家づくりで起こりがちな失敗(断熱材編)
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今日は、家づくりで起こりがちな失敗の中から、断熱材をテーマにお話しします。
寒くなってくると、家づくりの相談の現場の中では、断熱性能を上げたいということで「断熱材は◯◯がいいんですよね?」という質問をされる方が増えてきます。各社の営業マンは自社の工法や材料をアピールすることが多いので、誇張ではありませんがミスリードしているような印象を受けることもあるぐらいです。ちょっとしたことですが、1つのものの見方として大切なことなので、断熱材の選び方について解説をします。
冬はとにかく暖かく・夏は涼しくなる家を作るために、良い断熱材を選びたいというのは、人情として当たり前ですよね。選ぼうと思えば、基準が必要です。みなさんは意外に、基準のことを知らずに曖昧なまま選ぼうとしています。アカデミックで難しく感じるかもしれませんが、まず基本知識を確認していきましょう。
断熱材の性能を表す尺度として、代表的なものが3つあります。その中の2つがよく使われるので、ご説明していきますね。1番が熱伝導率。つまり熱の伝わりやすさです。仮想で1m真四角の立方体があるとすると、内側から外に・外側から内にと、熱の移動が必ずあります。例えば1℃の気温があるとして、それが立方体を通して向こう側に行くと0℃になる。熱って高いものから低い方に移っていく性質がありますから、そういう風に移動していくわけです。立方体(1㎥)の内外温度差が1℃の時に移動する熱のW(ワット)数を、熱伝導率(W/mK)で表わします。Kというのは℃と同じ意味です。これは物質によって決まります。厚さは関係ないです。断熱材のA・B・Cという物質それぞれに、熱伝導率が付与されます。
2つ目に、熱貫流率という言葉があります。これは通称U値という言葉で使われています。最近の家の性能を表す単位で、UA値があるじゃないですか。あれはU値のアベレージのことです。つまり「建物全部の平均のU値がこれくらいだよ」という形で言うのがUA値になります。U値とは、1㎡の壁があるとして、1℃から0℃の熱の移動の時にどれだけのW数を使うかということで表されるものです。つまりこれは、物質の質とその断熱材の厚みで決まります。
1と2は共に数値が小さいほど、性能が高いと言われています。例えばこういう話は、営業の現場ではどういう説明になるかというと、「当社はフェノール系断熱材(商品名で言うとネオマフォームさんみたいなやつです)を使っていて、国内最強の断熱材と言われています。最強ですからいいですよね。何が最強かというと、熱伝導率がとても小さいのです」と、セールストークを進めていくわけです。
世間で一番流通してる断熱材で、時には悪者のように言われる断熱材に、グラスウールというやつがあります。あれはどうなのかというと、「あまり良くないと聞きますよ」とか「結露が起きるんじゃないか」みたいなことを言うこともあるのです。熱伝導率が小さい建材を使っている会社さんは、さっき言ったように「うちは最強のを使ってますから」とか「上級のやつを使ってますから」と言葉で誘導していきますが、問題はそこではありません。
断熱材って、物質の性質の差があるとしても、当たり前ですが薄いより厚い方が効くのに決まっています。つまり厚み問題というのは結構大きいのです。例えばうちの会社だったら、16kgと言われる密度の高性能なグラスウールを使うことが多いです。壁って105mmの柱を
使うことが多いので、10cmとか10.5cmぐらいの断熱材を使っています。熱貫流率という視点だと、グラスウールの熱伝導率が0.038と言われていますが、これを10cm(0.1m)で割ると熱貫流率は0.38W/㎡Kという形で出てくるのです。
ではフェノール系断熱材はというと、壁であれば現場で使うのは5cmぐらいが多いです。確かに熱伝導率は0.020だからすごく低いですが、これを5cm(0.05m)で割ると0.4W/㎡Kになります。0.038と0.02だと半分ぐらい数値が低いため、倍ぐらい性能がいい感じがしますよね。でも、実際の現場で使っているもので言うとグラスウール10cmとフェノール断熱材5cmなので、0.38と0.4でほぼニアリーぐらいになってくるのです。ポイントは質ではなく、厚みも含めた性能の評価になるということを頭に置いてほしいです。
そこの基本的な話がわかった上で、さらにもう1つ大事なことがあります。熱貫流率と言われる質と厚さに伴う性能の評価に対して、もう1つの評価の軸があるのです。それが値段です。熱貫流率あたりのコストがとても重要です。先ほどニアリーと言った2つの断熱材を、現場のコストで換算してみます。これは私の試算なので、仕入れの強さで多少前後はあるので、ざっくり見てください。例えばグラスウールだったら、1㎡あたり1,800円前後、フェノールだったら6,700円前後するのではないかと思います。そうすると、1.05倍の性能値を得るために、3.72倍のコストを出さなければならないのです。だったらグラスウールの少し厚いやつを入れた方がいいとか、16kgじゃなくて24kgともっと高性能なものにすれば、ここまでコストアップしなくてももっといい性能が出ます。そういう風にして選ぶと、間違いがないと思います。
また、この熱貫流率の逆数をR値や熱抵抗値という言い方をして、読み替える時もあります。これは数値が多いほど性能値が上がるので、とてもわかりやすい数値です。私の友人の、群馬県の工務店の社長の小暮さんは、「今回の熱抵抗値は4いきました」とか言って喜んでいますから。
素材の性能をアピールするのではなく、「うちの仕様の熱抵抗値はこうなんです」とか「うちの熱貫流率はこうなんです」と説明してくれる人の評価を聞かなければなりません。言い方は悪いですが、ただ営業をやっているという感じの人だったら、熱貫流率という言葉の定義さえ知らない、使ったことないということもあるぐらいです。ぜひここは消費者の方は賢くなってほしいと思います。
最後にざっくりコストを比較していきます。グラスウールのコストを1としたら、現場発泡と言われるウレタン、いわゆる100倍発泡のものが1.5倍ぐらいという印象です。セルロースファイバーは2倍くらい。ボード系と言われる、いわゆるスタイロとか硬質ウレタンとかのパネルは3〜4倍。このような印象を受けています。もちろんこれは、上手にコストダウンする会社もあるから、ここまで差が開かないところもあります。あくまで目安として見てください。
くれぐれも頭に置いてほしいのは、ポイントは性能あたりコストなんだということです。もちろん性能も大事ですが、本当の意味でお客様自身が欲しい性能を知るという尺度を知った上で、その性能あたりのコストがどうなのかも含めて断熱材を選んでいただければと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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