻先生の本を読ませていただいて、改めてそう感じました。
太陽に素直な家づくりは絶対だと思います。ぜひこれからは、私がかつて思っていたような夏至と冬至の考え方ではなくて、ピークは大暑と大寒なんだと捉えていただいて、窓・庇の取り方を考えていただけたら、きっとみなさんの家づくりはうまくいくと思います。ぜひ参考にしてください。
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