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今日は夫婦のライフスタイルが異なる場合の家の作り方についてご説明します。
60代になりまして、最近は同じぐらいの年頃のお施主様とお話しすることが多くなりました。その中で先日、こういう質問を受けました。
「夫婦で仲良く暮らしているけど、夫婦のライフスタイルがそもそも違う。家づくりを考える時、どういうことに気をつけるべきなのかな?」ということです。
質問を投げかけていただいたのは、まさに子育てが終わったシニア夫婦の方です。セカンドライフに対しての問いかけなのかなと思いました。
セカンドライフになった時、どういうことが家の中で起こっていくのか。僕もそうですが、子どもが一人前になって家を出た結果、子どもの占有する部屋が余ってしまう問題です。
仕事の面でも余裕というか見通しが立って、昔に憧れてたこと・やり残したこと(趣味や好きなこと)をやりたい時、そういうスペースや設えが欲しいこともありますよね。
最近私もしみじみ感じますが、夫婦の仲が良くても生活のペースが違ってくることが特に顕著化してくるんじゃないでしょうか。
生活ペースの違いは何なのかというと、大きく2つあるかなと思います。1つは寝ることへのアプローチです。
僕は仕事が終わってご飯を食べたら少し晩酌をして、お風呂に入ってすぐ休みます。一方、妻は僕の世話をしてくれるので、食事の片付けをして少しゆっくりして寝るということになります。
もう1つは、日々の余裕がある時の楽しみ方です。
それぞれ考えていくと、寝ることで言えば夫婦別就寝です。前からやってる人もいると思いますが、これを潮目にやる人も多いのではないでしょうか。
多くの場合は音・温度の問題です。早く寝る者からしたら起きている人間の音はうるさいですから。寝ている者のいびき・歯ぎしりがうるさいこともあったりします。求める温度も変わったりします。そうなってくると別就寝にするか、柔らかく分ける方法があります。
音とかは気にはならないけど、真っ暗にしておきたい時は、スクリーンみたいなもので仕切ったり、枕元だけ壁を作ったりして、柔らかく分ける方法です。
お互い歳もいっていたら、「息をしてるか?」みたいなことも気になったりするので、お互いの気配がわかることも必要だと思います。
また、昔は寝入ったら朝まで目が覚めませんでしたが、今はトイレで起きるようになり、下手したら夜に2〜3回起きます。そんなこともあるので、寝ることに関しては、お互いの生活の質を落とさないためには考えどころです。
昔から夫婦別就寝という人はいいです。または一緒に就寝することをお互いが望むケースはいいのですが、どちらかが「ホンマは嫌」あるいは「寂しいからやめて」と言うケースもあります。
自分は寂しくても、それが彼女にとって心地良いことだったら優先しないといけないです。ここもギクシャクしたりするので、真面目な話し合いが必要かなと思います。
それから、日々を楽しむということについては、余った部屋の活用法に思いを巡らせてもいいのかなと思うんです。大体が趣味部屋になりますが、4つの方向性があるかなと勝手に思っています。
1つは防音化です。例えばギターを昔やっていて、最近また弾いている友だちは「家に防音室があったらジャカジャカできるのに」と言います。
もう1つが書斎化です。僕は家づくりが好きで建築の仕事をずっとやっていきたいので、書斎的なものが家にあったらいいなと思います。
それからアトリエ化です。絵を描いたり粘土をこねたり、フラワーアレンジメントをしたりとかいろいろあるじゃないですか。あとはジム化です。筋トレ・ヨガとかをやるような。
ここで頭の片隅に置いてほしいのは、子ども・孫に帰ってきてほしい問題です。これも個人差がありますよね。僕はベタベタしたところがあるので、娘にも時々帰って来てほしいです。
泊まるところがないから帰ると言われたら嫌ですよね。そっちの方が優先順位が高いので、娘の部屋を防音化して趣味部屋にはしないということになるんです。
まとめていくと、夫婦それぞれのスペースを作らなければいけません。1つの理想は、ある程度大きな空間にそれぞれのたまりがある状態です。例えば、大きめのテーブルの隅で僕がパソコンをいじってて、反対の隅で女房が新聞を読んだり好きなことをやったりしてもいいですよね。
別々の個室という方法もあるけど、リビング・ダイニングという1つの空間の中での佇める・たまっていけるエリアもあるといいと思います。そうすると、ダイニングテーブルは大きくした方がいいです。
小さな頃のように、娘がソファーに座って一緒に並んでテレビを見てくれることはもうありません。別に嫌われているわけじゃないので、ダイニングテーブルでご飯を食べてる時とかお茶を飲んでる時は親しく話してくれます。
そう考えると、家族団欒はリビングじゃなくてダイニングに移ってくるんです。そういうことが、日々を楽しむということの根本かなと思います。
あとはセカンドライフじゃなくて、「夫婦の家」として考えた時、そもそも私たちってライフスタイルが違うよねという場合です。
例えばキャンプで知り合っても、一生好きかと言ったら微妙ですよね。多くの場合、 男性が続いて女性が卒業するなんてことは身の回りで多いです。それ言うと、アウトドアなのかインドアなのか。
それから社交的で人とワーワーやるのが好きなのか、1人が好きなのか。家族はいいけど、パートナーの友人がドカドカ来たり、親戚の人がバンバン来るのは嫌みたいな感じです。
僕も仕事を家に持って帰ってやったりするんですけど、そもそも家に絶対に仕事を持って帰らない人もいますよね。こういうところを踏まえた上で家を作っていく必要があるかなと思うんです。
この中で僕が今61歳になって思うことで言うと、ここからの人生の話です。これからの自分を喜ばせることとか、女房と死ぬまで仲良く過ごすというベクトルで考えた時、1つのポイントが、そもそもお互いに人と集まることが好きかどうかです。子どもや孫を手放さないといけない時がやってきたら、次は何かというと、友人だと思うんです。
僕はお酒を飲むので、ちょっとした酒盛りをしたいです。友だちがフラッと来て、缶ビールを飲みながら「お前血圧低くなったん?」みたいなオジイ話をやるような男酒盛りです。その場はリビングだとちょっと気が引けます。
リビングとは違うところでそんなことができる場があって、しかも玄関が近くてパッと帰れたりする所があったらいいですよね。
一方で奥さんも、ママ友とお茶会をやったりお酒を飲んだりしたい人もいると思います。ママ友だったらリビングでやったらいいと思いますが、ご主人がリビング派の人で気を遣うんだったら、さっきと一緒でリビング外にする方法もあります。
つまり、お互いが所属する独自のコミュニティに対しての尊重ということになってきます。この辺が、今後の自分・パートナーを喜ばせる家づくりに繋がっていくのかなと思います。
初めて家を作る若い人に伝えるとしたら、今までの話を振り返って考えていくと、寝室・子ども部屋には可変性がある方がいいです。子育てはいつか終わるので、家族の付き合いは期間限定ですよ。
2つ目が、玄関土間を広くすることです。宣伝になりますが、新しいモデルハウスはうちの若手がそれを面白がってくれて作っているので、出来上がったらみんなに見てもらって意見を聞かせてもらいたいと思います。
3つ目も当たり前ですが、子育て・共働きをする時期は家事の効率化への優先が何より大きいですよね。
もっと言うと、歳を取るとどっちが調子が悪くなるかわからないじゃないですか。そうなる可能性も含めて、家事分担できる工夫が必要です。「家事は私の聖域だからアンタは口を出さないで」と言われるかもしれませんが。
そういう時は「君の思うように建てたらいいけど、将来どこかのタイミングで俺が君のことも支えたい」みたいに伝えてもらってもいいのかなと思います。
4つ目は、夫婦それぞれが1人になれるスペースを想定しておくこと。そして5つ目、最近つくづく思うのはペットの想定です。
我が家も柴犬のコタロウ君を飼っているけど、彼は我が家の女子たち全員のアイドルです。娘たちは僕の顔を見に帰ってこないですけど、コタロウ君の顔を見に帰ってきます。コタロウ君は僕にとってカスガイなんです。
夫婦もコタロウのことを介して話ができたり、同居してる高齢の母も一定の寂しさを抱えてますから、コタロウが癒してくれていると感じることも多いです。
最後に、こんな話を出すべきなのかわからないですが、夫婦の力関係ってありますよね。例えば女房のことが好きで惚れて口説いて一緒になった夫婦は、一般的に奥さんの方が強いですよね。
「イケメンでスポーツマンでカッコいい!」と惚れて一緒になった奥さんは旦那さんに尽くそうとするし、控え目になったりすると思います。
その主従関係がバランスを取ってお互いに良識があったらいいですが、時に行きすぎることがあるじゃないですか。偉そうに言うのを許してくれるからずっと高圧的に言うとか、何でも許してくれるからずっとワガママを言うとか。
夫婦って力関係の拮抗が崩れる時が来るんです。要は、相手が嫌がらせをする時です。酷い言い方ですが、相手への復讐問題があります。
刺したり叩いたりすることではなくても、ちょっとしたことで相手が頑固になったり、強硬に主張してきたりということがあると思います。
やったものは仕方がなくて取り返しがつかないかもしれないけど、それを柔らげていく時に、ライフスタイルを考えた住まいのあり様を考えることは助けになるんです。相手を尊重する・思いやるって、言葉とかいろんなやり方がありますが、そういうことでもできるじゃないですか。
僕はあと10〜20年生かしてもらって、できたら女房より早く逝きたいみたいなことを思っていて。その時に仲良くいられてよかったなと思いながら逝きたいというワガママな気持ちがあるので、余計にそう思います。
そんな感じで利用してもらえたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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