白アリ対策(防蟻)にはどんな選択があるか?
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今回はシロアリ対策(防蟻)について、どんな方法があるのかを解説します。
冬が終わり暖かい季節になってくると、話題に出てくるのが羽アリ・シロアリです。偵察部隊の羽アリが出てきて、「うちはシロアリ問題は大丈夫かな」と心配に思う人もいると思います。
シロアリの主な対策でいうと、パッと思い浮かぶのは薬を撒くことだと思います。それもありますが、根本的なシロアリ対策の大きな力になるのは、構造だと私は思います。今回は構造的にどういう対策があるのかを解説します。
1998年ぐらいから木造の基礎の中では「ベタ基礎」が増えました。これは耐震問題の影響もありますが、シロアリに対しても強い家にできるという機運が高まったからです。
日本ではヤマトシロアリ・イエシロアリという種類が一般的で、昔から馴染みがあります。本来シロアリは家を食べたいわけではなく、木を食べて子孫を繁栄できればいいんです。ただ、日本の人口が増えて家がそこらじゅうに建ったことで、シロアリは近くにある木を食べるようになったんだと思います。
シロアリは山などにいます。食料を求めて羽アリが飛んで、美味しそうな木を見つけたら、巣に帰って仲間を呼ぶという流れです。羽アリは飛んできますが、シロアリは土の中から来て、基礎を抜けて、土台・柱を食べてしまいます。ですから、土からの侵入をどう止めるかということが重要になります。
土の中からシロアリが来るので、対策としては土台・根太・大引などに薬を撒いておけば、シロアリを避けることができます。構造でも同じ対策をするのが「ベタ基礎」です。ベタ基礎はコンクリートでの船みたいなものなので、この絵のように外は土が見えていても、中は土が無いですよね。だからシロアリが潜って行きにくいし、シャットアウトしやすいんです。
また、シロアリは湿気があるところを好みます。ベタ基礎の下には防湿シートがあり、コンクリートでおさえています。土の上に石を並べているだけの布基礎の家と比べると、湿気が劇的に減ります。さらに、基礎と土台の間には基礎パッキンを入れることで、水切れや通気性がよくなり、基礎の中がより乾きやすくなります。これらを全部やることでシロアリ対策ができます。
シロアリは家の土台・下側から食べるので、土台の木材にはヒノキ・ヒバのような、シロアリに対して弱くない樹種を選ぶことで、被害の確率がどんどん減ります。もちろん食べられてしまう時もありますが、虫のつきやすさは低くなります。
また昨今は、加圧注入材という木材があります。これはアリが嫌う薬を釜の中で木材に染み込ませたもので、長い期間持ちます。
既存住宅のリノベに関しては、薬剤をどんどん塗っていくやり方もありますが、それ以外に防蟻・防湿シートを敷く方法もあります。防湿シートの中にアリが嫌がる薬品をサンドイッチしたような商品があり、例えばフクビさんのアリダン工法、日東さんのターミダンシートなどです。これらを敷くことによって、薬効も出しながら湿気もシャットアウトしてくれます。これも構造によるアプローチです。
最近ではテクノガード工法と言って、防湿シートの代わりに樹脂を膜のように塗る方法もあります。少しコストはかかりますが、湿気止めをしたり、薬効を長く封じ込めることができるので注目されています。このように構造としてシロアリ対策をするというのが1つの方法になります。
薬剤については、まずは歴史をご紹介します。私が子どもの頃の1980年代までは「DDT」「クロルデン」といった「有機塩素系」の薬剤が、シロアリの駆除に使われていました。これは一種の神経毒で、虫の神経に働いて殺すものです。撒いた後の残留性も強くて、シロアリにも効きますが人間にも害があるということで、その後「有機リン系」の薬剤に変わっていきます。
しかしその結果、有機塩素系では10年以上持つと言われていた薬効が、5年ぐらいしか持たなくなりました。ただ、2000年代にはシックハウス症候群が問題になったこともあり、毒性のない薬剤を使わなければいけないということで「有機リン系」が主流になりました。そして今は、安全性が高くて使い勝手の良い「ネオニコチノイド系」の薬剤が主流になっています。ただし5年で更新した方がいいと言われています。
一方で、昔みたいに10年保証の薬剤が欲しいということで出たのが「ホウ酸系」という無機系の薬剤です。薬剤の質が変わりにくく、水で流さない限りはそのまま保持されていくので、長く持ちます。基本的には10年は持つと言われています。
それからクロラントラニリプロール(商品名:アルトリセット)は「ホウ酸系」ではないですが、安全性が高いです。5年保証のものに比べたら価格は高いですが、10年の薬効が維持できるとされています。これは毒性が強いと思う人が多いと思いますが、コーヒーのカフェインや食塩と同じぐらい安全とされています。食塩が毒だと思う人は少ないと思いますが、食塩をたくさん食べたら死にますよね。しかし普通に使う分には安全なので、害がないというのはわかると思います。薬剤を選ぶなら、こういうものを選ぶことも対策になります。
防蟻処理のうち、薬剤を撒くものには4つの種類があります。1つ目は土壌処理です。土壌処理は、家の床下の土の上に撒く、あるいはベタ基礎のベースの上に撒く方法です。2つ目は木部処理です。最近の束は鋼製束・樹脂束が増えましたが、昔は木の束でした。この束や、土台・大引・根太などの木部に薬剤を撒く方法です。3つ目が上廻り処理です。土壌処理・木部処理は、大体骨組みの時にやります。しかし、家の造作ができてくると玄関・浴室・床下がデッドスペースになることがあるので、その場合に後から処理をする方法です。
これは余談ですが、シロアリ駆除の業者さんにどこの場所の被害が多いか聞いたところ、玄関が1番、2番がお風呂、3番目に壁だそうです。なので玄関・お風呂に上廻り処理をしておくのは、防蟻処理として有効です。
4つ目にベイト工法です。ゴキブリ退治のようなもので、毒入りの餌を巣に持ち帰ったら、巣ごとダメージを受けるというものです。これは既に建っている家で、シロアリ被害を少しでも感じた時に置いておくことが多いです。
要するに構造的な対策としては、ベタ基礎のような形で防湿シート+保護コンクリートもしくは保護モルタルで、虫と湿気を封じ込めること。既築の土が出てる家の場合は、防蟻・防湿シートを張っておくこと。床断熱をやる時は基礎パッキンをし、通気・換気の確保をすること。基礎断熱の時は10年薬効がある薬剤を使うこと。個人的にはこのような対策がいいと思います。その上で、新築時には土台に加圧注入材を使った方がいいと思います。
最近は土台だけではなく、柱・梁も全て加圧注入材の方がいいと言う人達も結構います。実際に最近は「アメリカカンザイシロアリ」という、強力な外来種のシロアリが頻繁に出ています。このシロアリの怖いところは、羽アリのように飛んできて、いきなり木を食べ出すことです。そういうことを考えると、構造体全部に加圧注入材をやる方がより安全ということは事実です。
そうなると、「これらを全部やったら安心」と思う方もいますが、それはどうかと思います。先ほども言いましたが、実際に被害に遭うのは玄関・風呂周りが多いです。加圧注入材を駆使してアリに関して安心な家づくりを提供をされているコシイプレザービングという会社の方は「対策をした上で、5年か10年に1回は点検をやるべき」とおっしゃっていました。構造的に薬剤を選ぶのも大事ですが、点検も重要です。なのでより安全を求める方はぜひ5~10年の間には点検をしてください。
これは私個人での見解ですが、例えば家のご主人が家族のために、一度潜って家の中の基礎を点検するのも悪くないと思います。例えばこの写真は蟻道という、基礎の所にアリが這って上がった印です。これは素人が見てもわかります。このように自主点検する方法もありますし、私は自分では無理だなと思う人は業者さんにお願いしてもいいと思います。
点検は5年毎が理想ですけど、せめて7~8年ぐらいに1回は見ておく、または10年保証にして10年経つ前に見てもらうのがいいと思います。なおかつ、床下だけでなく、天井裏も点検をしてください。例えば1階の点検口から覗いたら2階の床の天井裏が見える、というようなことも、構造の面でのシロアリ対策になると思います。
お金があるのなら、全部加圧注入材にして業者を呼ぶのが理想だと思います。しかしそれ以外にも、いろんなリスクヘッジの方法があります。上手に自分の家をメンテナンスする、業者さんに頼む所は頼むということで、シロアリ対策をしていただけると安全かなと思います。ぜひ参考にしてください。
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