2階リビングのメリット・デメリットを再考した
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今日は2階リビングの考え方について解説します。
家づくりを考える時に、多くの方が1階にリビングを配置するというご希望をお持ちです。しかし最近では、2階にリビングを設けるのも良いのではないかと思うようになりました。そのことについて、一緒に考えていきたいと思います。
2~3年前ぐらいに、2階リビングのメリットとデメリットを解説した動画を配信しました。
▼2階リビングのメリット・デメリット
https://www.m-athome.co.jp/movie/2f_living
まず、2階リビングの家を建てた場合のメリットです。1つ目に、日当たりが良いことです。1階部分は、どうしても隣近所の影響を受けやすいです。草原の一軒家であれば関係ないかもしれませんが、都市部のように隣近所に家が密集している環境では、1階はどうしても影ができることが多くなります。
2階リビングであれば、結構な確率で窓からの光をきっちり採り込むことができるので、日当たりが良いです。また、1段高い位置にあるので、眺望も良いことが多いです。もちろん、目の前に何があるかによりますが、眺めが良いというのはメリットの1つだと思います。
2つ目が、今回一番のポイントです。プライバシーが保たれるという点です。リビングが1階にある場合、どうしても泥棒が侵入しやすくなったり、家の前を通る通行人からジロジロ見られるという問題があります。そういう意味では、リビングが2階にあるとプライバシーが保たれやすく、防犯性も高まります。
例えば、引き違いのガラス窓は一番割りやすいとされています。しかし、ハイサイドライトという上部の高い所に設置する窓にすれば、泥棒も入りにくくなります。このように、2階リビングはプライバシーと防犯性の観点からも大変有用です。
3つ目に、意外な所ですが耐震性が強いという点があります。もちろん1階リビングだから耐震性が弱い、ということではありません、しかし2階リビングにすると、1階にそれを支える間仕切りが増えます。2階リビングの設計では、1階がプライベート空間となるため個室が多くなり、その結果耐力壁を入れやすいのです。これらのような点が、2階リビングのメリットと言われています。
一方、デメリットを考えてみます。1つ目に庭の問題です。1階にリビングがある場合、敷地に少し余裕があったら、リビングとつながる庭を作り、そこから庭を眺めたり、庭いじりができるという点があります。しかし、リビングが2階にある場合、そのような庭づくりは難しくなります。
2点目に、歳を取って、2階に上がれなくなるのが不安だという問題です。私ももう60歳で、親は80何歳という年齢になってきています。私の親はまだまだ元気ですが、親の友人の中には体が思うように動かせない方が増えてきています。こういう時に、2階リビングはいよいよ苦になってくると思います。
これに対しては以前もホームエレベーターや階段昇降機があるというお話をしました。ホームエレベーターはイニシャルコストが300万円ほどかかります。年間の保守料も、5~10万円ほどは必要になります。歳を取ってから必要なのに若い時は使わないという問題もあるので、そのスペースだけ確保しておけばいいのでは、という話を以前にしました。
しかし、実際にその年齢になってからホームエレベーターを設置するかというと、迷うことも事実です。そこで私がおすすめするのが、階段昇降機です。これは直階段だけではなくて上曲がり・下曲がり・U階段でも使えます。
そしてなにより、リースがあります。買い取らなくてもリースで対応してくれるので、最晩年にどうしてもそういうものが必要な時に、後からそれを付けることができます。
2階リビングについては、メリット・デメリットの解説で終わりではなく、今回取り上げたのは1つ理由があります。それは、今の日本という国を眺めていると、大きい意味の都市回帰が起きていると感じるからです。
少し前にも報道されていましたが、50年後の日本の人口は、今の30%ほど確実に減少すると言われています。現在、約1億3000万人いる人口が、7000~8000万人を切っていくことになります。その中で問題になるのは、公のサービスを受けるのが厳しい時代に入るということだと強く思います。
今でも、地方に行くと古くなった橋や道路があります。メインの道路はもちろん綺麗にしてありますが、少し枝分かれした奥の方の道は崩れたままになっていたり、渡ってはいけないと書いてある橋などもあります。いわゆる都市インフラというものは、だんだん管理がしにくくなっているということです。
もっと言うと、今は当たり前に毎日ゴミを出して、それを回収してくれたり、雪国なら除雪してくれたりしています。しかし、ものすごい過疎地域には除雪車が行かないので、おばあちゃんたちが陸の孤島のような所に住んでいる、という話も聞いたりしますよね。
つまり、世の中はスモールシティに向かっているんです。今までは、人口が爆発的に増えたから、都市部を広げて郊外をどんどん開発して、団地も作って、外へ外へ広げていくことをやっていました。
しかし、人口がまばらになってきたら、学校が統廃合されたり、行政サービスが変化したりする問題が出てきます。毎週来てくれていたゴミの回収が2週間に1回になったり、もしかすると来なくなることもあるかもしれません。
このような問題はおそらく、みんな何となくわかるんだと思います。だから都市部に回帰しているんだと思います。都市部のマンションが売れているのは、そういうことだと思います。
都市回帰が進むと発生する問題の1つが、都市にある宅地の余地は、狭小地が多いという問題です。敷地にもある程度制約があったり、道路付けにも厳しさがあったり、周りに家が建て込んでいるという状況になります。
このような状況では、従来の考え方である1階リビング型の住居が馴染まない所も増えてきています。もちろん、地域によって強弱がありますので、全く関係ない地域もあります。
私自身は、現在姫路という中核都市に住んでいます。大都市でも小都市でもないある程度の規模の都市ですが、ここに住んでいてもやはりそのような問題を感じることがあります。そして、おそらくこの姫路という街も、都市回帰の影響を受けていくのだろうと考えています。
ですから、これから家づくりを考えている方や、都市回帰を考えている方。あるいは、ご両親やおじいちゃん・おばあちゃんから譲り受けた土地が、狭小地だけど都市部にあって、周囲に施設や学校、病院などが揃っていて条件の良い場所にあるという方。そこで家づくりを考えられる方は、ぜひ2階リビングの選択肢を頭に置いておいてほしいと思います。
そういう面で、もう一度2階リビングについてよく考えてみます。現在、平屋の家が人気ですが、この最大の理由は1つのフロアで家事が全て完結することだとをおっしゃる方がとても多いです。2階リビングの家も、このように家事が全部1フロアで完結するように作りやすい傾向があります。
それから、2階にリビングを持ってくると1階の玄関付近に広くスペースをとれるという点があります。なぜメリットなのかというと、玄関に収納がある方が家が片付くからです。
家の奥までは持って入りたくないけど、家の中に置きたい物ってたくさんありますよね。趣味のことをやりたいという方も、やりやすくなります。場合によっては、ビルトイン車庫も取れるかもしれません。
敷地で考えたら駐車場になるような広さは取れないけど、スペースを家の中に食い込ませたら、車庫スペースを取れるということもあります。2階にリビングを持ってくることで、狭小地でも車庫スペースを取れるということです。
そして何より、プライバシー性のメリットがあると私は思います。
一般的には、寝室や子ども部屋をプライベートゾーンと呼び、リビングやダイニングはパブリックゾーンと呼びます。プライベートゾーンは外部の人と接触しない場所、パブリックゾーンは一定の接触がある場所、という分け方をすることが多いと思います。
ここで、私は最近しみじみ思いますが、リビング・ダイニングって実はプライバシーゾーンですよね。
私はもうおじさんなので、短パンとTシャツで家でゴロゴロしていて、それを隣の家のおばちゃんに見られても、恥ずかしいと思うような羞恥心がなくなったようなおじいちゃんになってしまいました。
しかし、私の妻は嫌がりますよね。私の母も、もう80何歳という年齢ですが、彼女はレディーなので嫌がりますよね。そんな所をジロジロ見られたくないという点から考えると、究極のプライバシーを保持したリビング・ダイニングにするならば、リビングは2階でも結構良いと思います。
1階部分にしっかり防犯プロテクトをしておいて、2階は窓を開けて春の涼しい風を入れたり、秋の爽やかな風を入れるようなこともできます。そう思うと、2階リビングを嫌わなくてもいいのではないかと思います。
何より、私たちはパッシブ設計という、太陽の光を積極的に使う家の設計をしています。例えば、南側が道路で日当たりがバッチリの土地は、みんな欲しがります。日当たりのいい家を建てたいと言って建てられます。
しかし、1階をリビングにしたら、前にも他の動画で言いましたが、カーテンは閉めっぱなしという状況になっていることもあります。例えば共働きで、日中外に出られている人は、太陽が一番当たって、一番熱が家に入る時に、カーテンを閉めたり、果てはシャッターを閉めたりしている人がいます。
そうすると、せっかくパッシブ設計で家を建てているのに冬期の日射取得が全然できません。家の中に熱が貯まらないので、帰ってきたら寒くて1から暖房をかけないといけません。結局暖房費も余分にかかってしまいます。
日中窓のカーテンを開けて、日の光を入れていたら、いくらか熱を蓄えてくれます。17時頃に帰ってきたらまだ家の中がほんのり暖かくて、すぐには寒くないような状態にできれば、過ごしやすいし、電気や燃料も使わなくてよかったのに、もったいないと思うことがあります。
都市部の狭小地、建物が建て込んでいるエリアなど、このようなキーワードに当てはまる人は、ぜひそういう視点で2階リビングというものを考えていただけたらと思います。
最後、1つ宣伝させてください。私たちは、お客様に新たな家づくりの提案をする際、モデルハウスを建てています。そのモデルハウスを通して「こんなコンセプトの家づくりはどうでしょうか」とご提案しています。
今回、初めて2階リビングのモデルハウスを建てています。このお家に関しては、2階リビングのメリットとは何か、ということを考えて取り組んだものになっています。と言っても実際に取り組んでいるのは当社の若手スタッフで、私は「面白い発想だ、やれやれ」と応援しています。
モデルハウスは、2023年7月末頃には完成する予定です。2階リビングをしても、2階が暑くなるから、と思われる方々には、実際にはそうでないことを見てもらいたいと思っています。
松尾先生の指導のもと、新型の小屋裏エアコンという取り組みをしていたり、2階リビングに外部の借景・眺望を取り入れて、どのようにすれば家がより面白くなるのか、ということも考えています。若手スタッフたちがすごく頑張って取り組んでいるので、よかったらぜひ見に来てください。
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