第一種熱交換換気の種類と選び方
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今日のテーマは「注文住宅はどこまで注文できるのか?」です。
先日、他社でご検討されていたお客様から、こんなことを言われました。◯◯社さんは注文住宅が対応可能ということで打ち合わせをしたのに、「これをやりたい」と言ったら「それはできないです」と言われたと。それでそのお客様は憤慨されていました。
そういう風に思う人も多いと思います。こういう失敗は時間の大きなロスになるので、今回はそのあたりの予備知識に関してお話ししていきます。
まず、注文住宅とは一体どういうことか。お施主さん自身がこういう間取りにしたい・設備はこれをつけたい・◯◯メーカーのキッチンにしたい・外壁はこれを塗りたい・内部はこれを貼り付けたいと言って、注文していくことです。
要は、家の隅々まで自分のこだわりを詰め込んで、言わばフルオーダーでできること。そう定義しても、多分みんな文句はないと思います。
それでは冒頭の話がなぜ起きるかと言うと、この注文住宅というものの定義が、個人の方はもちろん業者さんにすら幅があってあやふやだからです。
一方、自由設計という言葉も聞きますよね。最近はコストの関係で、「この規格で気に入っていただけたら価格はここまで頑張ります」という、規格住宅と呼ばれる家がたくさん作られています。それに対して、本当に自由にやりたいなら自由設計という形もありますよ、というものです。
注文住宅と自由設計は、似ていますよね。定義は法律で定まっているわけではありませんが、多くの大手ハウスメーカーさんは自由設計と言っています。大体のプランは間取りだけでなく仕様も決まっていて、間取りの変更だけできることが多いです。
キッチン等の設備を選ぶことはできても、2社のメーカーの中から・3パターンの中からという感じで、内・外装の仕様も含めて非常に選択肢が限定されています。言い換えれば、自由設計はハウスメーカーさんの場合セミオーダーということです。
洋服でフルオーダーだと、きちんと全部測ってくれてぴったりに作ってくれます。セミオーダーは、A体・B体・AB体みたいに分けてあって、比較的体型に近いものを持ってきて「ちょっと襟を詰めます」みたいな感じじゃないですか。
冒頭のお客さんは、業者さんが自由設計という意味で注文住宅と言っているところに、お客さんはフルオーダーだと思って行ってしまったことの齟齬で起きた問題だと思うのです。
注文住宅にしたいと言うと、実はお客様が細かいオーダーをしなければいけません。どういうものを注文するか、ざっくり説明します。
まず工法です。木造なのか鉄骨なのか、鉄筋コンクリートなのか。木造でも在来工法なのか、ツーバイフォーあるいはツーバイシックスなのか、木造大断面ラーメン構造というのもあります。鉄骨造も、実は重量鉄骨というタイプと軽量鉄骨というものに分かれるのです。
RC造は鉄筋コンクリートの1種ですが、柱梁ラーメン構造と壁式という工法があります。これらのうちどれを選びますかと聞かれて、急に選べるでしょうか。
断熱・気密も、内断熱もあれば外断熱もあります。外の付加断熱・内の付加断熱、天井断熱、屋根断熱、床断熱なのか基礎断熱なのか。断熱のやり方や場所だけでもこれだけのバリエーションがあるのです。
もっと細かく言うと、断熱材もグラスウール、フェノール系、ロックウールなどいっぱい種類があります。それも全部注文しようと思えばできます。逆に、どれにしたいですか?と問われるということです。
外装もサイディング、モルタル塗り、漆喰塗りもあります。ガルバリウム鋼板でやる時もあるし、ALC造というものもあります。
さらにもっと根本的なのがモジュールです。1軒のお家って何畳とかで表わすことが多いじゃないですか。ざっくり90cm×180cmが一般的な畳の寸法で、サイズの基準になります。私たちが尺と呼ぶものは、1つのマス目が910mm×910mmのものが多いです。915という寸法でやる変則の家もあります。
お歳を召している方は、よく「本間(ほんけん)じゃないとアカン」とおっしゃいます。あれは955mm角です。今は鳴りを潜めましたが、一世を風靡したメーターモジュールという1m真四角のものもあります。
このモジュールをどう取るかによって、家はまるっきり変わります。同じ6畳と言っても、尺の6畳とメーターモジュールの6畳は広さが違うのです。
ちなみに私は尺を勧めることが多いですが、なぜかと言うとメーターモジュールはマスが大きすぎて、面積の割に間取りが面白くないしやりにくいからです。
どんどん専門的になっていきますが、階高・天井高も決める必要があります。建物は柱と梁で構成されていて、横架材と言われる梁の寸法の所を階高と言います。これを何m何cmにしますかと聞かれても、普通は答えられないですよね。
天井高はさらに内側の区切りで、一般的には2.4mが多いです。建築基準法的には2.1m以上と言われているから2.1mでもいいし、勾配天井であれば一番低い所が2mでも別にやれます。
カッコいい外観の家が欲しい、と言う人が時々いらっしゃいます。階高はみんな気にしていませんが、実は家の外観には階高が影響するのです。
一般的には、階高が低い方が建物はカッコよく見えます。少し低めで重心が下がっている方が、美的です。一方で天井高が十分欲しい、2.4mあるいはもっと高い2.7mにしたいとなると、外観を綺麗にするのはプロでもしんどいバランスになります。
屋根の形状も、ハウスメーカーさんはほとんど寄せ棟ですが、切妻・片流れの方が太陽光発電を載せるのに有利なので、多く選ばれています。
もっと言うと、空調方法もあります。大手ハウスメーカーさんはこれまで、エアコンはお客様でどうぞでした。ヤマダ電機さんとか量販店さんに行って、自分で普通のエアコンを買っていました。
今や全館空調が当たり前になりつつある中で言うと、空調室を作る全館空調もあれば、アメニティエアコンでダクティングするものもあります。
私たちが得意としている床下エアコンとか小屋裏エアコンとか、人によっては階間エアコンという1階と2階の間を利用するエアコン方法もあります。
床下エアコンは、寒い地方だとFF式のストーブを使うやり方もあります。こうしてちょっと言っただけでも、これほど多くの選択肢があるのです。
冒頭に怒っていらっしゃった方が注文住宅をしたいとなると、工法・断熱・気密・モジュールなどを1個1個理解して決めていかなければいけません。でも事実上、それを素人の方が決めてプロの方に「こういう内容で注文住宅を検討してほしい」とは言いにくいですよね。
注文住宅という言葉の持つ意味に憧れるのはよくわかります。本当に望むなら、自分がそこまでの判断ができるかを考える必要があるということです。しかし実情は、全てを決めたいわけじゃなくて、こだわりを実現したいだけなんだというケースが多いと思います。
だから注文住宅を利用する時は、現実的には自由設計という形で、たくさんある選択肢の中で自分がこだわりを実現したいところを明確にしてください。
例えば屋根断熱にしたいなら、屋根断熱ができる業者さんなのか確認が必要です。あとのことはよくわからないので、逆にプロの立場から「これが今いいですよ」というのがあったら教えてほしいというスタンスの方が、一番スムーズにいきます。
これがないと、実は階高を抑えたいということになったりします。もっと怖いのはモジュールです。尺のモジュールとメーターモジュールを複合でやりたい時も稀にあるからです。
こだわりを絞れば会社さんは一定数絞られます。もっと言うと、木造は得意だけど鉄骨はそこまで得意じゃないとか、サイディングを張るのは得意だけど塗りは得意じゃないとかもあります。注文住宅・自由設計と謳っていても、そこが何なのか見極めが必要です。
最後に注文住宅の欠点を言うと、当たり前ですがプランニングする時間が長くなります。設計検討も工期の一部なので、工期はゆったりしてもらわなければなりません。プランニング検討と同時に構造検討もいるので、ある程度の余裕が必要です。
自分の要望を盛り込んでいくので、予算がオーバーしてしまう傾向もあります。その反対に良いこととしては、プランニングが自由にできたり階高が自由にできたりしますよね。
草原の一軒家なんかはあまり関係ありませんが、都市部で建て込んでいる所に建てる時は、うまく敷地の中を縫って太陽に素直な家(冬はしっかり日を取り込んで夏はしっかりカットする家)が作りやすいです。
あとはいろんなことが選べるので、引き算の家づくりができます。理想の家をやろうと思うとあれもこれもとなりますが、本当に必要なものは意外と少なくて、実は引き算がしっかりできる家づくりをする方が最終的に結構いい家になります。
有名な伊礼先生なんかは、引き算の設計ですよね。あらゆるムダが排除されていて、純粋に大事なものだけ残ると素晴らしい設計になります。
自分はある程度こだわりもあるけど時間も短縮したいとか、決められないことはプロに決めてほしいなら、標準化がしっかりしている会社さんがいいです。あるいは大手ハウスメーカーさんもいいと思います。
大手ハウスメーカーさんは工業化認定を受けているので、やることをすごく制限しています。一番の理由は、より安全に間違いがないようにということです。それ故に、ギリギリを攻めて本当に欲しいものをやることはちょっと苦手みたいな構造もあります。
大手に対して注文住宅というスタンスで望むなら、そこを理解していないと時間のムダになったり、思った家にならないことがあります。
本当のフルオーダーになると、設計事務所さんとかゼネコンさんの施工でやっていくと思いますが、その時は予算がオーバーしやすくなります。
工務店もそうですが、設計事務所さんでも標準化がある程度取り組まれているところを選んで、本当の意味で自分にフィットする家を望んでいくのが正しい道ではないでしょうか。
注文住宅という言葉は誰でも使うけど、非常に広い意味があって、ポイントは意外と狭いんだということだけ理解してもらえたらいいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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