土地条件が悪い時の家づくり(変形地編)
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今回は土地条件が悪い時、特に地形が悪い時の家づくりについて解説します。
土地を求めたい時には、土地のいろんな条件を見ながら買いますよね。その時に、土地が変形している変形地問題があります。それをどんな風に利用して家づくりに役立てるかという着想について、基本的な話をさせていただけたらと思います。
土地と一口で言っても、形は何パターンかあります。最も人が好むのは、整形地、要は真四角の土地です。長細い土地もこれに含まれます。
一方で、整形地に似ていますが通称旗竿地という、敷地延長のパターンもあります。住宅の屋敷は道路に2m以上接していないといけないという、接道という法的な規制もあります。それは良好な住環境を作るために最低こういうことは考えなアカンということで作られている国の基準ですが、そういうところで出てくる土地です。大きい土地を分割するときに、道路に面した面が小さかったらこういう風に通路を横に取って、奥の土地と手前の土地に分けて利用することがよくあります。
変形地で一番強烈なものでは、三角地・台形みたいなものもあります。あとは複雑地といって、何の都合かわからないけどぐちゃぐちゃしているものもあります。例えば、昔小さい田んぼが込み入ってできていて、気がついたらそこだけ複雑な形で残ったみたいな土地です。
これらの土地は癖があるんですけど、1つ利点もあります。何かというと、周りの相場感と比べると面積の割に割安なことが多いことです。
割安かもしれないけど、ガチャガチャしているから思ったように家が建てられない、ということもあるかもしれません。しかし敷地の個性というのは、実は欠点じゃなくて長所にもなるということに着眼してほしいのです。
もう10年以上前ですが、九州の鹿児島にシンケンスタイルさんという、私たちがめちゃくちゃリスペクトしている会社があります。普通は整形地だったら、ラインに平行に家を建てることが常識です。しかしそこの社長さんは、斜めに家を置いてみるということを推奨というか、設計事例としてたくさん持たれていたんです。一見乱暴なことをやっているように見えるけど、実は残ったスペースにユニークなスペースができる。その土地に何か違う意味の神が宿るというような感覚です。
実際に建てられているお家は、すごく素晴らしいんです。例えば、方位が整形地の直行方向にあることは稀で、どちらかに何度か振れていることが多いし、大きく振れている時もあります。
そういう時に斜め配置にすると、意外ときちっと建物のある面が南面を向いて、一日中満遍なく日当たりを取ることが容易になるなどということになります。例えば周りに建物が建っていたら、そこが三角の囲み空間みたいになって、素敵な空間になることもあります。
将棋や囲碁で、それをポンと置くと一気に違う展開なっていくような話をよく聞きますが、家も同じで、家・駐車場の置き方で性質が変わってしまうところがいっぱいあるなと思います。
台形地でも同じです。これは前にあるお家を設計している時に、松尾先生ならこの土地をどう料理しますか、みたいな感じでお願いした時に、図のような感じの家の配置をしてもらったことがあります。
中途半端な狭いところにうまいこと車2台を入れたり、お庭も作ってもらったり、裏側の三角のデッドスペースみたいなところはエコキュート・エアコンの室外機などの野暮ったいものを固めて置いたりしています。
そして何といっても、斜めの面に関して建物を斜めにしましょうという案でした。私は現場の人間だから、斜めはやりにくいから嫌なんです。しかし松尾先生はこの空間を出されたら、「どうやって収めるかな」などとまた違うエネルギーが湧いてきていました。
プレカット業者さん・大工さんとかと打ち合わせをして、こうやれば収まるやん、などと話し合って、見事に仕上がりました。そんなに面積は広くなかったんですけど、スッキリ収まって、真四角のいい土地に家が建ったように見えました。中に入ると、斜めなんだけど何にも違和感がない家ができました。
このように、予想もしなかったことが起きることがあります。嫌がられる旗竿地も、上手に駐車スペースを取ることもできます。また、奥まっていますからプライバシーは保ちやすいです。これを生かして、うちは外でバーベキューをやるとか、子どもがテントを張って遊ぶとか、昔みたいに子どもが道路を走り回るよりも家遊びがいいみたいなことがある中で、こういうところができても楽しいと思います。
ワイルドな形の土地に関しては、いろんな建物の配置があったり、いろんな空間の作り方があったり、家庭菜園を隅っこでやるぐらいならできるとか、ちょっと臭う肥料を使っても家から離れているからあまり気にならない、ということもあります。朝起きて、トマトが真っ赤になったからもいでサラダにしよう、みたいな暮らしもできます。
土地の欠点は、言い換えたら長所になるんです。例えば高低差がある土地も、登るのが大変という考えもあるけど、見晴らしがいいという言い方もできます。「土地価格=品質」ではないんです。品質とは、言い換えたらその土地の持つ可能性だと思いますが、価格とイコールではありません。
設計する方は骨が折れるかもしれません。でも面白いと思います。日当たり・風通し違う境地が出せたりします。
一方で普通の感覚で言うと、規格住宅でリーズナブルに買える家が真四角で、土地にうまく入らないという問題や、将来更地にして土地を売るときは、自分は可能性を感じて土地を買ったけど、世間の人が良さをわかってくれず、売るのは不利ということはあるかもしれません。
でもこれから家を求める人には、設計が面白くなることはすごく魅力だと思うんです。
松尾先生が、斜めの土地で急にやる気が湧いてきたみたいなことと同じです。人間は不思議なもので、1つの枠組みにギュッと押し込まれたらイメージ・発想が出たりすることがあります。でも真四角な当たり前な感じでは、通り一遍な発想をしているところがあります。人間は、マス目を書いたら全部埋めたくなる動物です。こういう特殊な空間ができたら、そこを埋めたくなったり機能を考えたりするのが人間です。
設計者もお施主さんもそんな感じで、割安な土地を買って、その分余ったお金を設計・庭に投入するというのもすごく素敵だと思います。そんなことも考えていただいたらどうかなということで、今日はお話をさせていただきました。ぜひ参考にしてください。
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