現代の縁側としての玄関「土間デッキ」について解説します
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今回は、土間デッキについて解説します。
あまり耳慣れない言葉だと思いますが、「土間デッキ」という部屋・間取りの取り方があります。
家づくりを考える時、一戸建てが欲しい人にヒアリングをすると、多くの方がマンション・ハイツなどの集合住宅に住んでいらっしゃるので、「今のお家に関するご不満は何ですか?」と聞いたら玄関に対する不満が結構出てきます。
何かと言うと、まず1番が狭いこと。アパート・マンションの玄関って狭いですよね。それから窓のないところが多いので暗いです。それから収納がほとんどありません。スリッパぐらいしか置けないみたいな感じです。
そういうことがあるから、これをなんとか解消したいということはよく聞きます。でも、最近は建築費用が上がっているじゃないですか。建築費用を抑えるための1つの戦略として、家の面積をあまり大きくしたくないと思われることが多いんです。
それで小さな家を考えた時に、みんなリビングや他の部屋とかを広くしたいと言うじゃないですか。小さい面積の家なのに、リビングを大きく取ったらどうなるかと言うと、付帯する設備の間取りの要素に負担がかかります。
その結果、何が起きるかというと、小さい家(狭小住宅)の玄関の収納スペースを小さくしてしまう人がいるんです。玄関に置きたいものって実はいっぱいあります。それが収まりきらないから、家の中に入ってしまうのです。
しまいには、ニトリの3段ボックスとか、外にイナバの物置みたいなのを置いておかないといけないことになります。外に置ける分はいいけど、家の中に置きたいものがあると、「玄関収納ってなかなか難しいね」みたいな結論になることがあるんです。
それともう1つ、小さな家を作っていくという潮流以外に、この20年ぐらいの戸建ての家づくりで顕著に起きているのが玄関のプライベート化問題です。
ちょっと昔の家って、住み手の方も外からいらっしゃるお客さんも、玄関の付近は応接間・玄関とかを一括りに考えていました。プライベートじゃなくてパブリック、かと言ってプライベートみたいな、パブリックでもプライベートでもない曖昧な空間と捉えて、玄関を作ってきたことが多かったんです。
これは前の動画でも解説したことがあります。
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昔の農家の玄関には玄関土間という広いところがあって、そこでちょっと腰掛けられたりしました。近所の人が野良仕事から帰って来て「大根持ってきたで!」と言うと、お母さんみたいな人が「まぁ座って麦茶でも飲んで帰って」みたいなやり取りがあったのです。
「でも私、野良仕事の後やから。もうドロドロやから」「ええやん、ここに座ってくれたらお菓子もあるから」とか言って。そんな感じのことがあったりして、まさに応接的なものも玄関の中にあったんです。
でも、今の玄関ってそんなに人が来るでしょうか。うちの玄関で言ったら、佐川急便かヤマトの運転手さんぐらいしか来ません。イケメンの配達のお兄さんが来て喜んでも、「入って入って」と言うことなんてないじゃないですか。
家の内側と外側みたいな境界線が、スパーンと玄関ドア1枚で作ってあるのが今の玄関で、それがプライベート玄関というやつです。
でも、「運転手さんごめんな、暑い中配達してくれて。座って麦茶飲んで」みたいに、田舎だったらまだこんな風景もあります。うちの田舎のおばちゃんなんか、そんな感じで誰にでも親切にお茶を出したりしています。今でもちょっと曖昧な感じが残ってたりするんです。
とはいえ、スパーンと家の外と中とを切るような玄関が、圧倒的に多くなっていきました。その結果、煩わしい近所付き合いみたいなものはなくなったかもしれませんけど、昔のように温かい近所付き合いが減ってしまいましたよね。
僕もそうですけど、昔は悪いことをしてたら近所のおっちゃんに「コラッ」と怒られたりしていました。我が子も近所の子も一緒に、分け隔てなく子どもを見て、アカンことはアカンと言ったりしたし、「みんなで子どもを育てていかないといけないよね」みたいな風潮があったじゃないですか。
村内・地域のみんなで協力し合って生きていく、みたいな感じも日本のいい所じゃなかったのかなという気持ちがとても強いんです。
玄関では、立ち話でもないけど「畑仕事の格好だし、家に上げてもらうのは気が引ける」という感じが、普通に外に開いていくと起こりがちなんです。なので、玄関には外部のお客様・訪問者をもてなすというか、温かく迎えるみたいなものも、僕はあってもいいのかなと思います。
今回新しいモデルハウスを作るにあたって、うちの若い設計のスタッフたちが議論して、「そういうのを解消する・面白くするような新しい間取りの考え方ってないですかね?」ということで1つ出てきたものが、土間デッキです。
土間デッキは、現代的な縁側的なものになり得ます。縁側は腰掛けて外を見たり、近所の人と話したりスイカを食べたり、お父さんが友だちと将棋を打ったり、そんなことがあったじゃないですか。そんなようなものも、ひょっとしたら作れるんじゃないかと思うのです。
縁側だけじゃなくて、さっき広い玄関土間の話をしましたが、例えば自転車がパンクした時にはそこで直したり、お父さんが大工仕事をする時は玄関土間でチョチョッと切ってカンカンと付けたりする作業場になります。
いろんなことに使える、家族のための柔軟なユーティリティスペースみたいなものも、可能性としてはできるんじゃないかなと考えました。
僕は自転車に時々乗るので、モデルハウスの土間デッキは自転車の趣味を展開させてもらっていますが、これをお好みで子どもたちの遊び場にしてもらってもいいし、ママ友の子どもさんを連れてちょっとしたお茶会もできます。
「みんな運動靴履いたままでいいから座ってジュース飲んで!」とか「ケーキ食べたら?」みたいに使ってもらってもいいし、もちろん収納機能も拡張すればできると思うので、そんな感じでやってみたら楽しいんじゃないかなと思います。
冒頭に言った、狭くて暗くて収納があまりないというものを、広くて明るくて収納たっぷりにすること。加えて来客を迎え入れること。これをちょっとカッコよく言うと、住宅を地域社会のハブとして活用するみたいなことです(すみません、藤山和久さんの受け売りです)。
こういう考え方もあることを知っていただいて家づくりをやってもらうと、小さな家を広く、いろんな用途に使えるみたいなことが実現できるんじゃないかと思います。
最後にちょっと宣伝させてください。実は今、僕たちは新しくモデルハウスを建てていて、その玄関・アプローチ部分の一角を土間デッキに仕上げています。このモデルハウスは7月末に完成して8月から見てもらえるので、もし「土間デッキって何やねん」と思う人がいらっしゃったら、ぜひ見に来てもらえたらと思います。
宣伝を入れてしまいすみません。ぜひ参考にしてみてください。
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