南側の大きな掃き出し窓を考える
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今日は南側の大きな掃き出し窓についてご説明します。
我々日本人は、古来から日当たりとか通風をすごく大事に思っていますよね。そういう中で、家づくりには南側に大きな掃き出し窓を持ってくるという着想というか希望が、結構あるじゃないですか。そのことについて今日は考えてみたいと思います。
掃き出し窓とは、大きな窓をガッと開けたら床面とほぼ揃(ぞろ)でフラットになっていて、ゴミとか埃を掃き出せる窓のことを言います。だから掃き出しと言うのです。
和風建築で考えた時に昔はどういう窓をやったかというと、今は茶室とかに多い地窓というものがあります。人もくぐられないぐらい低くて明かりを取るための窓がありますが、それを本当は掃き出し窓と言いました。
今はそれが拡大されて、背丈以上の大きな窓を掃き出し窓という風な総称で言います。みんな掃き出し窓と言いますが、本来の機能はゴミと埃が掃き出せないといけないのです。
しかしどうでしょう。今はみなさんの家に座敷箒などあるでしょうか。外箒や竹箒とかは置いてある家もあると思いますが、座敷箒という昔よく畳の上を掃いていたような箒が家にある人は少なくなったなと思います。
ルンバや掃除機で掃除をする現代においては、窓についても求めるものが変わってきたというようなことがあります。
一方、私は松尾先生の弟子なので、パッシブ設計を家づくりの中心に置いています。松尾先生がおっしゃる「太陽に素直な家を作らないといけない」という言葉から、「南に大きい掃き出しは必要だ」とみなさん思われるじゃないですか。
ごく一般的に、日本人なら大きな掃き出しを建物の南に付けるというのは、鉄則というかお約束みたいな感じになっているのです。今日はそんな南の大きい掃き出しというものを、少し違う視点で吟味してみたいと思います。
例えばよく10区画・20区画の大きな分譲地があるじゃないですか。ああいう所を歩いてみると、こんな光景が多いと思います。2階建てのお家で南の掃き出しがしっかり付いているのですが、その窓がカーテンの色なのです。ピンクのカーテンならピンクのカーテン、みたいな感じで見えています。
これは夏・冬に関わらず、共働きで日中いらっしゃらないことも関係しているかもしれません。ですが、主婦の方とか小さな子どもさんの声が聞こえるような家でも、カーテンを閉め切っておられるところが多いですよね。
ドレープのしっかりしたカーテンじゃなくて、レースのカーテンをするぐらいならマシで、一番すごいのは雨戸あるいはシャッターを閉めているところです。パッシブ設計を考えて、掃き出しの機能として一番求めているのは日当たりと風通しですが、明るい光も気持ちのいい風も入らないようになっている窓がものすごく多いのです。
では、なぜ人はこういうものを選ぶのか。今例に出した分譲地というのは注文住宅で、土地が売り出されてその上にいろんな会社さんで注文住宅が建てられています。だから、自由設計の家なんです。
もっと強烈なのが、建て売りと言われている分譲屋さんがお客さんを付ける前に自分たちで建てて、「さぁこれどうですか?」という家は100%掃き出しまみれです。それって素人が設計したんじゃなくて、玄人が「どうですかこの家!」と思って設計した家ですよね。
素人の人が自分の希望を叶えた注文住宅もしかり、玄人がガチッと提案した家もしかり、南の掃き出し窓は当たり前のように付けられるのです。それはなぜかというと、ある大設計家はこうおっしゃっています。「固定観念以外の何物でもない」と。
また、こうもおっしゃっていました。「気の利いた設計者なら、もし敷地の南側に道路があったら、普通は採光や通風を考えて別のアプローチをするよ」と。そのアプローチをしないということは、固定観念が強い人が設計したのだろうとおっしゃいます。
分譲屋さんがこれを聞いたらなんと答えるか、考えてみました。こう言うと思います。「そうしないと買ってもらえないんです」と。それぐらい、住み手の方も南に大きい掃き出しがないと不思議に思われるんだと思います。
しかし実際に住んだら、南に大きな掃き出しを望んだのにカーテンを閉めっぱなしにするお家がとても多いということなのです。
前述の大設計士の先生に「先生だったらどう料理します?」と聞いてみました。例えば東の方にハイサイドライト(高窓)という窓を付けることを考えるそうです。掃き出しは、床面から背の高さぐらいまであります。ハイサイドライトは、天井ギリギリから下に向けて伸ばした窓のことです。
あるいは南でも、床じゃなくて天井にしっかり付いたハイサイドライトを取り付けて、上からの光は降り注ぐけど足元は道路からつぶさに見えないようにやるとおっしゃっています。
もっと言うと、太陽に素直な家にすると冬は日当たりが大事だからいいのですが、夏は南の大きい窓って拷問の道具になるのです。とても暑くなってしまいます。
その先生は、夏には絶対庇が欲しいとおっしゃいます。屋根の掛け方が妻側だったら余計にです。桁側でやっていれば庇が出せるから2階はマシになりますが、1階は総2階だったら効きません。
せっかく家を作って住むなら、パッシブ設計にして快適に過ごしていただきたいし、リビングで人の視線ばかり気にせず自由におおらかに過ごしていただきたいです。南側の居室ということも味わっていただきたいのです。
ということで私からの提案としては、窓は掃き出すという機能、それから大きい窓で太陽の光がしっかり入る機能も大事ですが、生活のシーンで考えてほしいのです。
リビングの窓を閉めてる人は、要は外から見られたら嫌なんですよね。留守中に泥棒に見られたら嫌だから、閉めてるのだと思います。そういう外からの視線をある程度カットするとなると、前述の先生みたいにハイサイドライトという選択もありますが、私は外構と設計を併せることだと思うのです。
南側道路はありがたいじゃないですか。南が空いているんだから。でも、そこに駐車場しか作らないとか、道路から1〜2mでいきなり掃き出しがあると、カーテンを閉めることになります。だから、必ず目隠しをする必要があるのです。
私たちがよく勧めるのは、道路側に2mをちょっと切る198cmぐらいのフェンスを立てて、内側に1m50cm〜1m80cmぐらいの建物の配置を空けることです。
1階の床面は地面から5〜60cm上がるので、実質部屋内からは高い塀ではなく1.4mとか1.3mしかなくなるので、日も入るしストレスもないと思います。外側からは2m近くあれば人の視線はほぼカットできますので、太陽の光を享受しつつ、プライバシーの影響も気にせず住めると思います。
掃き出し窓と言ったら本当にフラットで、ゴミが箒で掃けるぐらいじゃないと掃き出しじゃないから嫌だという人もいると思います。私も古い人間なので家でも座敷箒を使っているし、どちらかと言うとそのタイプです。
ただ、窓の仕舞いによってもいろいろ変えられます。ハイサイドライトまでいかなくても20cm高くなれば変わるというところも含めると、掃き出しじゃなくて出入り口窓でもいろんなことを見出せるはずです。
「自分の生活シーンはどうかな?」「ここのスペースでどういう暮らし方をしたいのかな?」とか、そういうことも頭に置いて掃き出し窓を選んでください。
まだまだ多くのプロも固定観念に縛られているケースが多いです。お施主さんこそが建てたらずっと住むのだから、少しそこに気を張って注意してもらえたらと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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