天井は高いほうが良いのか?
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今回は、天井高について解説します。
昔、ミサワホームの創業者、三澤千代治さんがおっしゃっていましたけど、家の天井は高い方が大物が育つみたいな感じで、日本人って天井高が高い家を好むことがとても多いですよね。例えば、親御さんから「天井高は高くしてもらっとけ」とか、「天井は高くしないとアカンぞ」といった話を聞かれた若い方が、そういう風にしておいた方がいいですかね? という感じで聞かれることが多いと思います。それに関してお答えしていきたいと思います。
実は天井はなるべく高くしたいっていう要望に対して、非常にはっきりとした明確な答えを言われた方がいらっしゃいます。それが、僕が勝手に師匠だと思っていますけど、飯塚豊先生という建築家の先生がいらっしゃるんですけど、飯塚先生がこうおっしゃっています。
「家の中のどの空間も一律で高くすればいい」というわけではありません。建物全体の高さを考慮した上で、高くする場所は思い切り高くし、低く抑える場所も設ける。そして、天井高にメリハリをつけることが豊かな空間を作る秘訣と言えます。
簡単に言うと、天井高は居室ごとに考えるのではなく、家全体で考えるべきだというのが飯塚先生の答えです。みなさんに天井高は高い低いと言うけど、具体的にどれぐらいの寸法感なのかを知っておいてほしいので、まずそこを解説していきます。
まず、僕が思うに、住宅で言う天井の高さというのは、多いところでいうと6段階ぐらいの寸法があると思います。何ミリ単位かは前後するのでざっくりです。まず最もポピュラーな天井高が2m20cm(2200mm)。そして大体大手ハウスメーカーは2400mmで統一されていると思う方がいいと思うんですけど、2m40cmと2m20cmです。これは大体1階が2400mm、1階にリビングがあることが多いので、そして2階がプライベートゾーンが多いので2200mmという風に言われています。これが最もポピュラーな寸法です。
それ以外で言うと、建築基準法という法律がありまして、人が住む居室に関しては平均天井高で、部屋の中の平均の天井高を2m10cm以上にしなさいという規定があります。
天井高が一番ミニマムで2100mmになると思っていいと思います。
一方で、僕は居室の一部に2mの高さを取ることもあります。多いのは勾配天井の時の一番低い部分を2mにして徐々に上がっていくケースなんですけど、それから居室じゃないですけど、繋ぎの通路とか、例えば書斎のような空間を2mの高さにすることもあるので(通路は)建築基準法上は居室と定義できませんけど、一番低くて2mぐらいで、そしてハウスメーカーさんでハイ天井と言っているところの多くは大体2600mmぐらいです。2400mmに比べて20cmも高いのでいいよね。10cm高い2500mmもありますが、こういうところが多いんじゃないかなと思います。
ただですね、天井高の高さを欲しがる人というのは、開放感があって部屋が広く見えるみたいなことを言われる方が多いんですけど、でもただ2600mmで開放感が本当にあるかというと、真の開放感が得られるのは約3mと言われています。大体の人は座ったら1100mmぐらいのところに目線が来ます。僕は座高が高いですけど、人によって前後はありますが、1100mmぐらいで(身長が)170cmぐらいの人が立ったら1500mmぐらいの位置に目線が来るとされているので、1500mmより上に目線がくる人は3mぐらいの高さに天井があると視界から天井が消えるんです。3mを超えると天井が消えるので、本当の意味の開放感・広さで言うと、それぐらいの寸法感があることを知っておいてもらえたらと思います。
ただ、住宅の巨匠と言われる伊札智先生は2100mmぐらいの高さが一番いい・しっくり来るとおっしゃいます。2100mmがなぜいいのかをここから解説していきますけど、家の中には開放感もいるんですけど、落ち着きも必要です。この落ち着いた感じが2100mmぐらいの低さでもたらされるということもよく言われています。
ちなみに、リビングとダイニングは繋げることが多いんですけど、リビング・ダイニングを同じ天井高にするというのも手なんですけど、リビング部分だけ2400mmもしくは3m以上の高さにして開放感を作る、ダイニング座るところは意外に2200mmぐらいの低い方がなんとなく落ち着いた感じ。例えば、ちょっとした小洒落た食堂というか、レストランみたいなところに行った時に、自分たちが座る座席のところは意外と天井低くないですか? その方がなんだか落ち着いた感じがするという経験があると思うので、そういう意味でダイニングはそれほど高くしなくてもいいんじゃないかなと、僕は思います。
それから、天井高で気を付けなアカンのは、意外とキッチンです。キッチンに関しては、キッチンの高さはいろいろありますけど、85cmぐらいが多いと思うんですけど、ここから上に絶対キッチンについてくるもので(レンジ)フードがあります。フードが低すぎたら、背の高い人だと頭を打つこともあると思うので、フードの大きさって大体50~60cmぐらいが多いので、これを単純に足していくと、キッチンは2300mmぐらいは欲しいかなと思います。2200mmにする時はこんな感じで一部フードにめり込ませるというか、フードの部分を確保することが必要な場合もあります。ただ吊り戸を昔は高いところに物を置けるからとつけていたんですけど、意外と使いにくいからあんまり使わなかったり、置きっぱなしになってるものがあったりするので、僕は2200〜2300mmぐらいでキッチンを考えるのもいいんじゃないかなと思います。
あとは、ベッドですよね、寝室。寝室は先ほど2000mmが最低と言いましたけど、1700mmぐらいでもいいのかなと思います。ベッドの高さは大体30~50cmぐらい、50cmはちょっと高いですかね、30cmぐらいの高さが多いかな。400mmも多いと思います。そこから上ぐらいに300~400mmぐらいの高さのベットで寝て、起き上がった時に頭を打たない高さというと1700mmぐらい欲しい。ただ1700mmぐらいにした時に、非常に寝るところとしては落ち着いた感じなります。
カプセルホテルに泊まられたことはありますか? あんな狭いところに泊まるの嫌という人も居るんですけど、意外とあれがいいなという人もいます。人間が古い原始の記憶で穴蔵で安心して寝れたというような記憶が自分たちの心の中にあるんですかね。こういう風なものもあります。なので、天井高に関しては一律に高くしない。そして、例えば、玄関を低くしてリビングを高くするとより空間が広く感じます。それから小さい部屋は天井高を広くすると狭さを緩和する効果もあると思います。
最後に、天井高をここの部分は高くした方がいいのかしない方がいいのかというならば、1つの尺度が「開放感を求める部屋は高く、リラックスを求める部屋は低く」だと思います。この観点から、天井高を選ばれたらいいと思います。
プラス、飯塚先生が冒頭におっしゃった言葉に「建物全体の高さを考慮した上で」とおっしゃっているんですけど、これは結構深くて、建物は階高が高くなればなるほどカッコ悪くなると言われています。ずんぐりするというか、刈り上げた頭みたいな感じでヒューっとなる。ペンシルビルって言葉があるじゃないですか。シューっと高いというよりは、水平方向に安定がある方が家は安定感があってかつ美しく見える。特に僕たちは和風という世界にすごく馴染みがあるので、和風建築がまさにそうですよね。
建物の外部プロポーションから言うと、高さを抑えたいという側面があった時に、必然的に天井高を低くして攻めていかないといけないので、美しい外観の家が欲しい方は、天井高に関しても1つ吟味が必要だと思います。
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