趣味を愉しむ家づくりを考える。
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今日は趣味を愉しむ家づくりについて解説します。
「趣味を愉しむ家を考える」って、なかなか大きなテーマですよね。まず、趣味って何か?という所から考えてみます。
例えば、スポーツを楽しむ趣味の人がいます。家づくりにスポーツって関係あるの?と思うかもしれませんが、道具が要るスポーツでは家も大事な場なんです。
私の友人は、アルペンスキーを経て最近はスノーボードをしています。私たちから見たら、ただ滑るだけかと思ってしまいますが、家でボードにワックスをかけたりするそうです。すごく綺麗にワックスをかけて「どうや?」と写真を送ってきますが、私には意味がわからないという感じです。
他にも、ゴルフならゴルフの道具を手入れしたり、野球もスパイク・グローブ・バットなど、いろいろな道具があります。サッカーも、ボール1つではないですよね。いろんな道具の手入れをしないといけません。
それから、自転車が趣味という人もいます。自転車は家で結構いじります。ピカピカにして次に行きたいという気持ちがあります。また、神戸にいらっしゃるお客さんでは、バイクが大好きなシニアの方もいらっしゃいます。この方はバイクを家に置いています。
それから、私が元来好きな工作もあります。最近はできていませんが、プラモデルから始まりまして、こう見えていろんなことをゴソゴソやるのが元々好きなんです。
それから、私のある友人は、最近華道をやっているそうです。お花を極めて、お花をある程度広げてやったりしているそうです。ギャラリーで自分の作品を並べたりもしているそうです。私のおばちゃんは七宝焼をやっていて、七宝焼のギャラリーを作ったりしています。
また、機械をいじるのが好きな人もいます。家でできるかどうかという点はありますが、例えば車は無理かもしれませんが、バイクぐらいならエンジンを触ることもできるのかもしれません。
それから、植物いじりもあります。多肉草や、サボテンの小さなものを上手に接ぎ木したり、苔を付けたりして、トトロが持って出てきそうなかわいらしい物を作ってらっしゃる人もいますよね。
それから何より、結構多いなと思うのは、人との交流です。私の地元の姫路は祭りが盛んなんですが、私の友達でも祭りのメンバーが集まって、いつも酒盛りしてるということがあります。
それから、普段は仕事が忙しくても、土日に子どもの遊び相手になってあげるお父さんもいますよね。男の子だったら、男友だちが来て「かまへん」「一緒にやろう」と言って一緒にワイワイ遊んでいるような光景もあります。それから、近所のママ友が家に寄ってお茶を飲んだりするようなことも、趣味の1つじゃないかと思います。
こういうことを愉しむ家って、どんな家かな?ということを考えてみました。そこでふと、少し前に築100年の農家のお家を解体して、新しい平屋の大きな家を建てさせていただいたことが思い浮かびました。築100年のお家です。すごいですよね。解体する前に見に行きましたが、「すごくいいな」「懐かしいな」と感じました。
典型的な田の字の家でした。造りとしては、まず玄関があって、大きな土間があります。そしてその土間には、大きな物置きみたいなものがありました。小上がりのようなちょっとしたステップもあって、そこには腰も掛けられるようになっていました。
そこから家に上がると、続き間になっています。床の間があって、仏間があって、広縁という、いわゆる縁側みたいな所があって、裏側には濡れ縁もありました。昔は水屋と呼んでいた、食器を置く所もあって、そこは塞いでありましたが、囲炉裏が切ってあったと思われる所もありました。
囲炉裏の隣にはまた土間があって、そこには掘り抜き井戸があって、奥にはおくどさん(かまど)が並んでいて、お勝手もありました。
何とも言えない情緒があって、こういう造りは良いなと、田舎の家はこんな家が多かったなと思いました。
このお家の特徴は、玄関のスペースがとても広いことです。土間を通って、奥の台所に行けるんです。そしてこのスペースが、先ほど話した趣味や社交の場になっていたんです。ここに、日本の1つの合理性と言うか、空間の利用のうまさを改めて感じて、「なるほどな」と思いました。
このお家があるのは、周りに田畑もあるような所です。隣の人が「大根がたくさんできたから」と持ってきてくれて、「あらあら◯◯ちゃんごめんな」「白菜もかいな」みたいな感じでそれをもらって、「ほんなら、ちょっと座っていって!」「お茶でもくむわ」と言っているような光景があります。
百姓仕事をしている人は、足も土が付いていたりします。ですから、家の中まで上がるわけではありませんが、「角だからちょっと座らせてな」と座って、ひと息ついて、お漬物のお茶請けや熱い番茶を出したりします。おばあちゃん2人が喋っていて、そこへ近所のおばちゃんが「声がするから来た」と言って、盛り上がっています。こういうことが、この玄関のスペースであります。
また、広い土間ですから、ちょっとした仕事もここでできます。雨が降っている時でも日曜大工ができますし、餅つきをすることもあります。よくあるのは、前庭の土間の所でおじさんたちが酒盛りしながら餅つきをしていて、「次お前がつけ」と言われて行くような風景が、私は心に残っています。こういう空間ってすごく良かったなと、そんな覚えがあります。
1つの事例で、BESSさんという会社が「BESSの家 ワンダーデバイス」という、すごく人気のあるお家を建てられています。私も工務店のオヤジの端くれなので、すごく興味があります。代官山に大きな実物の建物があるのですが、「見学させてください」と言ったら「どうぞどうぞ」と快諾してくださいました。
とても面白い空間でした。ガーッと開けたらバーンと広くて、山小屋の中みたいな感じになっています。家の中にはしごがあって、上に上がれて、そこからシューッと消防士みたいに降りられるようになっていて、これは楽しいだろうなと思うお家でした。
BESSさんのホームページを見ると、「楽しむ生き方をする」「寛容さ」「家は全部遊び道具」「内も外も関係ない家づくりが良い」などということが書いてあります。これは趣味性の極地だということも、すごく思いました。
BESSさんの家にも相通ずる所だと思いますが、やはりポイントは、玄関を拡張するということだと思います。これは、古い生活様式に馴染みのある人にはあまり抵抗感がないかもしれません。しかし、今時の玄関ってすごく狭いじゃないですか。だから、そういう生活様式に馴染みのない人にとっては、玄関を拡張することにはすごく抵抗があるかもしれません。
しかし、玄関を拡張するとメリットがあります。まず、玄関周りの側に収納がたくさんあると、比較的家の中が片付きやすいです。家の中まで持って入らなくても、入り口に置いておけば済む物ってありますよね。そういうものを入り口に置いておけたら、家の中はスッキリします。
サニタリーも広く取って収納もしっかり取った方が、家は散らからないよと、いつも私は言うのですが、玄関も同様です。先ほど例に出した昔のお家は、玄関でいろんなことの決着がついています。だから、こういう風な昔の家は、何も置いていない続き間が成り立ったんのだと思います。
最近、ある建築家のお話を聞いた時に感銘を受けたことがあります。その方は、「最近の家には格式がないね」とおっしゃっていました。「どういうことかな」と思って聞いていると、「格式とは、豪華だとかそういうことではなくて、外部の人をきちんと受け入れるような形になっているかということなんだ」とおっしゃっていました。
最近は、玄関に来る人と言えば宅急便のお兄さんぐらいしかいませんよね。しかし昔の玄関は、先ほどお話しした土間のように、近所の人が寄ったら「ちょっと座って」と言えたり、そこに綺麗な花が生けてあったりして、人をお迎えできる空間でした。内なんだけど外に開いていくような、そういう空間がありました。
こういうものを持って、その建築家の方は「格式」とおっしゃっていました。「家の格」などと一口で言っても、奥が深いものだと、すごく勉強になりました。
家をどういう造りにするかについては、いろいろやり方はあると思います。私が考えるものでは、先ほどお話ししたような通り土間や、三和土(たたき)があります。三和土とは、土・石灰・にがりを混ぜて叩いて圧縮して、グジュグジュしない固い状態にした所です。こういうものが家にあると、趣味を愉しむということに関して面白いのではないかと思います。
趣味を楽しみたい・そんな家づくりをしたいという方はぜひ、こういう視点もあって、それをアイデアとして生かすことも考えてもらうと、家づくり・間取りづくりの幅が広がるのではないかと思います。
最後に、少しだけCMさせてください。今、若手のスタッフたちが中心になって新しいモデルハウスを建てています。
お客様の家は、当然お客様が希望される家を作るのが、私たちのミッションです。しかし私たちは、新しい生活の切り口というのも示したいと思っています。
この10年ぐらいは1〜2年に1回ぐらい、何か新しい切り口のコンセプトを入れてモデルハウスを建てています。今回は若手の子たちが、「趣味を楽しむ家・町に開いていく家をやりたい」となかなか高尚なことを言ってきました。
「だったらやってみよう」ということで、昔のような土間ではないかもしれませんが、いわゆる通り土間の概念・三和土の概念を取り入れた家を考えています。玄関を拡張して、玄関先で趣味を楽しむイメージです。
BESSさんの家「ワンダーデバイス」もすごく素敵だなと思いましたが、私が1つ思ったのは、これは仲の良い夫婦じゃないと無理だなということです。
ワンダーデバイスの家では、夫婦共に同じ趣味が好きだから成り立つのだと思います。例えばキャンプ好きな旦那さんは、キャンプ道具を広げて磨いたり、パッキングしたりしたいけど、旦那さんは好き・奥さんはそうでもないという場合もありますよね。
「旦那さんは玄関の土間で趣味をやって、私はリビングでゆっくりするから」とか「俺に好きなことをさせて!その代わり君も好きなことをしたらいいから」という夫婦のバランスもあります。そういう場合には、 BESSさんの家は住み手を選ぶ家ではないかと思いました。
夫婦のバランスがそうではないけど、趣味もやりたいという時には、リビングはリビングできちんと作って、趣味のスペースは趣味のスペースで作るという作り方がいいと思います。
今回のモデルハウスは、2階リビングという概念と、玄関拡張・通り土間の概念を融合した形になっています。今年の7月末ごろには完成すると思います。またどこかでご案内しますので、姫路近辺で見に来られる人がいらっしゃったら、ぜひ見に来ていただいて、辛口な評価もしてください。
今回は松尾先生にご指導いただいて、新型の小屋裏エアコンなどにもトライしています。話のタネでもいいし、自分の家づくりにちょっとしたエッセンスとして取り入れていただいてもいいですし、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。
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