地震や台風に抗う「耐力壁」とは何か?
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今回は、耐力壁(耐震壁)について解説します。
災害に強い家の要素の1つに、耐力壁・耐震壁という言葉があります。頻繁に使われますが意外と意味がわかっていない方もいるので、今回改めて説明します。
住宅に関わる建物には、大きく分けて2つの力がかかると言われています。1つは鉛直荷重という、建物に対して垂直に作用する荷重です。これは建物そのものの重さや、そこで暮らす人の重さ、使っている家具・家電の重さ、本の重さなど、様々な重さ自体が鉛直荷重です。
鉛直荷重はこの絵のように、柱を立てて、それに耐えられる硬さ・太さの梁を乗せた、シンプルな形で受けることができます。
もう1つが少し厄介な水平荷重です。この絵のように、柱を立てて梁が乗っているだけだと、地震や台風の風のような横からの力がかかった時に、積み木のように簡単に崩れてしまいます。
水平方向に対する強さの最大のポイントは、梁と柱の接合部の強さです。水平方向(梁)と垂直方向(柱)の交点が直角であれば、建物は倒れません。論理的には、接合部の角度が90度を維持できれば建物は倒壊しないことになります。接合部の角度を変えないことが、建物の強さを作り出す根本になります。
角度(90度)が変わらないようにがっちり固める接合を、剛接合と言います。構造計算では、端っこが動かないので固定端とも言いますが、プロしか言わない言葉だと思います。そして、剛接合で門のような形にしたものを、構造の世界ではラーメン構造と言います。ラーメンとは、ドイツ語で額縁・枠組みを意味します。
ラーメン構造は、柱・梁が太くて丈夫な状態で、接合を溶接などで全く動かないようにすることで成立します。そして鉄骨造(S構造)・鉄筋コンクリート(RC造)みたいなものが、ラーメン構造に当てはまります。
ラーメン構造は、オフィス、事務棟、倉庫、役所などの大きな建物に向きます。多くの人が集える大きな空間を作れるし、これらは公共性が高く、一定のコストがかかったとしても有意義なものになるからです。
ただラーメン構造は、個人の家に使用するには価格が高いです。限られた狭い土地では柱が太かったりすると、スペースが狭くなり、リビングが小さくなったりしてしまいます。強いという良い面もありますが、個人の家であれば他にやりようがあると思います。
そこで現れたのが壁構造です。例えば木造の建物で、機械屋さんがプレカットで刻んだ接合部にはほぞがあったりして、グッと差し込んだり金物で止めたりします。ただ、横方向の水平の力がかかると、これは簡単に動いてしまいます。このように角度が変わってしまうものを、固定端に対して回転端、剛接合に対してピン(ピン接合)と言います。
壁構造はラーメン構造と比べて、細い柱や太くない梁でも成立します。ただ、回転するので水平力には弱いんです。それに対して倒れないようにするために壁で突っ張るというのが、壁構造の基本的な考え方です。
壁構造には例えば、木造の在来木造住宅でいうと、軸組工法や枠組壁工法(ツーバイフォー(2×4)工法)があります。鉄骨構造ではブレース構造という軽量鉄骨を使うものがあります。ラーメン構造は6mm以上の鉄でなくてはならないのですが、軽量鉄骨はそれより薄くてもいい、柱も150mm角ではなく80mm角ぐらいでもいい代わりに、ブレースで壁を作って粘りを持たせようという考え方です。それから鉄筋コンクリートでも、柱と梁で構成するのではなく、壁を分厚くして構造を作るというやり方があります。
住宅などの小規模の建物に関しては、限られた面積でコストを抑えながら、地震や台風に抗うことができる構造ということで、この壁構造が発明されたと思います。
私らの祖先の大工さんや職人さん達が、木は全国どこでも簡単に入手できるし、軽くて強いし、筋交いという壁構造をやれば、誰でもどこでも安心な家ができると考えたのではないか、海外でもそういうものがあるから、と発明されたのではないかと思うと、建築のおっちゃん的にはロマンを感じたりします。
壁構造にはこの絵のように、4つのパターンがあります。柱と柱の間に筋交いというものを入れるもの。筋交いの代わりに耐力パネル(構造面材)を貼ることで粘りを持たせるもの。ブレースでたすき掛けにして、色々な角度からの揺れに対して粘りを持つようにするもの。コンクリートの壁を密実にして、鉄筋も含めて粘り強い壁とするもの。こういうことで、軽快な壁自体が転んでこないように支えています。
地震や台風に強いポイントは耐力壁と呼ばれてる壁だということを、今日は押さえてほしいです。また別の動画でも耐力壁について解説しますので、まずはここまで知ってもらえたらと思います。ぜひ参考にしてください。
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