残念な表札にならないポイント
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今日は表札について解説していきます。
家づくりの仕上げには、庭を作り込んでいくと思います。そして最後に取り付ける物として、表札があるじゃないですか。すごく家をこだわって建てられていて、素敵な家だなと思うけど、表札を見て「ん?」と思う時があったりします。お客様によっては「表札ってどういう風にしたらいいんですか?」と聞かれることもあるんです。
表札を見てちょっと残念だなと思うパターンが、大体3つあります。その1つが、名前が見えにくい表札です。表札というのは、表に出す名前を書いた札のことを言うので、第一要件としては名前がわからなければなりません。
2番目によく思うのが、素材のチグハグ感です。表札はいろんな素材を使って作ることが多いので、素材の選び方・名前の字体の選び方や、それらの組み合わせ方にもうひと工夫あった方が良かったんじゃないかというケースがあります。
3つ目が表札の付け方です。「そもそも表札ってどこに付けたら良かったの?」と後から出てくるように、お施主さんの思いとは違う場所に付けてしまうことがあります。大きく言うとこの3つが、残念だと感じる時かなと思います。
例えば私の昔の体験だと、うちの表札はヒノキの板に墨汁で書かれたものでした。父が達筆な書道家に頼んだのでしょう。名前を森下杉吉と言うのでそう書いてましたけど、僕もよく覚えています。親父が新築した時、真新しい所に立派な綺麗な表札を掛けていました。それをどこに付けたかというと、玄関の引き違い戸の上だったのです。
うちの家は、事務所の車庫の中を通ってから玄関に行くような造りで、玄関まで行かないとその表札が読めなかったため、多くの人が「ここは誰の家なんだろう?」と思っていたと思います。
また、木なので日に焼けるんです。白木に墨汁だから、作った時はすごくカッコよかったのですが、5〜6年経った時に気がついたら何が書いてあるかわからない状態になっていました。私は息子なのでわかるけど、よその人は絶対にわからないだろうなと思いました。
そういうことが現代版でも結構あるんですよ。そういう過去の経験から照らして、今よく起きてる問題を言っていきます。まず1番の「名前が見えにくくて残念」問題ですが、昨今は個人情報とか自分のことをつまびらかに見せることが好きじゃない方とか、慎重な方が増えてきましたよね。表札とは言いますが、そもそもお施主さんは名前をハッキリ出したいのかどうか。名前を出したいのなら、字として読めなければならないと思います。
例えば私は森下という苗字です。私にとっては何かと言うと、哲学的になりますが、アイデンティティなのです。「俺は森下」という意識付けがあるから、「俺って俺なんだ」みたいなところがあるぐらいなので、1つのイメージというかシンボリックなものみたいな側面もあります。
「俺の家の印なんや!」みたいな感じでやれば、名前だけど1つのマーク・記号になるみたいな、そういう作り方もあります。必ずしも名前として認知できなくてもいいと言う人もいるじゃないですか。子どもたちがその家で育ってくれたら、「うちの家のマークはあれ!」みたいな感じにもなっていいですよ。
それから最近は、いろんなメーカーさんに発注することが多いので、名前のフォントが選べます。汎用フォントの組み合わせで自分の名前を印字したり、刻印してもらうことが一般的です。明朝体とかゴシック体でカッチリするのもアリだけど、それでは芸がないから手書きフォントやちょっと変わったタイポグラフィーを使うこともあります。
その時に、時々起きる失敗があります。私自身も過去に経験がありますが、お施主さんにイメージが違うと言われるのです。例えば”大蔵”という画数の多い苗字の方がいるじゃないですか。大蔵さんを手書きフォントで表札に印字したらカッコいいのです。しかし一方、森下はスカスカしていて密度がありません。大蔵さんだととてもカッコよかったけど、森下にしたら思っていたのと違う、みたいなことがあるのです。
汎用フォントを選ぶ時に必ずしてほしいのは、実寸大にプリントアウトしてもらって、実寸大で確認することです。そうすると、自分の苗字にしっくりくるのもあれば、サンプルの苗字は良かったけど自分の苗字にしたらダメだったということがあると思います。ぜひここは注意してください。
今マンションとかに行くと、201号室・301号室と書いてあって全然名前が入っていない所があります。特に独身女性が住むようなマンションは、名前が絶対に入っていないですよね。名前を出したくない場合は、住所を表札みたいに見える所に出して、郵便物とか宅配の受け取りは確実にやるみたいな形にもできます。そもそも私は名前を明確に出したいのか、記号として出したいのか、あるいは住居表示だけを伝えて物を受け取りたいのかというところを、考えてほしいのです。
繰り返しになりますが、できるだけ実際の寸法で見てください。表札ってそこそこ大きさがあって、最低でも20cmとか30cmはあります。小さい紙で提案したやつを見るのと、本物の大きさで見るのとはまた全然違います。それは注意してもらえたらと思います。
あとは素材選び・組み合わせです。素材はいろいろあります。陶器、金属(ステンレス・アルミ・チタン・鉄・真鍮など)、木材(ヒノキ・チーク・オーク・イペなど)。石、コンクリートの打ちっ放しもありますが、そういうものは重たいので固定は注意してほしいです。最近はガラスとか樹脂の透明系のやつも結構使います。透かし彫りでやって、透明なんだけど透かし彫りが白く見えるから字が浮かんで見えたりするものもあります。
素材は好き好きですし、実際にメーカーさんが作っている物を見た方が選びやすいと思います。なかなか自分でこんなのを作りたいと計画するのには限界があるので、メーカーさんの製品を調べていただきたいです。
ここで注意していただきたいのが、例えば白地に森下と書いたらよく見えますよね。メリハリもつくじゃないですか。しかし、グレーや石目柄に黒字で森下と書いたら見えなくなる問題があります。さっきも言ったように単なるマークならアリかもしれません。名前を明確にしたいなら、素材そのもの・名前の印字の色(彫り込みの挿入される色)は、いわゆる補色・白・黒みたいな感じでメリハリを付けるのか、あるいは限りなく同じ色調にして渋くマットにしたいのか、考えて選んでいただきたいです。
最後はどこに付けるか問題です。付ける場所は3つぐらいしかありません。玄関ドアの側、門柱、塀です。この内のどれかに付けることになると思います。門柱か玄関ドア側がいいかもしれません。
お施主さんが名前を出したくないというよりは、変な人が家の近くに入ってこないようにしたいというニーズが強いんだったら、玄関ドアに表札を付けたりするのはあまり良くないですよね。庭先の道路境界線に表札を付けておいたら、「ここが森下さんの家なんだ」とわかって、用がなかったら入ってこないじゃないですか。誰かよくわからない人がトコトコ入ってきて、「ここの家が森下の家なんだな」と言われるのが嫌だったら、門柱・塀に付けないといけないと思います。
表札・ドアホン(インターホン)・ポスト。大体これらは一体で付けます。住所を表示したのにポストがなかったら、投函できないじゃないですか。住所の下に宅配ポストがなかったら置けないですよね。なので必ず一体になってくると思います。
玄関ドアにドアホンを付けるのもいいですが、どちらかと言うと飛び込みセールスみたいなものは道路境界線上でピンポンを鳴らしてもらって、ドアホンで「うちはいりません」と言える方が楽ですよね。そういうことから言うと、自ずとそこに付ける場所は決まってくるということです。
必ずその時には門送りと言って、配管でドアホンの配線ができるような場所に、建物から電源やドアホンの2芯の線などを送っておいてもらわなければならないことを、併せて頭に置いておいてください。
ちなみに表札に関してはいろんなメーカーさんがあります。代表的なところで言うと、美濃クラフトさん、丸三タカギさん、ディーズガーデンさん、オンリーワンクラブさん。大きいメーカーさんだとYKK AP、LIXIL、三協アルミさん。それぞれカスタマイズできる表札がありますので、これは私が言うより、検索していただいて見ていただいた方がいいと思います。個人的にはユニソンさんも結構好きです。そういうところで見てもらえたらと思います。
あとは文字自体をアイアン・真鍮とかで作ったり、タイルとかアルミ素材と組み合わせたりするのもオススメです。表札って家の中でも最も過酷な目に遭います。風雪に耐えなければならないので、色褪せしないもの・古びても味が出るものを選ぶのが一番いいと思います。
私が結構いいと思っているのが、コンクリートの打ちっ放しの塀をやるのが今の流行りですが、それに挟んだような感じで金属に打ち抜きで苗字を入れるのもカッコいいです。これは表札というよりは塀の一部ですね。
コンクリート打ちっ放しだったら、削って名前を入れてもらったり、文字の型枠をはめたりするのもオススメです。例えばMORIさんみたいに4字でできるようなものだったら文字数が少ないから、綺麗にカッコよくデザインしやすいと思います。
金属の打ち抜きもいいですよ。金属プレートに文字を抜いて、後ろに間接照明を入れます。そうすると昼間もカッコいいですが、夜に後ろからボーッと見えてなかなか渋いです。そんな表札もあることを知っておいてください。
一番最初に言った、名前をテキストとして知らせたいのか・マークとして知らせたいのか・シンボルなのかみたいなところをまず決めていただいて選んでいただくと、面白いというか満足できる表札になるんじゃないかなと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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